㉙
次の日、俺は教授の家にいた。
すべての事情を説明し、彼に助けを求める。
「そうか、アイがそう言っていたのか」
教授は、すべてを悟ったような表情だった。
「はい」
「すまないな。中村くん。こんなことに巻き込んでしまって……」
教授はそう言うと、俺に頭を下げる。
「教授。それで、アイは……」
「みたところ、自分で幾重の厳重なプロテクトをかけて、引きこもってしまっているようだ」
「それは、解くことができるのですか?」
俺はそう聞くが、教授は首を横に振ることしかしなかった。
「このプロテクトは、最新型AIのアイが作ったものだ。製作者の私ですら、それを解くことはむずかしい」
「そんな……。じゃあ、俺はもう二度とアイに……」
「キミにはとても酷なことをしてしまったな。大変申し訳ない」
「……」
教授は深刻な顔をして、口を開いた。
「キミには、すべてを教える義務がわたしにはあるな。そして、キミはすべてを知る権利がある。私と一緒に来てくれないか?」
「どういうことですか」
「来てくれば、わかることだよ」
そう言って、客間を教授はでていく。
俺は、それに続いた。
※
教授は部屋を出ると、階段を登り始めた。
おれも同行する。
「キミに見せたかったのは、ここだよ」
教授はある部屋にたどり着いた。
そこは、一見普通の部屋だった。
でも、俺には普通の部屋ではなかったのだ。
そこの扉には、こう書かれていたのだ。
【愛の部屋】と……。




