㉖
武田のことがあって、俺は放心状態で家に帰った。
そして、自分の部屋へと入る。
そこには、もちろんアイがいた……。
「やっと、帰ってきましたね。この浮気者……」
アイは、やはりというかなんというか。
「ごめん。武田にこのまえのお詫びをせがまれてさ」
「それで夢の国ですか?」
おっと、どうしてばれているんだ。
もしかして、俺の体にはGPSでも埋め込まれているのか?
いつもなら、そんな風に考えていただろう。
でも、今日の俺はそんな元気もなかった。
「どうして、わかった?」
「わたしの能力をフル活用しました」
さらっと、怖いことをアイは言っていた。
「それで、何かあった顔していますが、なにがあったんですか?」
アイはやさしく諭すようにそう言った。
俺は思わず口に出してしまう。
「武田から、告白された」
アイは少しだけ複雑な顔をした後、笑顔になった。
「それで、なんて答えました」
その笑顔が怖かった。
「まだ、保留……」
「ヘタレ」
アイは容赦なく俺を切り捨てた。
「すいません」
「先輩って本当に馬鹿ですね。本当に男ですか」
「面目有りません」
「わたしというものがありながら、浮気して……。挙句のはてに、武田さんの告白までちゃんと答えることができないなんて……」
そう言われると、俺はとんでもないダメ男のように思えてしまう。
でも、浮気じゃないだろ。
「わかりました。そんな情けない先輩のために、私が救いの手を差し伸べてあげます」
「えっ」
「わたしとも一緒にデート、してください。一緒にデート、しましょう」




