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「ついたよ」
「ここは……」
武田に連れられて、着いた場所は「夢の国」だった。
「ここ、入場料高いんじゃないのか」
俺は少しだけ財布を気にした。
「大丈夫。アフターパスポート&割引券あるから、映画代くらいで入れるの」
武田は満面の笑みだった。
「じゃあ、いこうか?」
「お、おい」
俺は、武田に引きずられるように、夢の国へと突入した。
俺は、ひとつだけ気がかりがあった。
アイになんて言おうか……。
そして、ひとつ思いだすのだ。
小さなころ女の子と一緒にここに来たことを……。
※
「楽しかったね」
武田は元気満々だった。
「あんだけ、絶叫系に乗ったのに、どうしてそんなに元気なんだよ」
「ふふふ、秘密」
そう言って、彼女はチュロスを口に含んだ。
「ねえ、中村? アイさんのことどう思ってるの?」
さっきとはうって変わって、武田は神妙なおももちになっていた。
「どうって?」
「同居人として、スマホアプリとして、実験の被験者として、そして、異性として……」
「……」
「ねえ、教えて」
彼女は甘えた口調でそう言った。
「しょうじき、わからない」
「わからない?」
「あいつが人間のように思えてしまう時のほうが多いんだ。でも、絶望的な距離感がおれたちにはあって……」
「うん」
「だから、正直に言えばよくわからない」
「ねえ? さっき秘密にしていたことを教えてあげるよ」
「えっ」
「どうして、わたしがいつも元気いっぱいなのかってこと」
「ああ」
「好きな人と一緒にいられるからだよ」
日は海にむかって沈みかけていた。




