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「……ということなんだ」

 おれは、武田にいままでの事情を説明した。


「そうなんだ。中村ってそんな趣味が……」

 あっ、やっぱり全然わかってくれてなかった。

「ちがうからー」

「あれー、先輩? どこが違うんですか」

 別方向から痛い視線が突き刺さる。


「美少女AIに、先輩って言わせてる男のひとって……」

 武田は、死んだ魚の目でおれをみつめる。

「ふたりとも、おれの話聞いて……」


 これが修羅場か……。


「そういえば、申し遅れました。武田さん……」

 アイが武田に口を開いた。

 嫌な予感がする。


「¨うち¨の先輩がいつもバイトでお世話になってます」

 あっ、これアニメで見たことがあるやつだ。

「あら、ご丁寧に。それで、あなたは中村くんの何なんですか?」

「妻です」

「おおい」

 アイは自信満々でそう言っていた。おれは、慌ててツッコむ。


「自称¨奥さん¨ですか。さすがは、最新AIさんですね。とても賢い」

「……」

 アイが無言で怒り狂った笑顔になる。

 おれ、今日は生きて帰れるだろうか?


「なんですかー。一緒に住んでいる私に嫉妬ですか?」

「くすっ。いくら一緒に住んでいても、AIさんじゃ中村くんとは結婚できないんですよ。検索エンジンさんで、教えてもらってはいかがですか?」

 うわー、完全に修羅場だー。

 たのしー。


 おれは、完全に現実逃避をはじめた。


「なにをー」

「言ったわねー」

「この馬鹿AI」

「泥棒ネコ」

 すごい乱戦がはじまった。


「ごめんなさい。熱くなりすぎました」

 武田はそう言って落ちこんでいた。

 とりあえず、アイには別の部屋にいってもらい、今は武田の作ったカレーとサラダを食べているところだ。


「いや、こちらこそ」

 おれはそう言って笑う。

 武田も少しずつ笑顔をみせるようになってきた。


「それと、このカレー、すごく美味しい」

 おれがそう言うと、武田は今日最高の笑顔で笑った。

「よかった」


 ※


 わたしはひとり別の部屋に移された。

 隣の部屋では、先輩と武田さんがふたりで談笑している。


 それを考えると、わたしのなかでどす黒い感情が浮かんできてしまう。

 さっきのは完全にやつあたりだ。

 それでもわたしはその気持ちを止めることはできなかった。


「絶対に先輩は渡さない」

 わたしは力強くそう言った。


「いくら一緒に住んでいても、AIさんじゃ中村くんとは結婚できないんですよ」

 武田さんの言葉が、わたしのメモリの中で渦巻いていた。

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