㉑
おれは、いそいそとスマホを見つめた。
さっき、電源を落としたはずなのに、なぜかバイブで揺れている。
つまり、電源はついているのだ。
おわかりいただけただろうか?
これは、恐怖ですよ。
なぜなら、アイがいままでのことをすべて見ていたのだ。
おれは、おそるおそるスマホを立ち上げた。
スタートアップ画面を通り越して、そこにはアイがいた。
ただ、静かに笑っている。
「先輩、こんにちは」
彼女は静かに笑っていた。
その笑顔が、凍りついたものだった。
「……」
「先輩、どうして黙っているんですかー?」
「えっと」
「そっかあ、うしろめたいことをしたってわかっているんですね。だから、先輩、なにも言えないんだ~」
「アイ?」
「なんですか~。自害するする気にでもなりましたか~。なら、某熱帯雨林で、睡眠薬でも大量に購入してあげますね」
「許してください」
うちのAIさんがきゅうにヤンデレ化してしまった件について……。
やんでれAIさんに愛されて眠れないCDになってしまうぞ、このままでは。
「なに、さっきからブツブツ言ってるの?」
武田が台所からでてきた。
ダメだ、こっちにきてはいけない。
早く逃げるんだ、武田!
「来ましたね、この泥棒ネコ」
「あなたは?」
おれの部屋に修羅場が生まれた。




