狩猟神の結成
エイブラムスを説き伏せ、色々して戦闘機に乗せ、ニューヨークの基地に連れていった。
「連れてきました。」
レイア将官の前で身なりを整えつつも酒臭いエイブラムスと共に報告。気が退けることこの上ない。
「では、お前たちに命令を課す。」
唾を飲み込むと、喉を通る熱い液体が感じられた。
「アルテミス大隊。この大隊は簡潔に説明すれば、殺し、戦闘のスペシャリストの寄せ集め。お前たちの技量によって、良くも悪くも使える。」
大隊員の資料が配られた。それによると、大隊長の槍次の主力部隊、副長のアシュレイの狙撃部隊と、エイブラムスによる戦車中隊。この三つが
主な戦力となっているらしい。心強いといえばそうなのだが、殺しのスペシャリストという言葉が気になる。というか、怖い。確かに自分は特殊部
隊の出で、数々の修羅場と殺伐としたものを見てきた。しかし、こんなにも近くに殺すことしか頭にない連中がいると、些か不安だ。
大隊への挨拶にて、
「これより、大隊長殿からの挨拶だ。」
怖い、ただただ怖い。緊張する。なので、自分に対する一喝を含めた怒号を一つ、
「全員、敬礼!」
大隊千の内、ほとんどの兵士が敬礼を行ったが、気に食わぬ顔でこちらをまじまじと見つめる、三十二ほどのグループが一つ。
「ほう、ほとんど合格だな。まあ、いい。敬礼をしなかった者は後で私の部屋に来い、その際は正当な理由を持ってくるように。」
よし、場のペースは掴めた。それでは、一気に畳み掛けよう。
「皆、今、なぜ私が敬礼を求めたのか、不思議に思っただろう。理由を教える。なんとなくだ。」
その言葉を放った後、反抗グループの一人――恐らくリーダー格。――が言葉を発した。
「ああ? 何だと小僧! お前みてぇなお子様には戦場は不似合いだぞ! 帰れ!」
こんなこと言われたんで、うん、全くその通り。でもさ、俺、特殊部隊の出です、と言わんばかりの笑みを浮かべてやる。
「ああ、その通り。私はまだまだお子様だ。だから、教えてくれ。このような場で、一番偉くて、その人の命令を確実に聞かないといけないよう
なのは誰だ?」
この言葉にこう、名も知らない、奴が答える。
「ああ? お前は自分が隊長だって言いてぇのか? お前がリーダーなんて認めねぇ!」
威勢のいい奴だな。
「ああ、その通り。私がリーダー。私こそがこの隊の支配者だ。残念だったな、この私がリーダーなのだ。諦めて、命令順守を心掛けるように。」
数人が舌打ちをしたように聞こえたけれども、ほとんどの兵士は声を大にして叫んだ。
「「「了解しました、隊長殿。」」」
こんなはずでは、と自分に問いかけ、苦笑する。しかし、この雰囲気は壊すわけにはいかず、
「よろしい。されば、君たちが望む最高の戦闘を用意しよう。」
と付け加え、邪悪な笑みを浮かべる。ふふ、これでイメージは固まった。悪魔のような少年(十六歳)が我々千人の同志を導き、この愚かなるも
のどもと最後を共にして下さる、という感じには成った。ふざけんな!然る事なれど、もう、決まってしまったし……。考えてもどうしようもな
いか。
「では大隊諸君、始めてやろうではないか。」
よ、良かった、あのお方の演説の動画を毎日欠かさず見ていて。