戦車捜索
第一章 四 戦車捜索
翌日、異獣駆除機構は緊急会合を開いた。最初の気持ちは[終わった]。という感じだったのだが、報告を聞いた瞬間。気持ちは前向きに、明るくなった。
「と、言うことで。スチール〇一こと、槍次は偵察一〇五中隊から撤収してもらう。代わりの部署は長官の指令室だ。」
嘘だろ。と言う隊長、元隊長殿と部下たちの第一声は自分がその立場であっても同じことを言えるくらい、自分でも大変驚いた。
「お待ちください、トニー殿。それでは、今までの彼の命令違反はどうなるのです?」
ああ。また、その話か。いつも言っているだろう。僭越ながらそのような命令は受けておりません。と、心の中で。
「まあ、落ち着け、少佐。そのような命令をいつ出した?」
おお、話が分かる人もいるのだな。そう感心したのはトニー将官からの一言だった。命令違反も何も、命令なんて受けていないという声がやっと理解されたのだ。まあ、心の声だけれども。
「という訳で、槍次、貴官はこれより、長官の側近として私と共に力を尽くす。精進するように。」
待っていた。このような上司を待っていた。話が分かり、ある程度の常識を持ち合わせ、頭の回転が速く、柔軟な考え方を持つ上司が。よし、これからはより一層、努力できる。
そう、確信したのはまだ、トニー将官がどのような人なのか分からなかった時の考え方だ。
長官の側近として、トニー将官の部下として酷使されたのは配属当日からだった。
書類の整理、現状の整理、報告。正直、それはどうでもいい。だが、長官の提案を長々と三時間近く聞かされたり、トニー将官の有人人型兵器の提案や、陰謀論に付き合わされたりと、二十四時間中、二十四時間ずっと仕事をしている。
ある日、
「槍次、一つ聞きたいことがあるのだが。」
自分の上司の一人、レイア将官。はっきり言うと、超常識人でつまらない。しかし、信頼されてくれることは喜ばしいし、特に可愛がれているのは嬉しいことだ。しかし、超常識人過ぎて、説明の仕方が確実過ぎる。というか、解りやすすぎて質問できない。
「なんです?」
しかし、質問を受け付けなければ、それはそれで失礼。
「この男、知っているか?エイブラムスというのだが。」
「いえ、存じていませんが。」
「うん、この男が必要になってな。至急、現所在地の調査を頼む。」
「了解です。」
「ああ、あと、エイブラムスはお前と同じ、一〇五中隊の出だ。」
調査の命令を受けたのだが、手掛かりがない。一〇五中隊の記録書にはエイブラムスの名があったものの、去年に退職していた。その後の経歴は一切不明。捜索は困難。というか、これ以上、動向を知ることは不可能だ。
「ううん、報告するかなぁ。」
しかし、これではエイブラムスが必要という頼みを達成できない。まぁ、でも、これでもいいか。と、思ってしまいそうだったので、軽く自分を窘める。これこれ、将官殿の命には従わないといかん、と。
さて、どうしたものか。