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勇者になってもいいですか?  作者: 新城ミキヤ
第一章 異次元での冒険、始めていいですか?
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第一章1話 神様と出会っていいですか?





 ーーー俺は、死んだのか?


 目を開ければそこには、神様がいた。俺と神様は椅子に座ってる状況だ。


 長い赤髪に、少しつり目で胸に栄養がちゃんと行き渡っている女性。そこら辺の人間ならきっと美人だと思えるのだろうが、俺は違った。


 理由なんて言うまでもないが、大嫌いだからだ。


「水徳絆様、お待ちしておりました。ここは死後の世界です」


「は・・・?てめぇふざけてんのか?・・・答えろよ!!なんで神が居るんだよ!!・・・俺を見捨てておいて・・・なのに・・・なんでいるんだよ!!」


 俺は殴りにかかろうと椅子から立ち上がる。しかし手足を鎖で縛られていた。


「クソっ!こんな鎖!・・・なんで縛ってんだよ!」


「申し訳ございません。これも明確な理由があるのです」


 落ち着いた表情を見せる神様だが、俺は激しい焦燥感にかられ、殺したくて仕方がなかった。


「は?理由?意味わかんねーよ!なんの理由があるのさ!?」


「手足を縛っている理由は、抵抗されては、落ち着いて話をできないからです」


「お前は俺を縛っていい権利があんのか!?そして俺にはそれを解く権利はないのか!?」


 だが、今こうやって文句を言っていてもなにも始まらない。だから一度深呼吸して呼吸を整えた。


「・・・話ってなんだよ」


「・・・世界を、救ってください」


 神様は立ち上がり、そして深く絆に向かって礼をした。


 そんな姿を見た俺は驚愕した。こいつは何を言ってるのか理解できない。


「・・・散々俺を見捨てておいたくせに、なんだよ世界を救ってくれって。頭おかしいんじゃないのか?」


 もう呆れて俺は、鼻で笑うことしかできなかった。


「申し訳ございません。ですが、あなたのお力が必要なのです」


 先程よりも、更に深い礼を見せてくる神様。そして顔を上げて俺に告げた。


「私があなたを見捨てたのは事実です。ですが見捨てたくて見捨てたわけじゃないんです。・・・実はあなたには異世界に行ってもらいます」


「なんだよ、その異世界って。俺は絶対にお前の言う事なんて聴かないからな!」


 俺はそっぽを向いた。まぁ、当たり前だ。大嫌いな人の言うことなんて傾注して聞くことなどできない。。


「・・・聞いてもらえないかもしれませんが、一様言っときます。実は今、その異世界は7人の魔王によって支配されています。そのうちの一人である魔王サタナキアが地球を支配しています」


 アニメなどでお馴染みの異世界転生。そんな夢のような話はないと思っていたが実際は異世界はあったのだ。


「・・・なんだ?俺が身体張って魔王を倒せと?」


「・・・はい」


 冷たい表情を保ちながら、ゆっくりと神様は話していく。


「もちろん、魔王を倒した(あかつき)には、地球にもう一度蘇らせてみせましょう。そしてその人生は、死ぬまで不幸がないように設定しましょう」


「・・・話を続けろ」


 体を張ったら約80年程、自分の好きなことができるのか。なるほど。以外と面白い暁だな。


「その世界の場所はとりあえず地球です。ですがその地球、色んな国があっちこっちに飛ばされているのです」


「・・・どういう事だ?詳しく聞かせろ」


「はい。例えば東京。東京がアメリカにあるのです。ですがアメリカに東京を置くと東京があった場所はなくなってしまいます。だからその分、アメリカのロサンゼルスの一部が東京にあるのです」


「・・・つまり、各国あるはずの場所が別の国にあり、ないはずの場所が穴埋めとしてその国に置かれていると」


「左様でございます。それを我々は異世界と呼んでおります。ただ、ご存知の通り、これは普通の異世界ではありません。だからこの世界は狂っています」 


「もう少し詳しく教えてくれ。普通の異世界じゃないってどういうことだ?」


 普通、アニメの知識としては異世界か現実かのどちらかだ。別の世界に行く異世界。また、地球自体がまるでファンタジーの様な世界だったか、のどちらか。


「普通、異世界と言うものは言語、種族、文化等が異なります。勿論、中には異世界人と話せたりするチートはあります。ですがその異世界にはそう言った事はなく、しいて言うなら言語と文化でしょうか。ですが、言語は普段通りで会話は成立しますし、文化は昔の時代ですから江戸、明治くらいだと思っていてください。つまり、絆様が行く異世界は変わった過去の時代のようなものです」


「なぜそんなところに行かなければならないんだ?」


「それは、お教えすることができません」


「そうか」


 理由は分からないが、少なくても特別で、異世界のような世界なんだろう。


「どうやってその世界に行くんだ?魔法でもかけるのか?」


「まあ、はい。一様そうなりますね。ただ、行き方は少し変わっています。ブラックホールはご存知ですか?」


 ブラックホール、全てを飲み込むと言われている宇宙にある黒い穴だのこと。光すら呑み込んでしまう怖い自然現象。


「ああ、知ってるぞ。それがどうした」


「ブラックホールの中に落ちると、出口があります。それはホワイトホールといいます。そのホワイトホールの世界は時間が曲がっています。つまり、ホワイトホールの先は異世界なのです。宇宙には多くのブラックホールがあります。あるやつは鎌倉時代に繋がるルートであったり、あるやつは江戸時代だったり、あるやつは未来に行ったり」


 つまりは、ブラックホールの中に行ってタイムリープするということだ。と言う事は、過去に何かがあったということになる。


「どうですか?行きますか?」


 強制的に行かせようという意思があるように、グイグイ押す神様。


「今、現実世界はヤバイから、そうなる前の世界で俺が食い止めて、歴史を変えろと?そんでもって、俺に行ってもらって、世界を救えと?」


「そのとおりです」


「・・・一つ質問だ。・・・なんで俺が行くんだ?」


「・・・と、申しますと?」


「俺以外に人間は約70億ほどいるよな。なのになんで俺なんだ?別に誰でもいいだろ。俺をその世界に連れて行かないといけない理由があるんだろ?・・・お前、さっき言ったよな?俺の力を貸してくれって。俺になんの力がある?」


「それは・・・はい。確かに貴方には他にはない特殊能力を持っています」


 どうやら俺には特殊能力があるらしい。もしこれが良さげだったら少しは考えるとするか。


 気づけば、先程暴れて喚いていたのが嘘のかのようにして俺は黙り込んでいた。


「実は地球に住んでいる人にはある能力のある人がいます。しかし一億人に一人程しかいなくて。だから貴方のような特別な存在の人はレアなのです。・・・貴方を見たとき、本当に驚きました。こんな能力があって良いのか」


「なんだ?そんなに俺が無敵なのか?・・・内容次第では考えてやる」


 異世界で暴走するのも悪くはない。優雅な生活を俺はそう思って能力にとても期待した。だが神様は沈黙を続けていた。


「それで?俺の能力はなんだよ。もったいぶらなくてもいいからさ」


 毎日華やかに送ることができるなんて夢の又の夢だから、俺は喜んでいた。しかし俺の少し微笑む表情を見て神様は更に黙り込んだ。まるで言うのを躊躇うかのようにして。


 それに少し察してしまった俺。俺の表情は一気に固くなってしまった。


「・・・すみません!やっぱり、この話はなしにしてください!いくら神様でも、こんなことは許されて良いレベルではありません!」


「・・・どういうことだよ。あんだけ俺をチート能力持ってるみたいな言い方して。実は弱いのか!?」


 いや、そんなはずない。弱い能力なんて誰も望んでいない。なのに強い能力を持っている気がしないし、神様もそんな表情をしていない。杞憂しすぎではないか、一度自分にそう疑ったが、その考えは間違っていない気がした。


「あなたの能力は人が平気に耐えれるような能力ではないのです!体も心もすり減らされます!」


「・・・言うだけ言えよ。俺のそのクソ能力」


「・・・あなたの能力は・・・」


 何故か聴いてはいけない気がした。これは完全にヤバイ。なんとなく体がそう叫んでいる気がした。しかし神様の口は動く。


「『絶対に勝てないけど、絶対に死なない。』です」


 俺はこの言葉を聞いた瞬間、時間が止まった気がした。衝撃をとおりこして、もう呆れそうだ。


 強い弱いとか、そういうことじゃない。ただ、俺らしい能力だったから。


 そんな能力で魔王を倒せるはずがない。自分でも分かっている。勝てない?てことは俺は永遠に負けるというのか?そんな能力で世界なんて。いや、町一つも助けることが無理だろう。


「・・・おもしれーじゃねーか・・・」


 無意識にそんな言葉を呟いていた。興味が湧いてきた。永遠に失敗していく人生も悪くないかもしれない。いっそ開き直ってやる。


「本当に一切勝てないし、死なないのか?」


「いえ。雑魚モンスターだと、勝てます。しかし、中ボス的存在になれば、恐らく勝てません」


「・・・最後に一つ聞く。・・・この能力で俺は何をすればいい?」


「その世界は基本的に直ぐ人は死にます。冒険や調査に行って、生きて帰ってこれるのは1%もいないでしょう。生きて帰ってこれる、というのは本当に近い場所に行くだけとか、弱い敵だけ遭遇したとかのみでしょうか。並の敵になったら人は直ぐに死にます」


「・・・つまり情報が足りないんだな?」


「その通りでございます」


「武器とかあんのか?」


「武器どころか魔法も使えます。強い技になれば大砲なんか、比ではありません」


 楽しみなのかもしれない。心の底から踊っている。別にMではない。活躍できるのが嬉しいのだろうか。少なくても、頼りにされたいし、期待して欲しい。


「・・・俺はお前が嫌いだ・・・いや、大っ嫌いだ」


「承知しております・・・無理はないですよね・・・こんなこと急に人に押し付けるなんて・・・私も自分が嫌いです」


「だがらいつかは俺が神様になってやる。・・・そんときはその席ちょうだいな」


「面白いことを言いますね」


 いたずらっぽい笑みを見せてきた神様。俺はその神様の表情をじっと見つめて軽く微笑んだ。


 こんなにもわくわくしたのは一体何年ぶりだろうか。そんなワクワクを抑えきれずに俺は思わず。


「仕方がねえ。行ってきてやるよ」


「・・・本当にいいのですか?私が言うのもなんですが、かなり厳しい能力でかなり厳しい日々を送るかもしれませんよ」


「・・・俺は人助けできるのが嬉しいんだ。だから行ってやる」


「ありがとうございます」


 一例してくる神様。途端、手足の鎖は音を立てて空いた。なんだか久しぶりに手足を動かした気がする。


「それでは、検討を祈ります。・・・『貴方に、精霊の祝福があらんことを』」


「なんだよそれ。おまじないか?」


「左様でございます」


 俺の足元から光が伸びてきた。本格的に異世界に行く実感が湧き上がってきた。薄黄色い光はやがて濃くなっていく。


「もう一度言いますが、本当にありがとうございました・・・それでは『勇者』になって、人々を救ってください」


「ああ、分かった・・・今度あったときは、一発殴らせろよな・・・神様」


 神様に嫌われ、だけどほんの少し好きになった瞬間かもしれない。


 新しく行く世界。何を待っているのか想像なんてできないだがやるしかないのは間違いない。


 自分らしい能力で自分らしい生活を送るのか、それとも華やかに、平和に暮らせるのか。煩悩と共に生きる生活よりも、いっそ向こうの世界の王様にでもなって安泰に暮らしてやりたい。


 


 向こうの世界では、現実世界ではなかった輝きを取り戻し、勇者になる。なれるかどうかじゃなくて、ならないといけないのかもしれない。


 ーー再び視界は暗転した。




ここまで読んでくださいり、ありがとうございます。

 2018/01/28の24時、つまり日が変わる日に、第一章 2話を投稿する予定です。そちらの方も読んでくだされば嬉しいです。


2話では、本格的に主人公、絆が異世界でもなく現代ではない異次元(パラレルワールド)に行きます。楽しみにしていてください。


(昨日投稿できなかったんで、今日少し頑張ります!)


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