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ITエンジニアの異世界デバッグ  作者: 冷静パスタ
第一章 ITエンジニア、異世界にいく
4/202

 いつ死んでもいいと思っているが、死にたくはない。だから生きてる――


 こういう考えを持っている人は、どのくらいいるのだろうか。

 学生という身分が終わり、何とか就職し、社会人と呼ばれるようになった。でも、ふと思うんだ。残りの人生って何? あとはもう、消化するだけだろ? と。

 二十そこそこの若造が、何を言っているんだって思う人もいると思うし、それはお前の世界が狭いだけだろって言う人もいるだろう。お前は幸せだからそう思えるんだって怒る人もいるかもしれない。


 ああ、確かに。そう言われれば自分でもそう思うし、言われた時はしっくりきた。一時はそれで納得もしたし、こんな風に考える事なんて、普段生活している上では起きないんだよな。それでも……根底には残り続ける。何でだろうな。

 考えてみると、自分で出した、芽生えた、気付いた思いだからかな、と思う。


 こんな経験がある。たくさん緊張して、考えて、練習なんかもして、取り組んでいた就職活動。思えば、あの時が一番最初だったような気もするが、実際はどうなのだろう。

 とにかく、あれほど頑張っていた就職活動だが、まず、馬鹿みたいに感じた。何でこんなに必死になっているんだ? この先、この行動を続けるとどうなるんだ?

 それで気づいた。自分は、周りに流されて、何となく就職活動しているんだと。就職活動しなければと思わされていた、という方が正しい。


 ここまで、悪い風に言ってはいるが、少なくとも、俺はこの考えに救われている。悪い事だとも思っていない。いつ死んでもいいと思うと、気持ちが楽になるのだ。多少の事では動揺もしなくなるし、悩みも大きくならない。それどころか、何でも出来る気がしてくるし、明らかに、そう思う前よりは、自分に自信も持てるようになった。皮肉にも、そうなってからの方が人生うまくいっている。

 うまくいっているのか? 考え方が変わっただけで、本当は何も変わってないかもしれない。でも、世界が変わったとは、こういう事をいうのだろう。

 今思ったがあれだ、大きく広がる海を見てると、自分がちっぽけに見えるってあるだろう? あれに近いかもしれない。


 さっきの話に少し戻るが、俺はそんな考えを抱きつつも、アルバイトは始めた。生きていくのに金は必要だったからな。その次は就職した。それがIT系の会社だったのだが、それはまあ、関係ない。

 ちなみに、この二度目の就職活動の時は本当に驚いた。焦りや緊張はほとんど感じる事なく、面接なんかでも、あり得ない程しっかりと話せた。唐突な質問にだって答えられた。この時はさ、何を言われても、何を失敗しても、もうどうせ会わない人だし、関わらない会社なんだ、というような事を思っていたのだが、これも引いては、いつ死んでもいいという考えが、根底にあったからだ。結果、一度目では全く引っかからなかった就職も、最初に受けた二、三社全てから内定が出た。笑えるよな。特に後先考えず、その内の一社に決めた。


 無気力とか、達観してるとか、そういう事ではない。この娯楽の溢れた世界で何かに手を出せば、それはそれなりにやりがいがあるし、実際、面白いと思うものもたくさんある。趣味だって、人より多いのではないだろうか。お金を稼げれば嬉しいし、そのための努力もする。上昇志向も持っている。仕事が嫌いって訳でも、苦手って訳でもない。むしろ、何をやってもある程度まではこなす自信まである。生まれも裕福な方だったし、親からも大事に育てられた。友達だって多い方じゃないだろうか。


 そんな考えは、誰しもが一度は持つということも分かっている。自分だけがその考えに至ったと思い、周囲を小馬鹿にしたり、自身は特別なんだ等と思うのは、思春期くらいのガキの頃にはよくある話なんだ。

 でも……違うんだよ。そういう事じゃない。


 不安なのか? と言われれば違う。不満なのか? と、聞かれればそれも違う。鬱であるとか、虚しいとか、無気力とか、それも全部全部違う。違うのだけれど……。


 答えは見つからない。



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