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ITエンジニアの異世界デバッグ  作者: 冷静パスタ
第三章 闘技大会
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色取り取り

 キリルという前髪パッツン女が加わり、四人となった俺達は、大通りの方へ出ていた。

 元々、路地裏にはカイルの宿を探しに行ったのだが、事情を知ったキリルが、私のところに泊まりますか、と言ってくれたのだ。それで俺達は、有難く、その申し出を受けることにしたのだ。

 ちなみに、路地裏で何をしていたんだ? と聞くと、不届きな男達が声をかけてきたのでぇ、クイッとね。と、言っていた。クイっ、の中身は聞かなかった。


 宿のアテが見つかった俺達は、何ともなしに一緒に歩いていたのだが、そこでカイルが、こんなことを言いだした。


「キリルの部屋に、俺が行ってもいいのか? ああ、嫌って訳じゃないぜ? 俺としては、別に構わないんだけどさ」

「私は、誰でも構いませんよぉ? 変なことをしようとしたら、その場で殺す自信がありますしぃ」

「カイル君が、そのまま行けばいいよ!」


 キリルもそう言っていることだし、俺もそれでいいんじゃないかと、最初は思っていた。だが、ストレのやけに必死な様子が気になっていると、ふと気付く。

 そういえば、まだ確認していなかったが。


「ストレ、お前が取ってくれた宿だけど、俺とお前の部屋は、別々だよな?」

「え!? 何で急にそんな。別に、どっちでもいいじゃん……」

「ああ、俺も贅沢は言わないよ。ただ、気になってな。どっちなんだ?」


 むー。と口を尖らせて、しばらく黙っていたストレだが、俺が詰め寄ると口を開いた。


「……二人部屋」

「よし、じゃあ俺とカイルで使わせてもらうから、キリルはそいつ、連れてってくれ」

「まぁ、その方が変な遠慮しなくて済みそうですねぇ」


 キリルはそう言うと、むんずとストレの襟首を掴み、引きずっていく。


「え! え!? ちょっと、やだ! するよ遠慮! めちゃくちゃするよ! あ、待って。やだやだやだやだ! せっかくのチャンスだったのに! エンジ君止めてよ! 私、エンジ君と一緒がいい! あ、待って! あ……ああぁぁぁ」


 ストレが絶叫を上げながら引きずられていくのを見て、俺はうんうんと頷くと、カイルの方に向き直る。


「無事、安寧の地が手に入ったな」

「ま、正直助かるけどよ。良かったのか?」

「ああ。あいつは、ああやって弄られることに喜びを感じているんだ。問題ない」


 こうして俺達は、宿へ向かい、帝都での一日目が終わった。


 ……。


 次の日、俺とカイルは二人で帝都を歩いていた。カイルが買いたいものがあると言い、武器屋に行くというので、やることのない俺は、付いて行くことにした。


「正直、舐めてたよ。昨日一日、街を見て回って、割りと厄介そうな奴をチラホラ見かけたわ」

「まあなぁ。でも、それは俺達の親分のせいでもあるだろ……あんないい加減な依頼しやがって」

「はは、違いねえ。だが、俺が武器を補充しようと思ったのは、昨日の一件だ」

「キリルか。俺、あいつとは戦いたくないなぁ。怖いし」

「俺は、キリルを怖いで済ます、お前のことも脅威に感じてんだけどな」

「やめろ。そんなこと言われて、すぐに負けたら恥ずかしいだろ」


 俺は参加者の中で、最もやる気がないであろう男だぞ。怖い奴と当たったら、即棄権も辞さない覚悟だ。


「お、ここか」


 カイルと話している内に、武器屋に着いた。


「何を買うんだ?」

「エンチャントナイフ。軽くできるやつな。三十本は欲しい」

「そりゃまた……。お、ここに大量に置かれてるやつなんてどうだ? 安いぞ」


 エンチャントナイフとは、魔力石が埋め込まれたナイフのことだ。魔力を通すと魔力石に込められた魔法が発動し、様々な効果が現れる。今回カイルが探しているのは、軽量化の魔法が入ったナイフ、とのことだが。


 大量に置かれていたナイフを、カイルが一本一本見比べていく。だが、いくつか見た後、首を振っていた。


「駄目だ。俺には全部同じに見える」

「こんなときは店員だ! 店員さん来てー!」


 はいはい、どうしました。と、おっさんがこちらに向かってやってきた。


「軽量化のエンチャントナイフ、三十本頼む」


 そう言うと、おっさんは意地の悪い笑みを浮かべた。


「お客さん、ここにある物は所謂、くじ引き的な扱いで売っているものでしてね。何の魔法が施されているかは、購入されたあとに、説明する手はずになっております」


 これだけ安いのには理由があったか。

 だが、待てよ。と、俺は考える。――くくく。おっさん、俺をあまり舐めるなよ。


「おっさん、正規の値段で一本売ってくれ」

「一本でいいのかい? もっと必要なんじゃないのかい?」

「いや、それでいい」


 武器屋のおっさんから、一本だけ目的のナイフを買った俺は、それを魔法の目で解析する。後は、これと同じやつを、あっちから選ぶだけだ。


「カイル、これとこれと、あとそれ。全部、軽量化だ」

「何だと!?」


 おっさんが驚愕している。やはり正解のようだ。見たか、これが魔王の息子の力だ。……残念ながら、俺の力ではない。

 その後も、俺は大量のナイフを目利きしていき、カイルに渡していった。


「いやぁ、こんなに安く仕入れられるなんてな。助かったよ」

「おう、あのおっさんの悔しそうな顔も見られたし、俺も満足だ」

「お、悪い顔だな」

「盗賊だしな」


 二人で店を出て、わははと笑っていると、カイルが俺の方を向き、ニヤリと笑った。


「エンジ、お礼にいいもん見せてやるよ。あの女を見てな」


 何だ? カイルが指差した女を、じっと見てみる。

 すると、どこからかそよ風が吹き、女のスカートを捲り上げた。


「きゃあ!」


 慌ててスカートを抑えるも、もう遅い。最初から注目して見ていた俺達には、バッチリと見えていた。

 女がこちらを見てきたが、俺達は何も悪くない。ニコっと笑い、事故ですよ、という顔をしておいた。


「カ、カイル君。今のは?」

「秘技、アクシデントブリーズ。膨大な歳月と特訓を経て、編み出した、俺が唯一使える、無詠唱魔法だ」

「カイル、お前……尊敬するよ」

「ああ。エンジなら、そう言ってくれると思っていた」


 今のを一から説明すると、まず驚くべきは緻密な魔力操作だ。強すぎても駄目、弱すぎても駄目。そして、対象だけを狙う風魔法の操作。

 次に、無詠唱。熟練の魔法使いになり、やっと初級辺りの魔法を無詠唱で使えるようになるとは聞くが、こいつ、これほど難しい魔法を、使い続けたとでもいうのか? 今まで一体どれほどの……。

 最後に、魔法を使用したことを、気づかれてはいけないということ。これが何より一番大事だ。事故と言い張るにはそれしかない。

 カイルは手をかざすこともなく、表情すら普段通りだった。そう、何もしなかったのだ。ただ、そこに立っていただけ。恐ろしい……アンチェインには、こんな化物がいたのか。


「親友……行くのか?」

「遅れるなよ、俺にしっかりついてこい!」


 その後、俺達は一日中、スカート捲りに勤しんだ。白、黒、赤、青、紫、水玉に縞、紐だってあるさ。帝都はこんなに広いんだ。



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