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ホラーギルド  作者: 時雨瑠奈
新ギルドマスターとの交流
7/35

依頼人はじゃじゃ馬姫!?

 じりじりと照りつける陽光を浴びて、

ストリートファイトが今日も行われて

いた。

 戦っているのは『ホラーギルド』の

リーダー、サヤ=ライリーと、ギルド

マスターのルイア=ラクレンサだった。

「とっとと負けを認めなっ!!」

「まだまだ私は戦える!!」

 サヤは炎のような赤い髪を揺らしながら、

器用にルイアの攻撃をよけつつていた。

 しかも、夕顔お手製のローストビーフの

サンドイッチを頬ぼっている。

 甘辛いタレと、ほどよく中に火が通って

いるレアな焼き加減の薄いお肉が絶品なので、

サヤは上機嫌に狼の黒い耳を動かしていた。

 人狼ルー・ガルーであるサヤは、肉類が

特に大好物なのである。

 好き嫌いなどしないタイプではあるが。

「夕顔、シオン!! おかわりちょうだい!!」

「了解、リーダー!!」

 今度は塩コショウがたくさん振られている、

ピリリとした卵ペーストのサインドイッチが

空を舞う。

 サヤは華麗にあぐっ、と口でキャッチしな

がら、ついでのようににルイアの腹に重い

一撃の蹴りを叩き込んだ。

 ルイアが吹き飛び、サヤの着地が見事に

決まる。

「美味いよ、夕顔の料理はやっぱり~!! 

 もう一個ない?」

「どんどん作ってるわよ、サヤ!!」

「サヤの食事は作りがいがあるよね」

 調子に乗って空中を舞いながら、次々と

サンドイッチを腹におさめていくサヤ。

 シオン=エレットは仮面に隠れた顔に笑みを

浮かべ、夕顔も笑顔でサンドイッチを投げ

ていた。

 と、その時。

「あなた達、何をしているの?」

 冷やかな、まるで氷のように冷たくそれでいて

薔薇の棘のように鋭い声がその場に響き渡った。

 瞬時に、サヤとシオンと夕顔の顔から血の気が

引く。

 ぎぎぎっと、まるで扉が軋むような音を立てて

振り向くと案の定、吾妻夙あずまなぎさが笑顔で

腕を組んで立っていた。

 笑っているのに、その明るい茶色の目が笑って

いない。明らかに怒っていた。

 その背には黒いオーラが二人には見えた気がした。

ひぃっ、と縮み上がる三人を夙は怖い笑顔でなおも

見つめている。

「あ、あの、ゴメンナサイ……」

「もうしません……」

「ごめんなさい~」

 直後、響き渡ったのはごつん!という痛々しげな

鈍い音だった。夙が、それぞれ一発ずつサヤ達に

げんこつを落としたのである。

 サヤの炎のような赤い髪を持つ頭、シオンの緑の

髪を持つ頭、夕顔の栗色の髪を持つ頭にぷっくりと

こぶが膨らんで彼女達は涙目になるが、本気で

怒った夙は許さない。

「――三人共、そこに正座!」

「「「はい……」」」

 その後二時間に渡って、サヤ達は正座でお説教を

くらう羽目になった三人だった。

 夕顔はともかく、サヤもシオンも正座は苦手なので

相当痛そうだ。しかも場所は床ではなく地面だし。

 ルイーズ=ドラクール、倉木ルカ、ルミア=

ラキオンは心配そうに見ていたけれど、決して助けては

くれなかったのだった――。



 そういう訳で、『ホラーギルド』のメンバー達は、

二時間経ってからギルドマスターから依頼書を受け

取ったのだった。

 自分のせいなので文句を言う訳にもいかず、

すねたように唇を尖らせながらもサヤは仲間達と

共に依頼書に目を通す。

 次の瞬間、シオンが面倒そうに肩をすくめ、サヤと

ゆきなが嫌そうな顔になった。依頼人は、なんと王様

だったのである。

 内容は、おてんば姫が遊び相手を欲しがっているから、

遊んであげて欲しいという事だった。

「――はい、却下」

「サヤ!!」

 即座に破棄しようと、依頼書を破ろうとしたサヤの手を、

エリオットの褐色の平手が叩いた。

 ゆきなとシオンはどちらかというとサヤの味方なので

口をつぐみ、夙は呆れ顔になっている。

「な、何すんだよう!」

「たまには仕事しないと駄目だろ、オークションの仕事は

終わってるけど、それ以外最近俺達まともな仕事してないん

だからな!?」

「そうですわ、サヤ。除名されたらどうしますの?」

 今のギルドマスターはサヤを気に入っているようなので、

簡単には除名したりもしないだろうが、やっぱり仕事はする

にこした事はない。

 お金だっていろいろ入用なのだ。

エリオットの薄い青の瞳と、夙の明るい茶色の瞳に同時に

睨まれたサヤは、渋々依頼を了承する事になった――。

 

 さらに一時間後。

ホラーギルドの外に、サヤ、ゆきな、ルー、ルミアの姿が

あった。

 彼女達はお風呂に入って汗を流した後、サヤは茶色い

地味なドレス、ゆきなは白に近い銀の髪によく映える、

淡いピンク色のドレス、ルーはこの前買ってもらった

エメラルド色のドレス、そしてルミアはルーから借りた

赤いドレスに着替えていた。

 ちなみに、夙と夕顔は雑務や家事があるので残り、

遊び相手は女だけ、と書いてあったのでシオン達も

残る事になったのだ。

 準備を終えた後、ちょうどいいタイミングで王宮から

差し向けられた馬車がホラーギルドの前に止められた。

 黒塗りのいかにも上等な作りに、サヤ達は思わず目を

奪われる。繋がれているのは見事な栗色の馬だった。

「うわあ……」

「高そうね、さすが王宮の馬車」

「すっごーい!」

「こんなの、乗るの所か見るのさえ初めてよ!」

 サヤはぽかんと口を開け、ゆきなは値踏みするように

馬車を眺め、ルーは金色の目をきらきらさせてはしゃぎ、

ルミアも砂色の目を輝かせている。

 慌てた御者に早くお乗りください、とせかされむっと

なりながらもサヤ達は馬車へと乗り込む。

 しかし、ふかふかのいかにもすわり心地が良さそうな

クリーム色の座席に再びはしゃいだ声を上げるのだった。

 移動時間はさらに二時間ほどを有しただろうか。

次々と変わる景色に興奮していたサヤ達は、着きました、

と御者に言われて扉を開けて飛び降りる。

 白と金色の優美な王宮に、目を奪われてさらに上機嫌に

なるも、やってきた魔物達に、門番がギョッとなって武器を

突き付けて来たのでルミア達は腹を立てていた。

 確かに、サヤは人狼ルー・ガルーと人間のハーフ、

ゆきなは雪ん子、ルーは吸血鬼、そしてルミアは一見

人間に見えるがゴーゴン族である。

 それでも、せっかく依頼を受けて来たというのに

その反応はどうなのだろうか。

「誰だ貴様らは!」

「な、何よその反応は! あたし達は、依頼でここに

来てやったのよ!?」

「好きで来たんじゃないもん!」

「あまりにも無礼なんじゃないの!?」

 頬を膨らませ、口ぐちに喚くメンバーを取りあえず

大人しくさせ、サヤは門番の前へと出た。

「オレ達はホラーギルドのメンバーだ。王様の依頼で、

ここに来た。証拠ならここにあるぜ?」

 王の依頼書を差し出すと、門番達は奪うようにそれを

見て同時に青ざめる。

 そして、申し訳ございませんでした!と頭を下げて

通されたので、サヤ達は少し溜飲を下げる。

 門番の一人が案内を買って出てくれたので、彼に

ついて行く事になった。

 しばらく歩いた後、サヤ達は上等そうな扉の前で

門番と別れ、扉をサヤが代表でノックする。

 こつこつという音が響いた後、部屋の中から聞こ

えて来たのは苛立ったような幼い声だった。

「遅いっ!!」

 サヤ達は思わず鼻白んだが、依頼だからとぐっ、と

我慢して作り笑顔で内部に入る。

 薄桃色の長い髪にクリーム色のリボンを飾り、同色の

ドレスを着た少女――この国の王女は相当なわがままの

ようであった。

「遅い遅い遅い遅い遅いっ!!」

 色白の顔を真っ赤に染め、髪と同じ色の瞳に苛立ちを

募らせながら地団駄を踏んで遅いを連呼しする。

 ムッとなり、サヤが何事か言いかける。

が、その口はルミアに素早くふさがれてしまった。

「すみませんね、お姫様。遅くなりました」

「ルーンだ。呼び捨てで呼べ。敬語も使うな」

「あの、でも……」

「敬語を使うなっ!!」

 だんだんだんと再び地団駄が始まる。

ルミアはこの子石にしてもいいかな、と本気で思い

ながらも作り笑顔を顔に張り付けていた――。

 あんまりお仕事をギルドメンバーが

しているシーンを書いてなかったので

今回書いてみました。

 といっても、わがままお姫様の遊び

相手ですが。

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