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ホラーギルド  作者: 時雨瑠奈
闇オークション潜入
4/35

闇オークションの証拠を暴け! 中編

 どす黒い雲が空を覆う頃、サヤ=

ライリー達はついにオークション会

場に乗り込んだ。

 シオン=エレットは、緊張と赤面

症のせいで、耳まで真っ赤っかという

有様である。

 緑の瞳が完全に潤んでしまっていた。

ルイーズ=ドラクールことルーと、

倉木ルカはどこか楽しそう、サヤは

黒い獣の耳を寝かせて不安そう

だった。

 顔は無表情を貫いていたけれど。

虹色の妖精に似た羽をぱたぱたさせる

ルーに、いい気なもんだよな、と

サヤは思う。

 ルカも眼鏡をかけた銀の瞳をきらきら

させており、実際に売られないとはいえ、

とてもオークション会場にいる者には

見えない顔だった。

「これが今回の〝品物〝か?」

 じろりと無遠慮に睨みつけられ、サヤは

鼻じろんだが、我慢して黙っていた。

 狼の黒い尻尾が怒りを含んで膨らむ。

人買いの男が頷き、門番が一度閉めた扉を

開けたのを確認して外に出ていく。

シオンとルーはすれ違いざまにこっそり舌を

出していた。

 たまに二人はよく行動がかぶる。

オークション会場にたった今連れられて来た

らしき、可愛らしい顔立ちをした少女が逃げ

ようとしたが門番に取り押さえられてしまった。

 そんなに甘くないか、とこっそりルカは思う。

少女を嘲笑うように扉は硬く閉ざされ、絶望と

恐怖のあまり少女は泣き叫ぶ。

 ルーが金色の瞳を潤ませ、シオンとサヤが

緑の瞳と紅い炎のような瞳に怒りをにじませ、

ルカは白い顔をさらに青白い色に染める。

 少女はそのままオークションの係りの者

らしき、黒服の男に連れて行かれた。

 サヤ達もまた、〝商品〝が集められた部屋

へと腕を拘束されて係りの男達に連れられる。

「離せ、馬鹿力! 腕、いてーんだよ! そん

なのしなくても逃げないっつーの!」

 と、サヤが男の腕を振り払った。

逆らわれるとは思わなかったのだろう、男が

サヤを殴ろうと手を伸ばすが、サヤが身をかわ

したので髪に当たって鮮やかな赤い髪を

揺らした。

「この……っ!」

「止めろ! 商品を傷つけちまったら価値が

下るだろ!」

 男はかっとなってもう一度サヤを殴ろうと

したが、仲間に腕を掴まれて止められチッと

舌打ちしつつも引き下がった。

 身の危険がなくなったので、サヤ達は商品が

集められた部屋を歩き回って見る事にした。

 ほとんどが人型の魔物や妖怪やハーフなどを

売る目的としているからか、部屋はかなり広い。

 白い綺麗な白木細工のテーブルや椅子や、柔らか

そうなクッションがあったが、集められたほとんどの

者達はそんなの使う気にもなれないらしく、ぺったりと

床に座り込んですすり泣いていた。

 ギルドで毎週出される日報で紹介されていた盗品や、

売られたと思わしき者達もいるのに気付きシオンが

目を見張る。

 とりあえず四人は椅子へと腰下し、部屋に置いて

あった紙コップのコーヒーを飲む事にした。

 あまりいい品ではなかったらしく、酸味のある

微妙な苦みにサヤがうぇ~と嫌そうな顔になる。

「まず……!」

 ルカ、シオン、ルーはもったいないので一応は

全部飲み干したものの、二杯目を飲みたいとは

思わなかった。

 サヤがいらないと言ったので、苦笑しつつ

ルカがもう一杯コーヒーを飲み干す。

「帰してよ!! 家に帰りたい!!」

 しかし、ただ泣いている者がほとんどの中、食って

かかっている者が、一人だけいた。

 頬を真っ赤に染めて怒鳴っているのは、まだ十三歳

くらいの女の子だった。

 ひときわ人目を引く顔立ちに、白すぎない肌を

している。

「騒ぐな、ガキ」

「い・え・に・か・え・り・た・い・の!!」

「うるせえ!!」

 さっき、サヤを殴ろうとした男が、女の子の

態度に激昂し、殴りかかろうとした。

 仲間が止めようとするが聞こうともしない。

がたっ、とルカが座っていた椅子から腰を浮かし

かける。

 すると、サヤが彼の腕を掴み首を振った。

「どうしてですか、あの子、殴られちゃいますよ」

「大丈夫、黙って見てろよ」

 小声でやりとりする二人。ルーがむぅ、と口を

尖らせていた。

 サヤとルカが仲良くするのが気に食わないのだ。

そして、状況はサヤが言った通りになった。

 キッ、と少女が睨むと、見張りの男が石になった

のだ。

 元からそこにあった石像のように、動かない。

否、動けないのだ。押し殺したような、少年達と

少女達の悲鳴が上がった。

「あの子、ゴーゴン族なんだよ」

 サヤは真剣な顔で言った。ルカが小首をかしげて

聞き返す。そんな種族は聞いた事がなかった。

「なんですか、ゴーゴン族って?」

「メデューサって知ってるだろ? それがゴーゴン

族の祖だ。見つめた相手を石と変える最強の魔物

だよ」

 ああ、とルカ達は納得した。メデューサという

魔物が出て来るお話は彼らも読んだ事がある。

 ほぼ伝説だと思っていたのだが、どうやらあの

一族は実在するようである。

「なんで分かるんですか?」

「オレの鼻をなめんなよ。上手く変化してるけど、

蛇の匂いがぷんぷんしてるんだよ、あの子から」

 サヤは人狼ルー・ガルーであり、変化して

いなくとも、味覚・嗅覚・視覚・聴覚が

優れていた。

 普通の人間であれば気付かないような匂いでも、

サヤには隠しようがなかった。

 二人の会話が聞こえていたのか、さっきの少女が

こちらにやってきた。

「あなたたち、どこのギルド? 私がゴーゴン族と

分かるなんて、凄いのね」

「そっちこそ。能力を制御できるのは、数人しか

いないって話だけど?」

 今、少女の砂色の目は真っ直ぐにサヤを向いて

いて、サヤも彼女の目を見返しているが、サヤは

石にはならなかった。

 ニヤリ、と少女は赤いまるでルージュを塗った

かのように鮮やかな唇をゆがませて笑う。

 砂色のウェーブがかかった髪がふわり、と

揺れていた。

「純血で力は元から強かったの」

「ふうん。オレ達は……っと、うーん、あ、

少し待てよ」

 サヤは言葉を濁すと、目を閉じて少し黙って

いた。ややあって、もういいよ、と声が返る。

 ギルドメンバーと、少女の頭の中から。

念話テレパシーね、そんな事まで出来るの」

 少女は目を見張って感心していた。サヤはそれには

答えずに自己紹介する。

 シオンとルーは慣れているので黙っていたが、ルカは

初めてだったので頭に直接響く念話に少し混乱して

いるようだった。

〝オレたちは『ホラーギルド』のメンバーだ。リーダーは

オレ。サヤ=ライリー〝

「倉木ルカです」

「ルイーズ=ドラクール。ルーって呼んで」

「シオン=エレットだよ」

「私はルミア=ラキオン。ギルドには入ってないわ。

よかったら、あなたがたのギルドに入れてくれない?」

〝親はいるか? それと、ルー、説明頼む〝

 サヤは自身の顔が青ざめたのに気付き、ルーに説明を

依頼した。

 ここで倒れたらやばい。依頼を完了できない。

気持ちが悪そうに口元を抑えるサヤに、ルーは黙って

頷き、金の髪を揺らして口を開いた。

「あなたは科学者ギルドを知ってる? もしくは

被害者?」

「科学者ギルド!!」

 少女の砂色の目がかっ、と赤く染まった。

目を閉じろ、とサヤが叫ぶ。

 全員が目を深く閉じ、彼女の力は壁と観葉植物を

石にした。

 少年達と少女達もまた目を閉じたのか、石に

なったりはしなかったけれど、ルミアに怯えて

いるらしく震えていた。

 化け物め、と男達が舌打ちしたが、ルミアが

視線を向けると慌てたように黙り込む。

「あなたがたも被害者なのね。忘れたくても忘れ

られないわ、あいつらっ!! 全員殺してやりたいっ」

「な、何があったの?」

 ルーが思わず聞いた。凄い剣幕に、少し怯えている。

サヤの黒い狼の耳も怯えたように伏せられていた。

「あいつらは幼い私を兵器のように扱ったのよ。多くの

人間や、妖怪達を石にさせた。その頃の私は、それが罪

だと知らなかったけど。私がギルドを抜けようとしたら、

あいつら私を売ったのよ」

〝いいよ。君もギルドの仲間入りだ。オレたちは、今、

潜入捜査の真っ最中なんだよ、闇オークションの、な〝

 それでも、少し落ち着いたらしくサヤは再び念話で

ルミアに語りかけた。了承の返事の代わりにルミアが

にっ、と笑う。

「光栄だわ」

 こうしてメンバーを一人増やし、サヤ達は仕事を

続ける事になった。

 数分後、ついにオークションが開催された。

貴重な盗品が出品され、競りが始まる。

 〝商品〝としてその場にいる『ホラーギルド』は、

その様子を、隠し持っている小型の機械で記録

していた。

 貴族や金持ちの男達、そして金持ちの妻らしき

女達が歓声を上げ、手を上げて値段を提示して

行く。

 泣きながら一人の少女が舞台に立たされ、一人、

また一人と少女や少年達は消えていき、ついに

サヤ達の番が回ってきた。

 ぐいっ、と腕を掴まれ、サヤは出来るだけ

冷静な顔で舞台へと上がったのだった――。

 ついにオークション会場に連れて

行かれるサヤ達。彼女達はそこで

相手を石にするゴーゴン族の少女を

発見し仲間に引き入れます。

 そして、ついにオークションが

始まりました。

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