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ホラーギルド  作者: 時雨瑠奈
笑顔の終局のために
32/35

それぞれの想いと力 その2

 サヤ=ライリーと倉木ルカは走っていた。

散開、と告げた後サヤはルカに腕を引かれるように

してその場を離脱したのだった。

 いつもは明るいその顔には恐怖の表情が浮かび、

赤い長い髪や黒い狼の耳もどことなくくたっとして

見え、赤い瞳は僅かに潤んでいた。

「頑張りましたね、リーダー」

「頑張ってない……俺、ちっとも頑張ってない……

こういう時、しっかりしないと駄目なのに……」

「――サヤ」

「俺、ギルドリーダーなのに……」

 ひっくひっく、とサヤはしゃくり上げるようにし

て泣き出した。

 ルカはそんな彼女を慰めるように抱き寄せる。

「そんな事ない……そんな事ないです! あなたは、

ちゃんとさっきだって指示を出せてたじゃないですか

!」

「でも……!」

「大丈夫です、あなたは、ちゃんとリーダーをやれて

いる。僕が保証します」

「ルカ……!」

 ぷぃっ、と恥ずかしくなってサヤがそっぽ向く。

彼女の心情には気付いていないのか、あ、あれ?と

ルカは困惑したように手を離した。

「り、リーダー? そんなに、嫌でした?」

「いや、別に嫌じゃないけど……」

「で、でもこっち見ないじゃないですか……」

「うっさいな照れてんだよ察しろよ馬鹿!」

 がぁっ、と吠えるようにいいながらも真っ赤な彼

女を、もう一度ルカは抱きしめたのだった――。



 運よく、敵がいないフィールドを選ぶ事が出来た

のか周りに敵の気配はなかった。

 でも、警戒を怠る訳にはいかないので周囲を見回

しつつ交代で腰を下ろす事にする。

 先にリーダーでいいですよ、と言われてサヤは荷

物の中からアイスティーの入った水筒を取り出した。

 こくん、と一口飲むとほっとするような甘さが口の

中に広がった。

 甘すぎない所がポイントで、夕顔が出発前に詰めて

くれていたのだ。

「ぅ~……」

 小さく呻くような声を上げ、伸びをする。

くすっとルカに笑われてしまい真っ赤になった。

「一人で頑張らなくても、いいと思いますよ。あなた

には、僕が――僕達がいますから」

「う、うっさい! ルカの癖に生意気な事言うな、下っ

端の癖に!」

 えいえい、と軽く頭を何度も小突かれて痛い痛い、と

ルカは悲鳴を上げた。

 が、少しだけ耳を赤くするとありがとう、と彼女が素

直に呟いたのでルカは嬉しくなる。

「ほら、交代! ルカも休めよ、今度は俺が見張るから」

「あ、はい、リーダー……!」

 とん、とどつくように肩を叩かれ、苦笑しながらルカ

はサヤと位置を入れ替えるように座った。

 反対に、サヤは赤い瞳を油断なく前へと見据えて立つ。

しばらく静かな時間が過ぎて行った――。



 今更ながら、ルカは二人っきりだなと思った。

いつもはたくさんの人がいるのに、今はサヤと二人きり

という状況に少しときめきを感じる。

 こんな時なのに、と自分を責めるもそれはなかなか消

える物ではなかった。

 当のサヤは、まるで意識などしていないのかずっと見

張りを続けているが。

「――サヤ?」

「……ん?」

「あ、ごめんなさい。ただ呼んだだけです」

「なんだよ……」

 ぴくっ、とサヤの黒い耳が動いた。

音もなく近づくと、そっとルカの手に自分の手を重ねる。

 赤くなったもののルカは手を離そうとは思わなかった。

「――ルカ」

「は、はい……」

「俺、怖くないよ。皆が――ルカがいてくれるなら怖く

ない。ルカとなら、どこまでも行ける。どこまでも戦え

る」

 ルカが少し強く、でも痛くないように手を握り返すの

が分かってサヤは微笑んだ。敵が来てる、と小声で呟く

と彼の表情が引き締まる。

 いつもは見せないような、凛々しさの混じった顔に頼

りがいを感じてサヤは手を繋いだまま一歩足を踏み出す。

「やい、出てこいよ科学者ギルド! 俺達は逃げも隠れ

もしない! お前ら全員叩き潰してやる!」

「――かかって来てください」

 チッと舌打ちの音が聞こえた。隠れていた科学者ギル

ドが見破られた事で、武器を構えながら姿を現す。

 素人のようだ、と分かり少し二人はほっとした。

「くそぅ、この化け物共が!」

 構えた拳銃を男が発砲する。しかし、手はかなり震え

ていたし撃つのは初めてなのか上手く狙えていなかった。

 ルカとサヤの敵ではない。

撃った反動でよろめいた男に、ルカが飛び掛かって拘束

した。

 さらに、サヤがもう一人隠れていた男へと肉薄する。

「くっ……!」

「見つかってないと思ったのかよ! 俺の鼻を舐めるな

よ……」

 見つかってないと思っていたのだろうが、サヤの嗅覚

を侮っていたのが彼の運のつきだった。

 飛び蹴りをくらい、吹き飛ばされた男は床に叩きつけ

られ、滑るようにルカに押さえつけられている仲間の近

くへと転がって来る。

「――サヤ!」

「――ルカ!」

 二人は同時に相手の名前を呼び、アイコンタクトだけ

をするとこれまた同時に動いた。

 位置を入れ替え、ルカは床に転がった男に、サヤは直

前にルカに押さえつけられていた男の方へと素早く移動

する。

「「なっ!?」」

 不意を打たれ、硬直する男にまずサヤが手刀を叩き込

んで気絶させる。

 ルカもまた転んで動けない男に体ごとぶつかるように

して倒していた。

 やった、という言葉など必要はない。

無言で片手をあげ、ぱちんと合わせあった二人は満面の

笑みを浮かべてお互いを見つめていた――。




 今回はサヤとルカ回でした。考えてみたら、

二人だけの話ってほぼ初めてな気がします。

 恋愛あり、バトルありみたいな感じになって

しまいました。

 次はシオンとルー回になるかもです。

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