それぞれの想いと力 その1
ついに最終局面ともいえる戦いが始まった。
「ホラー・ギルド」のメンバー達とリーダー、そして
協力者の二人は駆ける。
ただ一人の少女を、救いを求める言葉さえも言えな
い少女を助けるために。
仲間に愛された少女を助けるために。
「がう――っ! どけよ、食っちまうぞ科学者ギルド
――っ!」
サヤ=ライリーは長い赤い髪を揺らし、同色の瞳
を獣のようにぎらつかせながら叫んだ。
その様子に、サヤを止めようとした白衣の男が怯
んだように立ち止まる。
「――えいっ」
と、そこに銀色の髪に眼鏡をかけた倉木ルカが飛
び出して、不意打ちをくらわせた。
「愛の力ね~」
「あ、あああ愛じゃねえよ!」
途端に、サヤが真っ赤になってわたわたし出す。
照れない照れない、とくすくす笑いながら三つの白
に近い銀の尻尾を振ったのは夕顔だ。
と、ルカが泣きそうになったのでサヤはびくっと
なって動きを止める。
「そ、そんなに嫌なんですか?」
「べ、別にそういう訳じゃ……」
「やっぱり仲がいいんじゃないの~」
夕顔がもう一度言う。サヤはさらに真っ赤になっ
てう~っ、と唸ったがルカの方を気にして文句を言
う事はなかった。
おい、と褐色の肌に薄い金色の髪をした青年、
エリオット=アディソンが夕顔の頭を軽く小突く。
痛いわ~、とのんびりした口調の彼女に呆れ顔を
していた。
「ここはギルドじゃないんだぞ? 今はサヤをから
かったりしている場合じゃない」
「分かったわ~」
本当に分かってるんだか、とエリオットがため息
をつく。
しかし、怒られた夕顔は反省したらしくきちんと
目の前の敵に向き直っているみたいだった。
「エリオットも、油断は禁物よ!?」
「分かりま……すまん。分かってるよ」
ぐぃっと腕を引かれ、エリオットは苦笑しながら
つややかな茶の髪をなびかせた、吾妻夙へと視線を
移した。
つい依然と同じように敬語を口にしてしまい、謝っ
てから頷く。
よろしいとばかりに微笑む彼女が、やはりエリオッ
トは好きだった。
そんなわいわいと楽しそうな雰囲気に、嫌気がさし
たような顔をしているのはギルドマスターであるルイ
ア=ラクレンサだった。
エメラルドのような色をした片目が、苛立ちを含ん
で細められる。
彼の瞳は隻眼で、片目は黒い眼帯で隠されているの
だ。
「いいのか、こんなピクニック気分で……」
「まあまあギルドマスター、そんなに目くじら立てな
くてもいいじゃありませんか」
そんな彼を、なだめるように発言するのはロッカ=
ロッタだ。
一見可愛らしい少女の姿をしているが、何故か人参の
匂いを嗅ぐと魔物に変貌するという特殊な能力を有し
ていたりする。
淡い水色の髪を揺らし、水色の瞳にルイアの姿を映
す。
しかし、ルイアの視線は自分を見てはいない事に少
しむくれていた。
「あんなに楽しそうにしやがって……! くそっ……」
彼の視線に映るのは、炎のような紅い髪を揺らす黒い狼の耳を持つ
少女。『ホラー・ギルド』のギルド・リーダーである、サヤ。
(ギルドマスターは……まだ彼女の事を……)
馬鹿な人、とロッカは思った。でも、その馬鹿が気になってしまう
自分もまた、馬鹿なのかもしれない。
「ギルドマスター……」
行きましょう、とロッカは声をかけるために、彼の腕を軽く掴もうと
した。が、魔術反応に気づいてしまったために幾分強く腕を引っ張る
羽目になってしまったようだ――。
「いてぇ!? おい、ロッカ――!?」
抗議をしようとした、ルイアの声が尻すぼみになって行った。
腕がもげるのではないかというほどの力ではあったが、今まで彼がいた
場所をいくつもの火球が通り抜けていく。
あのままあの場所にいたら、ただでは済まされなかった。
「ロッカ……すまない」
「皆さん、ここは危険です! 逃げて!」
こくり、とただ頷いて見せただけでロッカは鋭い声を投げた。
唐突の事に、全く動けないルイーズ・ドラクールことルーを、シオン=
エレットが横抱きにして走り出した。
危ねぇ!とルカを突き飛ばそうとしたサヤが、腕を引かれてそのまま
一緒にごろごろと転がる。
青ざめた夙の腕を掴んでエリオットが距離を取ろうとして、その場の
態勢がどんどん崩れて行った。
ゆきなと夕顔はどうしたらいいか分からないらしく、動けない。
「どうしよう……どうしたら……嫌だ、嫌だ……っ、こんな所で!」
「しっかりしてゆきな! ――サヤ、エリオット! ルイア様でも誰
でもいいから早く指示して!」
「全員……散開……」
いつもの強気さが嘘のような、ゆきなの泣きそうな顔を見た夕顔が
悲鳴のような声を上げる。
恐怖にかすれたサヤの声がその場に響き、全員はその場から敵を引き
つけつつ移動をする事をよぎなくされた――。
長らく投稿出来ていなかったの
ですが、ようやく投稿のめどが立ち
ました。
思ったより長くなりそうな兆しです
が、最後まで見ていただけると嬉しい
です。




