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ホラーギルド  作者: 時雨瑠奈
闇オークション潜入
3/35

闇オークションの証拠を暴け! 前編

 温かい陽光が差し込む、ギルドの室内。

『ホラー・ギルド』のメンバー達は、

回された依頼書を確認していた。

 同時に、彼らは今食事中なのだが。

さすがに今は時間がないので、いつもは

お行儀が悪いと怒る吾妻夙も今日は

静かだった。

 白い耳と尻尾をぱたぱた揺らしながら、

夕顔が朝食のリクエストを取っている。

 今日は金色の瞳をきらきらさせた

ルイーズ=ドラクールことルーが

彼女のお手伝いをしているようだ。

「皆さん~ホットサンドの中身は何が

いいですか~?」

「あたしも一緒に作るよ、ゆうちゃん!」

 上機嫌そうに狼の黒い耳をぴくりと

させながら、ギルドリーダーのサヤ=

ライリーはふさふさした狼の尻尾を

ぱたぱたさせていた。

「あ、俺ブルーベリージャムと

クリームチーズな! ……あ」

 それから、褐色の顔を苦笑気味に

しながら見ている、エリオット=

アディソンに気付いて顔を赤くする。

 こほんと咳払いをしながら、一枚の

紙をメンバーへと突き出した。

「これが久しぶりの依頼だぜ!!」

 なんとか威厳のような物を出そうと

する幼きリーダーに、くくっとおかし

そうに笑いながらエリオットがルーに

手を上げた。

「……はははっ。ルー、俺ハムと

チーズな」

 は~い、とルーが嬉しそうに料理を

開始する。何笑ってんだよ、とさらに

顔を真っ赤にしてサヤが怒った。

 まあまあ、と夙がつややかな茶色の

髪を揺らしながらサヤの紅い髪を撫でて

なだめる。

「夕顔、私は餡子と抹茶と黒蜜でお願い

しますわ。――ルカとゆきなとシオンは

どうするの?」

「え、えっと……苺ジャムとバニラの

アイスクリームでお願いします……」

「あたしはチョコレートとバニラ

アイスね」

「じゃあ、僕はバターとハムに

するよ」

 これで全員の注文が揃った。

ちなみに、ルーはサヤと同じ物、

夕顔は夙と同じ物にするようだ。

「……で? 今日の依頼は何なの?」

 仮面ごしにシオン=エレットがサヤを

見つめながら言った。サヤは黙って

頷くと、紙の一点を差して説明を

始める。

 依頼の内容は、闇オークションに、

〝商品〝として紛れ込む事だった。

盗品のほかに、珍しい妖怪や人間も

売り買いされているというのだ。

 それを阻止するのが今回の目的と

なるようだ。

 最低な事する奴はどこにでもいる

のね、と白に近い銀の髪を逆立て

ながらゆきなが吐き捨てた。

 ルカは銀色の瞳を悲しそうに

伏せている。無言で全員にホット

サンドの皿を差し出したルーと

夕顔も、いつもの明るさがまるで

感じられなかった。

 きっと売られて行った者達に

胸を痛めているのだろう。

「サヤ、どうだ?」

 薄い青い目に怒りをにじませた

エリオットに聞かれ、サヤはこくりと

頷いた。あぐりっ、と大口を開けて

あつあつのホットサンドを頬ぼる。

「オレは受けるよ。『禍の目』なら高く

売れんだろ、紛れ込む事は出来るさ」

「サヤが行くならあたしも!!」

 サヤの親友であるルーが手を挙げた。

しかし、冷たい銀の瞳でゆきなが

異を示す。

「あんた、売れるの?」

「ゆきは知らないんだっけ? ルーが

『できそこない』って言われてた訳。

見せてやれよ、ルー」

 ルーは目を閉じた。吸血鬼ヴァンパイアである

彼女が、いつもは隠している羽根がふわり、と

現れる。

 それは、他の者のように蝙蝠のような黒い

羽根ではなかった。妖精のように、透き通った

夕日の色をしていた。

「あたしは隔世遺伝なの。何代か前に、妖精族と

結婚した人がいたんだって」

 ゆきなが目を見開いたまま固まっていた。

まるで、凍らされたかのように。

「他に行く奴は?」

 シオンが手を挙げた。ホットサンドは彼の

好みに合っていたらしく、口元に微かにハムの

切れ端がついているけれど気づいていない。

 夙に睨むように見られ、慌てて口元を

拭っていた。

「……ボクも行きたい」

「あ、シオンは駄目」

「なんでだよっ!!」

「シオンは売れないよ。なにも特徴ない

じゃん。あ、そうだ、仮面取ってみろよ」

 少し考え、サヤは紅い目でシオンを見やった。

シオンが抵抗するのを構わず、強引に仮面を奪う。

 意外なほど可愛らしい顔が現れた。

全員が目を見開いている。彼らは一度も、シオンの

顔を見たことがないのである。

 シオンはたちまち真っ赤になり、サヤに返せと

迫った。夙の差すような視線に気づいたサヤが、

口の中の物を飲みこんでからシオンに向き合う。

「駄目。仮面を取ったままじゃなきゃ、お前を

行かせられないよ」

 真っ赤になって彼は唸った。

だが、どうしてもルーと一緒に行きたかったらしく、

渋々了承した。

「私も行こうかしら」

「夙様!!」

 上品に銀製のナイフとフォークを使って、ホット

サンドを食べていた夙が、おっとりと言うと、

とんでもないとばかりにエリオットが叫んだ。

 口元を紙製のナプキンで拭いながら夙はムッと

なっている。エリオットがルーと夕顔渾身の作で

あるはずのホットサンドを、一口で味わいもせず

食べたので夕顔が嫌そうな顔になった。

 彼は夙に対しては過保護すぎる嫌いがある。

他のメンバーならいいのかよ、とサヤがため息を

つくがエリオットは綺麗に無視する。

「あなたは駄目です!! 巫女なのですから!!」

「巫女だからこそ、闇の世界を知っておかなく

てはなりません」

「あなたには刺激が強すぎます!!」

 言い合いの末、仕方なく夙はお留守番になった。

まあ、行った所で帰されるだろうが。

 人間はあの場では売れないし、ゆきなと夕顔は

普通の雪ん子と妖怪であるので無理だろう。

 そして、新メンバーの倉木ルカは、怯えた様子も

なくなんとOKした。すでにホットサンドは食べ

終えたらしく、ごちそう様でした、と夕顔に

お皿を返す。

「僕も行きます!! 天邪鬼と巫女っていう組み

合わせって、かなり貴種レアらしいんですよね。

それに、リーダーだって女の子ですし」

 サヤが赤くなり、それと反比例するように、ルーが

拗ねたような顔になった。彼女は、サヤに姉のような

感情を抱いているのだ――。



 役者が決まったので、了承印を押して、依頼書は

新たなギルドマスターのもとへ郵送された。

 サヤ・ルー・シオン・ルカは、人身売買を専門と

している男に会いに行く事になった。

 儲かっているらしく、恰幅のいい三十代ほどの

男は、後に摘発されるとは知らず、ほくほく

顔で彼らを眺めまわしていた。

 一人は上玉、三人は、珍しい貴種レアだ。

高く売れるのは間違いない。

「ところで、なんでおめえらは売られてえんだ?」

 好奇心が湧き上がったのか男が聞いて来た。

 それを聞き、四人は顔を見合わせて、それぞれ

でっち上げな素性を話し始めた。

「あたし、父さんも母さんも死んだの。弟と妹はまだ

小さくて、あたしが売られるしかないのよ」

 女装をしたルカが、わっ、と嘘泣きした。

彼は今レモン色のドレスという可愛らしい恰好だ。

 ちなみに、ルカは女装は嫌だと最後まで抵抗して

いたが、シオンとともに説き伏せられた。

 女性の方が高く売れるから、女装しろ、と命じ

られたのだ。

 今サヤはいつもは全く着ないはずの白いドレス、

ルーはエメラルド色のドレス、シオンは緑の瞳と

同色のドレス姿になっていた。

 サヤとシオンとルカは不本意だったようだが、

ルーは可愛らしい服を着れて嬉しいようだ。

 ちなみに、この服は行く前に急きょ近くの

店で買った物である。

「私はこの目のせいで苦労しているから、この目で

売られるなら本望だわ。居場所はどこにもないんだもの」

「私は父さんと母さんに売られたの。でも、彼らと離れ

られるならどこへ売られたっていいわ」

「あたしだって!!」

 サヤ・ルー・シオンの順に話した。サヤは、いつもとは

違う口調なので、とても言いにくそうだ。

 こうして四人は、とりあえず人買いの家でしばらく

暮らすことになった。オークションまでは、まだ

日があるらしい。

 人買いは、高く売れるからか、事情を憐れんでいるのか、

意外なほどに優しかったので、彼らは楽しく過ごす事が

出来た――。

 サヤ達が半妖怪や珍しい種族を売り買いする

闇オークションに潜入するお話です。続きます。

 まだ仕事をしている所を書いてなかったので

書かせていただきました。

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