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ホラーギルド  作者: 時雨瑠奈
近づいていく距離
16/35

狼少女の想い

 サヤ=ライリーは、せっぱつまった

ような、怒られる子供のような顔をして

ギルドに帰ってきた。

 倉木ルカももちろん一緒である。

サヤは同じギルドメンバーのエリオット=

アディソンに、ギルドを出る直前に言った

事を後悔していた。

 かなり酷い事を言ってしまったのだ。

お前に分かる訳がない、なんて本心じゃなく

ても言ってはいけなかった。

「リーダー、僕が代わりに謝りましょうか?」

「ううん、俺が行く……」

 サヤの顔は青ざめていたが、決して逃げたりは

しなかった。怒れるかもしれない、ひょっとしたら

嫌われてしまったかもしれない。

 そういう不安もあったけれど、サヤはエリオット

から逃げたくはなかった。

 たとえ許してもらえなくてもきちんと謝りたい。

震える小さな手を、ルカは微笑みながらしっかりと

握っていた。

「あ、エリオット……」

 と、そこに当の本人がつかつかとやって来た。

真っ直ぐにサヤを目指して歩いている。

 サヤはびくっ、と身をすくませ、握った手に

力が籠った。

 ルカは手が痛くなったけれど、その痛みに

たえて動かなかった。

「え、エリオット、あの……」

「サヤ……」

 二人と炎のように赤い目と、薄青い瞳が

しばらくかち合った。

 お互いに見つめ待ったまま動かず、時間

ばかりが過ぎていく。

 と、二人は同時に口を開いて言葉を

発した。

「「ごめんっ!!」」

 サヤ達は驚いたように再び見つめ合った。

どうなるのかとルカはハラハラしたような

顔で成り行きを見守っている。

「「え……?」」

 二人はお互いに、エリオットから先言えよ、

いやサヤから……と、言いつつ譲り合うような

行動を見せた後、何度か言い合いになり、結局

サヤが押し切られて話をする事になった。

「ごめん、エリオット。オレ、言いすぎた。

俺のためを思ってくれた、って分かってた

けど素直になれなくて……」

 紅い目が水分を含んで潤む。

ルカの手を握る手の力が弱まり、慌ててルカは

少し力を込めた。

「俺も悪かったよ。無神経だった。俺、ハーフ

じゃないもんな。お前の気持ちなんて分かる訳

なかった……」

 サヤは激しくぶんぶんと首を振った。

目から流れた涙がポタポタと床に吸い込まれて

いく。

「そんな事ない、そんな事ないよ……」

「サヤ……」

「オレ、オレが悪かったから、謝るから、オレの

事、嫌いにならないで……」

「な、なる訳ないだろ!? 俺こそ、お前が俺を

嫌うんじゃないかと思ってたんだが……」

 サヤとエリオットは同じ事を自分達が思っていた

と分かり、一瞬ぽかんと口を開けて見つめあった後、

どちらからともなく吹き出した。

 とりあえずは仲直りをしたらしい二人に、ルカは

眼鏡をかけた銀の瞳を嬉しそうに輝かせていた――。


 一方、魔導師ウィザードのシオン=エレットは……。

落ち込んでいた。暗い黒のオーラのような物が可視化

出来そうなくらい落ち込んでいた。

 ようやく仮面に隠された顔が、見えないのにも関わ

らず夕顔が悲しそうだと見破れたくらいに深く落ち

込んでいた。

 うざっ、とゆきなが呟きながら、自分専用の氷の

モチーフが入ったマグカップで夕顔特製のアイス

ココアを飲んでいる。

 それを宥めながら、吾妻夙はルミア=ラキオンと

共に朝食の準備中。

 いつもは真っ先に朝食を作ろうとするはずの夕顔は、

食料品を配達にしてくれた配達員のお兄さんに、白い

三本の尻尾をぱたぱたさせながら接客中だった。

「ご苦労様でした~」

「し、仕事、ですから……」

 ホラーギルドでは、野菜や果物などは育てている

けれど全ての食糧を賄えるはずもなく、お肉や調味料や

魚などは定期的に配達してもらっていた。

「ゆ、夕顔さん……!」

「はい~?」

 人間の配達人、純朴そうな顔立ちをした青年――

レスト=ライガルは実は夕顔に想いを寄せていた。

 彼は前から配達人だった訳ではなく、ここ最近

変わったのだ。以前の配達人はホラーギルドに関わる

事を嫌がって外に箱を放置して行っていたのだが、

彼はきちんと中まで運んでくれるのでギルド

メンバーは助かっていた。

 彼は結構分かりやすく、夕顔以外には彼の想いは

知れ渡っているので誰も邪魔したりはしない。

「あ、あの……」

「料理があるので、また今度でいいですか~?」

「あ……!」

 いつも彼が告白しようとするも、なかなか出来ず

夕顔が気付かずに厨房へと戻って行ってしまうの

だった――。



 まあ、その事は置いておいて、シオンが落ち込んで

いる訳は、ルーことルイーズ=ドラクールにあった。

 ルーはシオンが彼女に想いを告げてから部屋に閉じ

こもって出て来なくなってしまったのだ。

「ルー……」

 呼んでも扉を叩いても出て来ない彼女に、ひょっと

したら自分の想いが迷惑だったのではないか、と

シオンは思ってしまっているのだった。

 彼女の声が聞きたかった。彼女の笑顔を、また見た

かった。夕顔が差し入れた、自分の血を採血した血が

入ったパックや、水や食事は減っているから健康的には

問題はないだろうが、やはり心配だった。

 そこで、シオンは自分の魔術を使ってルーの部屋に

侵入を試みる事にした。

 とりあえず仮面は一時的にはずし、自身の最大の魔術

である空中浮遊術を使う。

 鍵はしまっていなかったので、シオンはルーの部屋の

窓の外から、あっけなく部屋に入る事が出来た。

「すう……すう……」

 部屋の主は健やかな寝息を立てながら眠っていた。

何かいい夢でも見ているのだろうか、その顔はどこか

嬉しそうだ。

 白いシーツの上に、くしゃくしゃになった金の髪が

散らばっている。いつもはきらきら輝く金の目は今は

閉じられていた。

 と、ルーの小さな唇が薄く開いて言葉を発する。

「シオン……」

 シオンはバレたのか!?と、ぎょっとしたように窓辺に

寄りかかった。しかし、彼女はまだ目を覚ましていなかった

のでほっと胸を撫で下ろす。。

 シオンの名前を読んだのは完全な寝言だったようである。

シオンは仮面に隠されていない顔を赤らめ、可愛らしい寝顔を

しばらく眺めていた――。


 が……。

「んー? サヤ~?」

 ふいに手が伸びて来たかと思うや、それはシオンの体を

引き寄せて可愛らしいベッドに倒れ込ませた。

 ピンク色のベッドカバーがかけられたベッドが、二人分の

重みに耐えかねぎしりと軋む。

 小さなベッドは狭くて二人が密着するような状態になって

しまい、シオンは逃げようと試みたが寝ぼけている状態の

ルーの力があまりに強くて出来ない。

 彼女はすっかりシオンの事を親友のサヤだと思っている

らしく、彼を放してくれる兆しさえなかった。

 好きな子とぴったり密着している状況に、ドキドキと彼の

鼓動が速くなる。

(るうううううっ。しっかりしてくれよ僕はサヤじゃないん

だああああっ!!)

 思わず心の中で叫ぶけれど、もちろん彼女には届かない。

と、その時だった。

「くしゅんっ!!」

 ルーが小さくくしゃみをしたのである。

潤んだ金の目が開き、その目が一点を見つめた。

 無論、自分が抱きしめたままのシオンだ。

「きゃああああ――っ!!」

 大絶叫が響き渡り、シオンは無情にもベッドから

蹴り落とされ、しかも顔に平手打ちまでされた。

 自分が抱き寄せた癖に、とシオンは緑色の瞳を

潤ませていた。

 痛そうに景気よく平手の痕がついて赤くなった

頬に手を当てている。

「最低!! 何してるのよ、馬鹿っ!!」

「引き込んだのはルーの方だぞ!! サヤと間違えて

僕を……!!」

「勝手に部屋に入ったのは誰!?」

「うっ。それは……」

 部屋に入ったのは事実だったのでそれに関しては、

シオンはルーに言い訳出来なかった。

 虹色の妖精に似た羽を揺らしながら怒る彼女から、

視線をそらしながら呟く。

「でも、心配だったんだよ」

「シオン……」

 ルーは少し機嫌を直してベッドから起き上った。

実は彼女も、ずっと彼の事を考えていたのだ。

 ルーにとって彼は友人であり仲間で、一人の少年

として、異性として見た事などなかった。

 その彼がいきなり告白してきたのだ。

かなり悩み、ルーはその答えを導き出したのだった。

「私、シオンのこと仲間としか思ってなかった。

だけど、シオンの気持ち嬉しかったし、まだ分かん

ないけど、付き合ってみる?」

「はああっ!?」

 気の抜けたような声を上げたシオンは、じろりと

ルーに睨まれたが、それも無理はなかった。

 まるで一緒に買い物でも行く?と聞くかのような

気軽な気持ちで言われたのだ。

 付き合うってもっと真面目な口調で言うべきでは

ないだろうか。

「何よその反応!!」

「普通はそう返すだろ!! 何でそんな何でもない

ような声で付き合うとか聞けるんだよ。馬鹿だろ

お前!!」

「バカってなにようっ!! 好きとかってよく

分かんないんだから仕方ないでしょっ!!

 大体シオンがもっと早く言わないから!!」

「人のせいにするな!!」

 真っ赤になりながらもお互いを罵りあう姿を、

シオンの悲鳴を聞いて駆け付けたサヤ達は、

微笑ましそうに見ていた――。

 一日遅れになりましたが、ホラー・

ギルドの次話投稿をさせていただき

ました。しだいにルーとシオンがいい

感じになっていきます。

 次のスケープ・ゴートはストック

ないのでちょっと時間がかかるかも

です。

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