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ホラーギルド  作者: 時雨瑠奈
新ギルドマスターとの交流
10/35

ギルドメンバーの和やかな一日(?)

 サヤ=ライリーは、一人用の椅子に腰かけて

行儀悪くも足をぶらぶらさせていた。

 右隣には、いつものようにルイーズ=ドラ

クールことルーが、左隣にはルーン姫がいて、

大量のケーキをサヤに食べさせている。

 サヤは今、訪ねてきたルイア=ラクレンサと、

大食い勝負を開始していた。

 ちなみに彼の両隣りには、ルミアと夕顔がいて、

同じように食べさせている。

 さくりと生地にフォークを入れると、とろりと

なめらかなチョコレートの滝が零れるフォンダン

ショコラ。柔らかい生クリームと甘酸っぱい苺で

飾られたシフォンケーキ。

 夙お手製の、栗の甘露煮をたっぷりと使った

贅沢な黄色いクリームとつやつやとした淡い

黄色の栗を載せたモンブラン。

 全部ホールで出されているため、かなりの

量の甘味が彼女達の腹へと消えていた。

 サヤが炎のような紅い目をきらきらさせ、まだ

まだ余裕な顔をしているのにも関わらず、元々

甘い物がそんなに得意ではないルイアはもう

青ざめてしまっていた。

 眼帯に隠されていない、エメラルドのような

濃い緑の左目に涙がにじみそうになっている。

 相当に気持ち悪いらしく、金髪に包まれた

頭小刻みに震えさせていた。

 嫌なら、止めればいいのにと言いたげに、

シオンとエリオットが呆れたようにそれを

見ていた。

 エリオットに至っては、服からわずかに

覗く褐色の肌を完全にすくめてしまっている。

 結局、今回も勝利したのはサヤだった。

金色の目を上機嫌に輝かせたルーに、ピンク色の

可愛らしいハンカチで口元を甲斐甲斐しく拭われて

いる。

 眼鏡をかけた銀の瞳に、倉木ルカはホッとした

ような色を浮かべていたけれどサヤは気づいて

いない。

 ルーンは今日がギルドの初初日なので、楽し

そうな雰囲気に薄桃色の瞳を輝かせていた。

「お前さあ、暇だよな。ってか仕事いいのかよ、

いい加減諦めろよ」

「諦められるものなら二度と来ないわ!!」

 ぎゃあぎゃあと言い合う二人をもう全員は

放っておいていた。夕顔は白い三本の尻尾を

ぱたぱたさせながら開いた皿を片付け、ルミアも

砂色の髪を揺らしながらお手伝い。

 ルーとシオンは仲良く余ったケーキを食べていた。

シオンの顔には今日も仮面が装着されているのだが、

耳がわずかに赤く染まってどことなく嬉しそう

である。

 匂いだけでお腹がいっぱいになりそうだったので、

エリオットはコーヒーを飲むためにギルドへと戻ろう

とした。しかし、黒いオーラのような物を感じ取って

はっと身構える。

 赤い糸で所所刺繍がされた純白の小袖に、真っ赤な

緋の袴を履いた、巫女の吾妻夙がにっこりと怖い笑みを

浮かべていた。

 赤薔薇のような唇は笑みの形を作っているのに、明

るい茶色の瞳は今日もまた笑っていない。

 唯一、大食い勝負に関わっていないゆきなとルカは、

銀の瞳と眼鏡をかけた銀の瞳に、同情の色を浮かべ

ながらも助けには入れなかった。

 エリオットも夙が怖いので止める事は出来ない。

「――あなた達、食べ物を勝負に使ってもいいの

かしら?」

 あまりにも低い、怒りを帯びた声に、大食い勝負に

加担したメンバーと、大食い勝負をやっていたサヤと

ルイアがひっ、と息を飲む。

「――エリオット、ゆきな、ルカ以外の全員、そこに

正座!」

『は、はいっ!』

 そのまま彼女達は正座させられて、夙のお説教を

受ける事になった。夕顔はやっぱり正座に慣れている

ので涼しい顔だが、サヤ、ルー、ルミア、シオンは

足の痛みに早くも涙ぐんでいた。

 特に正座が初になるルーンとルイアが一番辛そう

だったが。

「な、何で僕まで……」

「私、王女なのに……」

「俺はギルドマスターだぜ……」

 大食い勝負には関わっていなかったものの、

ルーと一緒にケーキの証拠隠滅を図ろうとしたと

思われたシオン、王女のルーン、ギルドマスターの

ルイアが文句を言うも、夙は容赦しない。

「知っておられないんですか、ここでは、王女も

ギルドマスターも関係ないんですよ。それに、

シオンは証拠隠滅を図ったでしょう!?」

「「うぅ……」」

「しょ、証拠隠滅っていうか僕はただケーキを

食べただけなのに……」

 今日の説教は五時間にも及び、解放された

サヤ達はすっかりぐったりしてしまっていた。

 今まで知らなかったルーンとルイアも、夙の

真の恐怖を思い知ったのだった――。



 今日のおやつは夙と夕顔が作った、洋ナシの

タルトだった。焼き立てあつあつのそれを、

全員で囲むようにして食べる。

 しっとりとしたタルト生地と、甘酸っぱくも

とろけそうな味わいの洋ナシが見事にマッチ

しており、洋ナシのジャムを煮詰めたナパー

ジュで艶出しされているのでつやつやと輝いて

いて綺麗だった。

 温かいアップルミントのハーブティーを

たっぷり飲んでから、彼らはギルドの裏手に

ある畑へとやって来た。無論、ゆきなはアイス

ティーを飲んでいたが。

 ルイアもまだいるので、サヤとルーとルカは

嫌そうな顔をしていた。

「ギルドに溶け込んでんじゃねえよ。とっとと

帰って仕事しろや!!」

「堅い事を言うな、サヤ。人数がそんなに多く

ないんだから手伝ってやるよ」

「手伝わなくていいから帰れ!」

 にんじんやだいこんの埋まった畑を前に、彼女

達は再びケンカを始めてしまった。

 それを放っておいて、他のメンバーは畑仕事を

開始する。ルーンはやった事がないので、ルーに

やりかたを教えてもらっていた。

 獣のような声が聞こえてきたのは、その時

である。

「な、何これ!?」

 牙を剥き出しにした、焦げ茶色の猪に似た獣が、

どこかから畑へと飛び出して来た。

 猪など初めて見たルミアが悲鳴のような声を

上げる。

 しかし、その獣何故かルイアに狙いを

定めていた。

「な、何で俺が狙われてるんだ!?」

 悲鳴を上げながらもサヤをかばうように

抱きしめたルイアはよけられずに腹に強烈な

一撃をくらいブッ飛ばされる。

 一緒にブッ飛ばされたサヤも痛みは感じた

ものの、彼がかばっていたせいかその痛みは

半減していた。

 サヤは起き上がると、夙、回復を叫ぶ。

「ギルドマスター!! 今、回復を……

きゃっ!!」

「なぎちゃんっ! あぅっ……!」

「とっとと起きろよ、馬鹿! いっ……!」

 回復の光を出そうとした夙は、猪の鋭い

角で薙ぎ払うように攻撃されてよろめいた。

 さらにルーの虹色の羽根を傷つけ、借りを

返すために倒れたままの彼をかばったサヤの

髪をひと房斬り落とす。

「い、嫌……来るな……っ!」

「ルーン姫危ないっ!」

 あまりの恐怖に、ぺたりと座り込んだまま

動けないルーンを、夕顔がかばって白い三つの

尻尾のうち一つに傷を受けた。

 ルカとシオンとエリオットとゆきなは、どう

したらいいのかと迷うように視線を泳がせていた。

 その間も、猪は狂ったように鳴きながら走り

回っている。再びルイアの方に突っ込みそうに

なり、舌打ちしたサヤはシオンに指示を出した。

「シオン!! 火!! 術を使え!!」

「わ、わかった!!」

 邪魔をさせないように、サヤは猪の前に立ち

ふさがった。

 持ち前のすばしっこさを利用して逃げ回る。

獣人や獣などは、全員ではないが火が苦手な

奴が多い。

 ハーフとはいえ人狼ルー・ガルーなサヤは、

その事をよく知っていた。

 と、サヤが逃げている間にシオンの術が完成した。

彼がルーを傷つけられた怒りを口元ににじませながら

手を掲げると、巨大な炎の塊が出現し猪を包み込んだ。

 猪の悲鳴が上がりその場が煙で見えなくなる。

やがて、火が自然消滅して煙が晴れると、そこには

何故か一人の少女がいた。

 淡い水色の短い髪と瞳を持つ少女が、さっきの

猪の正体なのだろうか。

「また、やっちゃった……」

 少女は平身低頭謝り、自己紹介をした。

あまりにも深々と謝られるので、なんだか逆に

申し訳ない気分になってサヤがもういいから、と

焦ったように告げる。

「私、ロッカ=ロッタっていいます。ギルド

マスターの、秘書として任命されました」

「ってルイアの?」

「はい!」

 サヤがルイアに視線を移すと、彼はぎくっと

なったように視線をそらしていた。

 どうやら事実のようだ。

「なんで、イノシシに化けてたんだ?」

「野菜の匂いをかぐと、興奮して化けちゃう

体質なんです」

 と、ルイアがこっそりとロッカから逃げようと

していた。彼の事をあまりよく思っていない、

ルカに肩を叩かれその事に気付いたらしき彼女が

にっこりと笑う。

 呪文のような物を呟くと、縄が現れて彼をぐる

ぐる巻きにしてしまった。ロッカはそのままサヤ

達にぺこりと頭を下げて一礼する。

「では、彼は連れて行きますので」

 笑顔で彼を引きずって去っていく彼女に、サヤと

ルーは素敵なお姉さんだな、とちょっと憧れたの

だった。引きずられているルイアはかなり痛そう

だったが――。

 今回は皆お休みという設定です。

ルイアとサヤが大食い勝負で戦った結果、巫女

である夙に怒られてしまいましたね。

 夙は王女だろうがギルドマスターだろうが

平等に叱ります(笑)。

 新キャラのロッカが加入しました。

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