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甘いお菓子に愛を込めて

※またもや、本編とは関係ない(?)お話です。

 どーぞ♪

 宇宙船に積む荷物。

 それを確認していたアールは、ふと、その不思議なものに目が留まった。

「これは……何だ……?」

 思わず、凝視してしまった。

 その、『手作りチョコセット』に。


「で、これは何?」

 買出しから戻ってきたカリスに、食堂のテーブルに並んだものを指差した。

「ああ、届いたんですね! よかった」

「だから、これ……」

「というわけで、マスター」

 ずずいっと前に出て、カリスはいつになく、真剣な眼差しで口を開いた。

「手作りチョコの作り方、教えてください」

「は、はい?」

 きゅぴーんと瞳を光らせるカリスにアールは思わず、頷いたのだった。


 目の前に湯煎で溶かされたチョコがボウルの中に完成しつつあった。

「初めてだし、型に入れてデコるやつってことで……あ、出来たね」

 カリスの隣で、アールはレシピ本を見ながら、指示を出す。

「チョコが溶けたら、そのまま型に流し込んで」

「はい、マスター」

 言うままにカリスは、チョコを型に流し込む。

「それができたら、今度は冷蔵庫で固める」

「了解」

 流し込んだ型をそのまま、冷蔵庫へ。

「後は、固まるまで待機。えーっと……かなり時間がかかるから、今日はこの辺で。続きは明日にしよう」

「そうですか?」

 まだまだやる気の収まらないカリスにアールは。

「この次は、ちょっと難しいからね。少しは息抜きもしよう。それに僕、もうおなかぺっこぺこだよ」

 本を置いて、アールは、冷蔵庫の中から簡単なものを作ろうとして……。

「ダメですっ!!」

 カリスに止められた。

「か、カリス……?」

「チョコが固まりませんっ!!」

「いや、だいじょ……」

「大丈夫じゃありませんっ!!」

 アールは寂しげな様子で、その日の夕食は外食で済ませたのだった。


「それにしても……今更チョコなんて、なんかあったっけ?」

 アールは、もうすぐ来る、あの記念日に、全く気づいていなかった。


 翌日。

「で……でき、できました……」

 数時間の格闘の末。

「なかなか良いじゃないか」

「ありがとうございます、マスター」

 ちょっと曲がったりとかしちゃっているが、立派な手作りチョコが完成した。

 ラッピングで可愛くすれば、バッチリだ。

「で、それ、誰にあげるの?」

「一つはマスターに」

 ずずいっとラッピングした一つを、そのままアールに手渡す。

「あ、ありがと」

「後は、『女神様』と『天使様』に」

「え? もしかして、今から?」

「今からですっ!!」

 きゅぴーんと、有無を言わさぬカリスの目力によって、アールはいそいそと、二人の待つ家へと船を向かわせたのだった。


「あらあら、まあ! カリスじゃない」

 金髪の女性が嬉しそうにカリスとアールを出迎える。

 一方、カリスは。

「あ、ああああ、あのっ! そのっ!! こここ、これ、め、『女神様』とててて、『天使様』へっ!!」

「え? 私と、あの子に?」

 受け取ったラッピングを早速あけて。

「あら、手作りチョコじゃない! 嬉しいわ。ありがとう、カリス。きっとあの子も喜ぶわ」

「はいっ!! あ、あ、ありがとうござますっ!!」

 ちょっと噛んでいるが、カリスはとっても喜んでいる様子。

「あ、それとね、あなた。丁度良い所に帰ってきてくれたわ」

 にっこり微笑んで、アールを招き入れる。

「丁度いいところ?」

「はい、バレンタインデーのチョコ」

「あ、ああっ!!」

 やっとアールは思い出した。

 今日が何の日だったのかを。

 そして、カリスがどうして、妙に張り切ってチョコを作っていたのかを。

「ありがとう、嬉しいよ……」

 アールは彼女を抱きしめ、キスをした。それも情熱的なものを。

「んっ……や、やだ……もうすぐあの子、帰って……」

「大丈夫、その前に終わってるから」

 そのままアールは、彼女をお姫様抱っこして、寝室へ。

 カリスはというと。

「よ、喜ばれましたっ!!」

 片腕を大きく振り上げ、ガッツポーズを決めていた。


 その後、カリスは猛特訓したお陰で、一流のパティシエ並みのお菓子作りスキルを習得したのは、いうまでもない。


 ちゃんちゃん。

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