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メダカとともに

作者: starship7

今日、私たちのめだかに異変があった。5匹のうち4匹が水槽の底のほうに沈んでいた。



息をしている様子がなく、少し動かしてみたがまったく動かない。



突然やってきた4匹の死。



驚くとともに、昨日まであんなに元気に泳いでいたことを思うと、あまりにもあっけなく



静かに亡くなったので、すぐにはその死を受け入れられなかった。



また、動き出すのかとじっと見ていたがもう2度と動かなかった。



1か月半ほど前から、45センチの水槽に5匹飼っていた。



名前も付けてかわいがっていた。



スケルトンという種類のめだか2匹と青めだかという種類の3匹である。



スケルトンは体のすきとおった初めて見る種類だった。



青めだかも初めてのものだった。



スケルトンは、チビとデカと名前を付けた。チビは、他のめだかと比べても一番小さく、



すばしこい動きでかわいらしかった。



青めだか3匹には、大きさくらいしか区別がないので、L、M、Sと名前を付けた。



ちょっと適当だったが、私がそう命名したとき妻は同調してくれた。



こうして、私たち夫婦のめだか飼育が始まった。




最初は、水槽の水替えやろ過など、することも多く、めだかを飼うのも



大変なのだなと思った。



そのうち、次第に、名前と、姿が区別がつくようになって、めだかもかわいいものだと



思うようになった。



すると、10日くらいしてだろうか、青めだかのSの背中がより青くなってきた。Lと




寄り添うようになり、近づこうとするMをLが追い払うようになってきた。



もしかしたら、Sは雌なのかもしれないと妻と話した。



数日後、Sは産卵した。



私たちはどうしていいのかわからず、ネットでみると卵は母魚や他のめだかに食べられて



しまうので隔離したほうがいいと書いてあった。翌日ペット屋さんで妻が小さな水槽を



買ってきて、親めだかと一緒に隔離した。



すると今度は、スケルトンのデカが産卵したのである。




小さな水槽には卵を抱えた、Sとデカが一緒に隔離されることになった。



デカも雌だったのである。相手は2匹ともLと知って驚いた。



スケルトンと青めだかは種類が近いのだろう。仲良くなれるのだ。



次の日、妻が、産卵藻というものを買ってきて小さな水槽にいれてあげた。



水槽に隔離してから1日くらいすると、母めだかは藻などに産み付けるらしく、



いつのまにかお腹についた卵はなくなっていた。



卵を抱えなくなった母めだかは元の水槽に戻してあげた。



すると、1日2日経つとまた産卵していた。デカもSもそろって産卵するのである。



また、小さな水槽にいれてあげた。



何回か繰り返すと、私たちは隔離をあきらめた。



産卵したら大きい水槽から出さないでそのままにすることにした。



もし、大きな水槽で生まれるめだかがいたら食べられずに成長するかもしれないと思った。



めだかは弱い小さな魚である。生き延びるために多産なのであろう。



毎日のように産卵し子孫を増やそうとする。だから、そのままでも生き延びる力を持っている



かもしれない。



新たに生んだ母魚を小さな水槽に隔離しても、以前に産みつけた卵を食べてしまう



かもしれない。



そうすれば、元も子もなくなってしまう。



すこし、途方にくれ、これ以上わたしたちにできることはないと思った。



でなければ、また小さな水槽を買ってくるしかないのだ。このまま産卵が続けば家は



水槽だらけになってしまう。



そこで、自然に任そうということになった。




何日かたった。



デカとSが産卵した卵が産み付けられたはずの小さな水槽は何の変化もなかった。



5匹が住む大きな水槽も、あいかわらず、デカとSが産卵を繰り返し、卵が孵化する




わけでもなかった。




大きな水槽は次第に水が汚れてきて、水カビが底砂を覆うようになっていた。



今度水を換えるときは、藻も一緒に洗ってきれいにしようと思っていた。



もし、産卵した卵が藻についていても、水はきれいにしてあげないといけないと




思ったのである。




日曜日の朝、水槽の水を取り換えることにした。



藻も水中の貝殻の置物もみな洗ってきれいにした。



ろ過器のフィルターもみな換えた。



これまで1週間に1度はやってきた水交換。水を入れ替えると透き通ってきれいな水槽になる。



水の交換が終わった時、妻が、この小さな水槽の水ももう捨てようかといった。



小さな水槽のほうは、デカとSの卵があるはずだが、もう10日以上たっているのに



何の変化もないのだ。



ネットでは1週間くらいで孵化するという。



たぶんもう生まれないだろうということで妻はそういったのだ。僕も同じ気持ちだったので、



うん、捨てようと同意した。




しばらくして妻の大きな声が聞こえた。



「生まれてるよ!!」



小さな小さなめだかの子供が生まれていた。



ボウフラよりも小さな稚魚が泳いでいた。



妻が見つけなければこの新しい命は捨てられていただろう。



よく見ると1匹ではなく数匹の小さなめだかが泳いでいた。後でわかったが、



スケルトンと青めだかの二種類の稚魚がいた。。



私たちは、小さな水槽を稚魚の住処として育てることにした。



数えてみると10匹くらいはいるようだ。スケルトンと青めだか。



親めだかにそっくりである。小さいくせに泳ぎや姿は一人前である。



餌を少しずつあげていくことにした。




2日ほどたった今日。



朝見ると大きな水槽の5匹のうち4匹が泳がずに沈んでいた。



生き残ったのはデカ1匹。



くるくる回ったりして遊んでいた姿はない。



一番強かった、L。



目つきも鋭く強くてデカもSも自分の相手として従えていた。



細身でスマートなMは少しつまはじきだったけれど、ときどき、Sに近づいてはLに



追い払われていた。



Sはここに来てからともかく毎日のように一生懸命産卵していた。



チビは小さくて敏捷でかわいいスケルトンだった。



この4匹が死んで、デカだけが残った。



理由はわからない。



4匹が一緒に死んだということは、何か共通の理由があるのだろうか。



たとえば水換えのせいかもしれないと思う。



でも、これまでと同じやりかたでやっているし、3日間くらいはなんともなかったのである。



しかし、昨日まで、5匹とも元気に水槽の中を泳ぎまわっていたのにそのめだかたちが



水槽の底に沈んで動かないという現実をどうしても受け止めなければならない。



私たちは、すぐに埋葬することにした。



裏山の古墳神社に4匹の小さななきがらを紙コップに入れて連れて行き、



木の切り株のそばに埋葬した。



私たちが二人で生き物を飼ったのは初めてだった。



小さな4匹は紙コップに入るほどの大きさだった。



土に返してあげることが最良の供養だと思った。



短い間だったが、私たち夫婦を本当に楽しませてくれた。



生き物を飼うことの難しさだけでなく、どんなに小さくても生き物は、一つ一つの命



そのものだということを教えられた。



そして何よりも、彼らの子供を残してくれたのである。



L., M, S、チビがいなくなっても彼らの子供たちが新しい命をはぐくんでいるのである。



決して絶えることのないめだかの生命の偉大な力と、でも、私たちと一緒に



同じ時間を過ごしたかわいらしい4匹のめだかたちの思い出が私たち夫婦に新しい生きる力を



与えてくれたと思う。


 追記                    


  ただ1匹残っていたスケルトンのデカは、今日の朝、水槽の底に沈んでいた。


  仲間の4匹が去ってから、3日間だけ生きていた。


  その4匹と同じ場所に埋葬した。


  今はだれもいなくなった大きな水槽と、10匹ほどいる彼女たちの稚魚の小さな


水槽がのこっている。


  喪失感と同時に新たな命をひきうけるため、私は5匹のめだかにさよならをした。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい [気になる点] とくになし [一言] めだかや魚類は一気に水換えはだめですよ 多くて半分、2/3です!!! 少し汚れてるくらいがめだかにとってはすみやすいんですよ!
2015/04/25 18:40 通りすがりめだか
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