表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/31

24.七夕


 久しぶりに、パーティー全員が揃った。

(……全員揃うの、いつぶりだ?)

 思い返してみるが、すぐには出てこない。

 ダンジョンブレイク、新ダンジョン、研究所、大学――

 ここ最近は、ずっとバラバラに動いていた。

 だからこそ。

「……なんか久しぶりだな」

 自然とそんな言葉が出た。

「ですね~」

 ヒカルがだらっとソファに寝転がりながら返す。

「全員集合とか、いつ以来っすかね」

「この前の総力戦ぶりじゃないか?」

 正利さんがコーヒーを片手に答える。

「いや、あれは集合っていうか“強制召集”っすよ」

「それな」

 黒瀬が即座に乗る。

 ……確かに。

 あれは集まったというより、集められた、だ。

 場所はギルドの一室。

 特に何かあるわけじゃない。

 ただ、なんとなく集まった。

 それだけだ。

(こういうのも、悪くないな)

 戦いの合間の、ほんの少しの休息。

 それがどれだけ貴重か、最近よく分かる。

「そういえば」

 詩乃さんがふと思い出したように言う。

「今日って七夕ですよね」

「……ああ」

 言われて気づく。

 7月7日。

 七夕。

「短冊とか書きます?」

「いや、急にどうした」

「なんとなくです」

 にこっと笑う。

 ……まあ、たまにはいいか。

「願い事かぁ」

 ヒカルが天井を見上げる。

「レベル100になりたい、とかっすかね」

「現実的だな」

「いや現実的じゃないでしょ」

 黒瀬がツッコむ。

「俺は……そうですね」

 少し考える仕草。

「もっと効率よく稼げる方法が欲しいっす」

「お前はブレないな」

 思わず苦笑する。

 こいつは本当に一貫している。

「透は?」

 振ると、少し驚いた顔をする。

「え、俺っすか」

「他にいないだろ」

「うーん……」

 少し考えてから。

「普通に、強くなりたいっす」

 短い言葉。

 だが、芯がある。

(……いいな)

 前よりも、迷いが少ない。

 確実に前に進んでいる。

「仁さんは?」

 逆に振られる。

「俺か?」

 少し考える。

 願い事。

 そう言われると――

(……なんだろうな)

 色々ある。

 だが。

「平和に過ごせるなら、それでいい」

 口に出たのは、それだった。

 一瞬、沈黙。

 そして――

「いや無理でしょ」

「無理っすね」

「無理だな」

「無理ですね」

 全員一致。

「お前らな……」

 さすがに苦笑する。

 だが、否定できない自分もいる。

(……まあ、無理か)

 現状を考えれば、どう考えても。

「じゃあ、短冊っぽいの書きますか」

 詩乃さんが紙とペンを配る。

「本当にやるんですか」

「やりましょうよ」

 楽しそうだ。

 こういうの、好きなんだろうな。

 仕方なく、受け取る。

 ペンを持つ。

(……何書くかな)

 少しだけ考えて。

 さっき言った通りのことを書く。

 “平穏”

 それだけ。

(シンプルでいいだろ)

「見せ合います?」

「いやいいだろ別に」

「いいじゃないですか~」

 ヒカルが勝手に覗こうとしてくる。

「やめろ」

「うわ、平和とか書いてる」

「お前見たな?」

「見ました」

 こいつ。

「理想高すぎません?」

「現実見ろ」

 黒瀬まで乗っかってくる。

「お前らな……」

 ため息。

 だが、どこか笑える。

 その後も、どうでもいい話が続く。

 最近のダンジョンの傾向。

 装備の話。

 食べ物の話。

 本当に、くだらないことばかり。

(……いいな)

 こういう時間。

 守りたいと思う。

 自然と、そう思った。

 ふと、窓の外を見る。

 夕方。

 空は少しずつ暗くなり始めている。

 七夕。

 本来なら、もっと穏やかな日常の中にある行事だ。

 だが今は――

(そんな余裕、ないよな)

 世界は変わっている。

 確実に。

「最近さ」

 黒瀬がぽつりと言う。

「ダンジョン、多くないですか?」

「……ああ」

 誰もが感じていること。

「前より明らかに増えてる」

「だな」

 正利さんも頷く。

「しかも質も上がってる気がする」

「それな」

 ヒカルが珍しく真面目な顔をする。

「普通にキツいっす」

 軽く言っているが、本音だろう。

「ニュースでもやってましたよ」

 詩乃さんが言う。

「覚醒者の数、増えてるって」

「……だろうな」

 体感でも分かる。

 街でも、ちらほら見かけるようになった。

 “それっぽい人間”。

(第4波、か)

 研究所で聞いた話が頭をよぎる。

 これは――

 始まりに過ぎない。

 窓の外。

 夜空に、小さな光が見える。

 星だ。

 本来なら、願いを託す日。

 だが。

(願ってどうにかなる状況じゃない)

 現実は、もっとシビアだ。

 それでも。

 こうして笑っていられる時間があるなら。

 まだ、大丈夫だと思いたい。

 静かに、息を吐く。

 そして、もう一度空を見る。

 遠く、淡く光る星。

 その下で――

 世界は、確実に変わり続けている。




小説家になろうの読者ほど信頼できる評価は無いと思っています!評価とコメント、お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ