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23.大学?だよね


ギルドに戻ると、いつもより少しだけ空気が慌ただしかった。

 受付に向かうと、事務員がこちらに気づいて声をかけてくる。

「仁さん、佐伯さんがお待ちです」

「……佐伯さんが?」

 珍しいな、と思いつつ頷く。

「応接室です」

「ありがとうございます」

 そのまま足を向ける。

(何の用だ……?)

 NDGUの件が頭をよぎる。

 たぶんそれだろうが――

 こういう時は、だいたい“軽くない”。

 ドアをノックし、入る。

 応接室。

 ソファに座っていたのは――

 佐伯さん。

 こちらに気づき、立ち上がろうとする。

「あ、そのままで大丈夫ですよ」

 軽く手を上げて制する。

「すみません」

 座ったまま会釈。

 俺も向かいに腰を下ろす。

「本日はどうしましたか?」

 単刀直入に聞く。

 すると、佐伯さんは一度頷いてから――

「国立対ダンジョン総合大学についてです」

(やっぱりか)

 内心で納得する。

「名前こそ“対ダンジョン”ですが」

 佐伯さんが淡々と説明を始める。

「実際には、かなり専門性の高い機関になります」

「専門性……ですか」

「はい。歴史、物理学、生物学、防衛、戦術などの各分野の専門家が講師として参加します」

(ガチじゃん)

 想像していたより、はるかに本格的だ。

「で、その大学ですが」

「ようやく準備が完了しました」

「もう動いてるんですか」

「はい」「学校の本格的な開始は秋ごろですけどね。」

 思ったより早い。

「建物自体は元々存在していましたので」

「問題は内部です」

 少しだけ表情が引き締まる。

「実験設備の整備、耐久強化」

「そして――」

 一瞬、間を置く。

「異常覚醒者を収容する施設」

「……」

 さらっと言ったな。

(牢、か)

 必要なのは分かる。

 だが、響きが物騒すぎる。

「地下施設の整備が一番大変だったそうです」

「でしょうね……」

 苦笑しか出ない。

「最終的に」

 佐伯さんが続ける。

「一から建設するのではなく」

「既存施設の改修という形になりました」

「どこですか?」

「埼玉の理化学研究所です」

「……ああ」

 納得。

 あそこなら規模も設備も申し分ない。

「さらに、つくばにキャンパス」

「秩父の山に訓練場を設置」

「秩父は防衛省管轄になります」

(完全に軍事寄りだな)

 いや、もう“ほぼ軍”だろこれ。

「現在、改修もほぼ完了し」

「機材の搬入も進んでいます」

「それで」

 少しだけ柔らかくなる。

「一度、顔を出してみませんか?」

「どうです?」

 後ろから声。

 振り返ると、いつの間にか正利さんが立っていた。

「行ってみたらいいんじゃないですか」

「やることも特にないですし」

 ……珍しく呑気だな。

(まあ、確かに)

 今は大規模任務もない。

 情報収集としても悪くない。

「分かりました」

 頷く。

「行きます」

 というわけで。

 移動。

「送りますよ」

 佐伯さんが言う。

「ありがとうございます」

 ありがたく甘えることにした。

 車内。

 移動中にふと思い出す。

「そういえば」

「入学者ってどうなるんですか?」

 気になっていた部分だ。

 こんな特殊な大学、選抜も厳しいと思っていたが――

「意外と間口は広いですよ」

「え?」

 予想外の答え。

「覚醒者・非覚醒者は問いません」

「え?」

 二度聞きする。

「物理、生物、防衛、論理、戦術などなど」

「ダンジョンに関係する分野で大学に合格していれば入学可能です」

「……つまり」

「共通テストで点を取れば誰でも?」

「はい」

(マジかよ)

 思ってたのと違う。

「もちろん」

 すぐに続く。

「国家機密に関する契約は結びます」

「それはそうですよね」

 むしろそこが本体だろ。

「すでに志願者も出ています」

「どの辺ですか?」

「防衛大学校、東京大学、東京理科大学、早稲田大学など」

「……ガチ勢しかいないな」

 思わず呟く。

「ちなみに」

 佐伯さんがさらっと付け加える。

「国家公務員扱いになります」

「は?」

「給与も出ます」

「……」

(何それ最強か?)

 学びながら金も貰える。

 普通に考えてバグってる。

「各大学の教授や、国内外の各学問の第一人者が“学生として入りたい”と申し出たこともあり」

「少し揉めましたが」

「でしょうね…」

 容易に想像できる。

 やがて――

 到着。

 理化学研究所。

 ……だが。

「……え?」

 思わず声が漏れる。

(何これ)

 セキュリティが異常だ。

 千葉の研究所も大概だったが――

 ここは別格。

 普通に。

 しれっと。

 自衛隊が配置されている。

「本気だな……」

 思わず呟く。

 中に入る。

 広い。

 そして――

 まだ“空”だ。

「搬入中ですので」

 佐伯さんが説明する。

「ですが、主要設備は揃っています」

 歩きながら見ていく。

 講義室。

 研究室。

 設備は一流だ。

 そして――

「地下です」

 案内される。

 降りる。

 重い扉。

 開く。

 そこにあったのは――

「……檻か」

 巨大な収容施設。

 明らかに“モンスター用”。

(ここに入れるのか……)

 人も、なのかもしれない。

 考えるのはやめた。

 地上に戻る。

 別の区画へ。

 視界に入ったものに、思わず足が止まる。

「……おい」

 正利さんも気づいたらしい。

「16式機動戦闘車……?」

 普通に置いてある。

 何台も。

「他にも」

 佐伯さんが指をさす。

「警察の人員輸送車なども配備されています」

「……大学、だよな?」

「はい」

 即答。

(いや無理あるだろ)

 どう見ても防衛施設だ。

「ここには」

 佐伯さんが続ける。

「自衛隊、警察のダンジョン対策課も常駐します。ちなみに、アメリカ軍の方も入学する予定なので気をつけて下さい。変に問題にしないで下さいよ、貴方が動くとへましたら国が潰れます。」

「さすがにそれは言い過ぎでは?」

「そんなこともないだろ、継承機関の根はアメリカにもあるし、仁のことは世界中の覚醒者が知ってる。仁に下手なことしたら覚醒者を全員、敵に回すことになりかねない。」

「仁さんにちょっかいをかける方が馬鹿ナンテスガネ...」

「話を一旦もどすと、ダンジョンの実戦面は、仁さんたち継承機関の方が詳しいですし」

「研究面では、防衛研究所や科学警察研究所の人員も参加しています」

「さらに」

「国家予算、民間資金、双方から資金が投入されています」

「アメリカや、オーストラリアからもダンジョンについての様々な要請が盛り沢山で、ダンジョン対策室も、外務省も青息吐息ですよ。」

 ……。

(スケールおかしいだろ)

「つまり」

 まとめるように。

「一種の防衛施設です」

 さらっと言った。

 正利さんと顔を見合わせる。

「異常……だな」

「ですね」

 苦笑しか出ない。

 少し歩く。

 寮区画。

「ちなみに全寮制です。たぶん仁さんは東京から通うことになるでしょうが。」

「マジか」

「探索者コースは、防衛大学校に近いカリキュラムを採用しています」

「……完全に育成機関だな」

「はい」

 否定しない。

(……来てよかったかもな)

 正直、そう思った。

 ここは――

 “中心”になる。

 ダンジョン時代の。

 情報も、人材も、技術も。

 全部集まる場所だ。

「では」

 佐伯さんが足を止める。

「本日はここまでで」

「ありがとうございます」

 軽く頭を下げる。

「いえ」

「仁さんは、今後こちらでの活動が増えるかと」

「ですね」

「ダンジョン対策室もここに移動になりますので、そのときはまた宜しくお願いします。」

「こちらこそ」

 外に出る。

 空気を吸う。

 少しだけ、現実に戻る。

(……とんでもない場所だな)

 だが。

(面白くもある)

 未知。

 可能性。

 危険。

 全部詰まっている。

「どうする?どこに行く?」

 正利さんが聞く。

「……決まってますよ」

 軽く笑う。

「ダンジョンに行きましょう」

 この大学に入ることになってよかった。

(ここにいれば、全部見える)

 世界がどう変わるのか。

 その最前線が。

 ダンジョン。

 覚醒者。

 そして――世界。

 全てが繋がり始めている。

 物語は、次の段階へ進む。

 もう“個人”の話じゃない。

 世界そのものが、動いている。

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