16.新たな仲間?
ドアが勢いよく開いた。
「一大事ですよ!」
ヒカルだった。
珍しく、というより初めて見るレベルで慌ただしい。
「……どうした」
嫌な予感しかしない。
ヒカルは息を整える間もなく言った。
「新人のパーティーが——一人を除いて全滅した」
一瞬、思考が止まる。
「原因は?」
「汚染」
短い返答。
だが、それだけで十分だった。
「……生き残りは」
「いる。ただ——」
言葉が一瞬詰まる。
「そいつも汚染されてる。今は意識不明」
(来たか)
遅かれ早かれ、こうなるとは思っていた。
だが、実際に起きると話は別だ。
重い。
現実として、突きつけられる。
(……浄化手段が必要だな)
そう考えた、ちょうどその時だった。
「見つけたよ!」
今度はドアが開く音と同時に、恵が飛び込んできた。
息を弾ませながら、真っ直ぐこちらを見る。
「汚染を治せる方法!」
全員の視線が集まる。
「……詳しく」
短く促す。
恵は一度頷き、言葉を整えた。
「ダンジョンのドロップ。私の鑑定で見えた」
「鑑定……そこまで見えるのか?」
「うん。自分がソロで攻略できる等級までなら、モンスターもドロップも全部」
さらっと言うが、十分異常だ。
だが今はそこじゃない。
「場所は」
「九十九里浜。3級ダンジョン」
続けて、恵は言った。
「モンスターは半魚人。問題はドロップ」
一拍。
「——聖玉」
空気が変わる。
「水に浸すと、その水が“聖水”になる」
「その聖水が、汚染を浄化できる」
(……当たりだな)
条件は揃った。
場所も、手段も。
後は——
「取りに行く」
即断だった。
「その前に」
正利さんが口を開く。
「生き残りに会っておけ」
頷く。
それも必要だ。
病室の扉を開ける。
中には、静かな機械音だけが響いていた。
ベッドの上。
一人の少年が横たわっている。
「……名前は?」
「雨宮透」
(……こいつか)
近づく。
そして、手を伸ばす。
額に触れた瞬間——
【対象を確認】
【魔力の逆流が起こっています】
【修復率:5%】
(……やっぱりな)
正利さん。
そして、プー。
あの時と同じ反応。
(適合か、崩壊か)
分岐点。
ここを越えれば——
“人ではなくなる可能性”すらある。
「……助かる可能性はある」
静かに言う。
「ただし」
一瞬だけ言葉を止める。
「死ぬ可能性も高い」
誰も何も言わない。
だが、それでいい。
綺麗事で済む話じゃない。
(それでも)
視線を落とす。
まだ呼吸はある。
まだ、生きている。
(なら——)
「絶対に、間に合わせる」
小さく呟いた。
車に乗り込む。
キーを回し、エンジンをかける。
その時だった。
コンコン、と窓が叩かれる。
「……なんだ」
見ると、ヒカルが立っている。
無言。
だが、顔を見れば分かる。
「乗せろ、ってか」
「当たり前だろ」
ドアを開ける。
ヒカルは当然のように乗り込んできた。
「お前、一人だと死にそうだからな」
「……舐めんな」
反射で言い返す。
が。
(一週間前、2級で死にかけたな)
「……」
何も言えなくなった。
「ほらな」
「うるせぇ」
諦めて、車を出す。
走り出して数分。
後ろから、電子音が聞こえてきた。
ピコピコピコピコ——
(……は?)
バックミラーを見る。
ヒカルがスマホで音ゲーをやっていた。
「おい」
「ん?」
「今それやるか?」
「暇だからな」
(……殴るか)
いや、ダメだ。運転中だ。
ぐっと堪える。
(帰りに殺す)
そんなことを考えているうちに。
「着いたぞ」
九十九里浜。
ダンジョンの入口が、静かに口を開けていた。
「行くぞ」
「おう」
中に入る。
瞬間。
視界いっぱいに、影が広がった。
(……多いな)
半魚人。
その群れが、こちらを取り囲むように現れる。
「4級以上にたまにあるやつか」
「ボスと同時攻略型ね」
面倒だが——
やるしかない。
「まとめていくぞ」
念動力を展開する。
一気に潰す。
そう思った、その瞬間——
咆哮。
空気が震えた。
(……ッ!?)
頭が重くなる。
体が鈍る。
スキルの感覚が——消えた。
「……リセットか」
舌打ちする。
「ヒカル!」
「分かってる!」
すぐに回復が飛ぶ。
体が軽くなる。
「行けるか」
「問題ない」
日本刀を抜く。
(なら——)
斬る。ただ、それだけ。数を減らし、空間を作る。そして——
「……来たな」
ボス。
明らかに格の違う個体。踏み込む。
同時に、拳が飛んできた。
速い。が、レベル差がある。一発は腕で防ぎ、
そのまま、一閃。
音もなくボスは崩れ落ちた。
「終わりか」
「雑すぎるだろ」
宝箱が現れる。開くと中にあったのは——
「……聖玉」
バレーボールほどの大きさ。確かに、それだった。(間に合う)
ヒカルを見る。
「連れてきて正解だったな」
「だろ?」
ニヤついている。
「……調子乗るな」
そのまま外へ。
「帰るぞ」
「おう」
車に乗り込み——
「やっぱ俺必要だったろ?」
うるさい。
軽く蹴った。
「いってぇ!?」
「黙って乗れ」
車に乗り、エンジンをかける。
(間に合え)それだけを考えながら。車を走らせた。
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ステータス
名前_源藤仁
称号_次代の挑戦者、才覚を秘めし者
レベル_78
魔力_
体力_
スキル_念動力、魔力操作
仁の魔力、体力は鑑定魔法が使える西恵が仁より弱く、鑑定魔法の結果が一部しか表示されないためわからずじまい。
汚染への適合
・汚染を食らい、それに適合すると強い肉体が手に入る。ただし、適合できなかった場合待っているのは異常覚醒者になる。それはもはや人間ではなく。適合するか、人間を辞めるかなのだ。
聖玉
・数あるアイテムの一つで、よくダンジョンドロップで出てくる聖水(回復薬)を作れる道具。
使い方はシンプルで水に浸すとその水が聖水になる。ただし、回数を重ねるごとに効果は薄れていき、最終的に魔力を込められるガラス玉になる
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