第二話:噂の怪談 その2
怪談、それは怪しい話でなくてはならない。
高校生が片手間に書いた作品です。
表現力が足りていなかったり、誤字脱字があるかもしれませんが暖かい目で見ていってください。
前回のあらすじ
アスノソラは友人の優斗に誘われて噂の怪談の聖地に向かった。するとそこで青い熊に出会ってしまった。
※この作品での出来事は全て空想です。
作品に登場する団体は現存する団体などとは一切関係ありません。
6
「うぁぁぁぁぁーーー」
優斗の悲痛な叫び声が鋭く耳を破る。
「優斗ッ」
思わず口からこぼれ落ちてしまった。
俺が背後を振り返りかえると彼は背中に深い切り傷を負っていた。
そしてその後ろには青色の熊が直立していた。
俺はそれを見て言葉を失ってしまった。
すると青色の熊は“悲痛”な叫び声と共に致命傷になりかねない攻撃を俺たちに繰り出してきた。
それを見た俺は熊の前に一瞬飛び出して咄嗟に走り出した。
熊に背を向けて走ることが無謀ということくらい承知の上。
でも、ただ何もせずその場に居座り大きな痛手となる前に俺が囮になりヘイトをかうという作戦だった。
この策は熊の習性を利用したものである。
しかしあれは熊に近しい何か。奴が俺を追ってくることはなかった。
コバンザメがサメでないようにそれは熊の見た目を模した別の生き物。外見や名前が同じでも内部の構造が異なっているならそれは同種でない。
俺はこのことに気づくことなく、がむしゃらに走り続けた。
こういうわけでいつのまにか迷子になってしまった。
どうすればいい
パニックになっている自分自身に“落ち着け”と言い聞かる。
そうだ、救急車を呼ぼう
そうと決まれば善は急げ。
俺はスマホを慌ただしく取り出して119番通報しようとした。
その時、あることに気がついた。
「圏外ッ」
思わず声に漏れてしまった。
ここは住宅地のど真ん中。迷子だとしてもその程度のことはわかる。
こんなところで圏外だなんて何かがおかしい。
そんなとこを思っていた矢先
バコーン
あまり大きくはなかったが爆発音がした。
恐怖という感情に脳内を支配され始めた。
無自覚のまま過呼吸になっていた。
だけどもさっきとは違い勢い任せでなくちゃんと論理的に考え行動しようと全身全霊で頭を回す。
しかし結論は“走る”と言う簡単に導くことのできる解だった。
というのもこんな状況で冷静になれるほど俺は肝が据わっていない。
走った。必死に走った。一心不乱に走った。懸命に走った。なり振り構わず走った。
鬱陶しいマスクは気がつけばどこかに行ってしまっていた。
4分くらい走ったのだろうか。
気づいた時には圏内になっていたので俺は残った力を振り絞って救急車と警察を呼んだ。
合理的に考えればこの後はここで待つのが最善策なのだろう。
だがしかし優斗が心配だった。
向こうからは爆発音がしたり圏外になったりと奇奇怪怪なことが立て続けに起きている。
それに優斗は怪我をしていて一刻を争うかもしれない。
そう思うと俺の足は止まらなかった。
ぜいぜいと肺が熱くなるほどに死に物狂いで走りあそこに戻って来た。
戻った時には敷地内は荒れ地と化していた。
さっきまで草本が繁茂していて石作られたお着物がたくさんあった。
なのに今は草本は焼けこげて灰となり、石でできたお着物は跡形もなく砕けていた。
「何があったんだ」
言葉が見つからない。
しかし今はそれどころではない。優斗を見つけなくてはいけない。
すると間を置くことなく安堵と共についに救急車が姿を表した。
俺はせかせかと救急車に向かって救急隊の方々にありのままことを告げた。
すると救急隊の方々が優斗を探すため動き出した。
俺はここから動かないように言われたがそんなことできるわけもなく帰るふりをして森の中に再び潜入した。
「優斗ッ、優斗ッ」
俺は裏の方から森に足を入れ優斗を探し始めた。
爆発?に巻き込まれることなく草本が青々と生い茂る場所に進みそれをかき分け進んで探してみたり急勾配の坂を無理やり降りてみたりと手段を選ぶことなく探し続けた。
探す最中にも奥の景色が目に飛び込んでくる。
優斗が爆発?に巻き込まれて手遅れになっていなければいいのだが。
「優斗ッ優斗ッ」
俺は声が枯れそうになるくらいそう叫びつづけた。
「アスノ...」
物静かな夜だから聞こえるくらいの小さな声で俺を呼ぶ声がした。
その声の先を見ると怪我を負った優斗が倒れていた。
「優斗ッ」
俺は優斗の元に滑り込んだ。
「大丈夫か?」
「大丈夫に見えるのかよ」
優斗は少しの笑みを俺に見せた。
「そうだよな、救急隊の人たちが来てるんだ。呼んでくる」
色々聞きたいことがある。
あの熊はどうなったのか。なぜ敷地内が荒れ果てているのか。なぜ優斗がこんな場所にいるのか。
でもそれは後でもどうにでもなる。
今はこの悲惨な状況をどうにかしないと。
マイナスをゼロに戻さないといけない。
「なぁ、アスノ」
俺が動き出そうとしたその時、弱々しい声で彼が再び俺を呼んだ。
「どうした」
俺はそう優しく声をかけた。
すると優斗はある方向をピンと指差しながら言った。
「あれが食べたい」
グミか何かが落ちているのかと思い優斗の指さす方角を見た。そこには腰くらいのあまり背丈の高くない果実のなった木が林立している。
「あれが食いたいのか?」
俺は深みのある声でそう確認した。
「あぁ」
あまり気が進まなかった。
自然に生えている木の実なんて怪しさの塊。
一般的には森に生えているキノコは専門的知識がないと食べない。それと同じだと思う。
それに加えて見るからにあの実は青いのだ。
青い食べ物に良い印象を持つことができない。
青の類似色たちは暖色に比べて食欲を削ぐ。
「本気かよ。」
自分が食べないとはいい気が乗らない。
「あぁ、なんか無性に食べたいんだ。」
そこまで言うので俺は渋々その木の実を取りに行った。
それに近づくととある違和感を覚えた。
甘いのだ。
甘いというのは砂糖のような“味覚的”に甘いではなくて“魅惑的”に甘い。
植物が虫を誘き寄せる時のように甘いのだ。
四つ、みかんくらいの大きさの食欲を割くような青色の実を取って優斗の渡した。
すると優斗はものすごい勢いで頬張り始めた。
さっきまで気が進まなかったのに俺もなんだか食べたくなった。
大丈夫なのか...
そう思ったものの気づいた時には俺も一つ口に運んだ。
それが思った以上に美味しい。
水々しくゼリーのような食感だった。
パパッと食べ終えて落ち着いた俺は優斗に
「救急隊の人呼んでくるからそこから動くなよ」
そう告げてその場を離れた。
最後に「なんで俺がこんな目に..」という優斗の“絶望”の心の声が聞こえたような気がした。
少しして俺が救急隊を連れて戻って来た際には彼の姿はどこにもなかった。
7
その後、俺は救急隊にとりあえず帰れと言われたので電話番号だけ教えて嫌々家に向かっていた。
優斗のことはあの人たちがどうにかしてくれると信ずる根拠があるからそこまで不安に思っていない。
それはさておき予告なしに多種多様なハプニングが起きすぎて困惑している。
なので今日の出来事を口に出して整理しながら家に帰っている。
「まず何があった?そうだ熊が来たんだ。後方から。つまり住宅地から来た。俺たちが見張っていた山から出て来てわざわざ迂回して後ろから現れるとは考えずらいから近くの山からここまで歩いて来た?でも近くに山だなんてものはないどういうことだ。」
そうブツブツ喋っていると異様に頭がむず痒くなって来た。かいてもかいても治らない。
まぁそういうこともあると思っていたが違和感が増えた。
それは
「髪の毛...」
異常なほどに抜けていく。
一度かくたびに4〜7本ほど抜ける。
抜けたと思われる場所に浮いた感じが残る。
痒いのではなく、瘡蓋がある状態で風呂に入るとそこから何か体液が出てくるような感覚。
その落ち着かない感じの部位の毛を興味本位で抜いてみる。
すると髪の毛が少し青くなっていたのだった。
その青というのは透き通った空の色でもなく海の色でもない少しドスのかかった青なのだ。
なんで....
そう思ったがなんとなくわかった。
心当たりがあるじゃないか。
あの実だ。あの青い実。
そういえば怪物もこんな青だった。なかなか焦った。髪がいきなり青くなる。もう何がなんだかわからなくなってきた。
いつのまにか喋ること、考えることを放棄して淡々と家に向かっていた。
家に着いた。
「ソラちゃんどうしたのその髪の毛」
案の定上親に髪について言及された。
「えーとね」
どんな言い訳をしたものか...俺だってまだ飲み込めていないのに
「木の実を食べたんだよ。そうしたらこんなのになっちゃって.....」
断定しない不安定な口調でそう答えた。
「どういうこと?木の実?」
母は理解が及んでいない様子だった。
それりゃそうだ、木の実を食べたら髪の色が青くなるなんて誰が信じるものか。
母は幸いにも俺が髪を染めることはしないと信じきっていたので話を半信半疑だが一応は信じてはくれた。
「風呂入ってくるよ」
俺は状況をリセットするためにその場を離れる。
俺を洗面台に向かう。
やっぱりだ、めちゃくちゃ青い。
夏季補習の際に学校に行ったら校則違反指導されるという心配が押し寄せる。
散々人のことを校則違反だと罵倒しながらこれはブーメンすぎる。
「どうやって髪って染めるんだ?」
床屋に行くのだろう。でもその方法で解決するとなるとお金がかかる。
とりあえず一切合切を忘れて風呂に入ろうと思った。
もしかしたら明日には色が戻っていたりすると思ったからだ。
「優斗、大丈夫かな?」
ひと段落して落ち着くとふと優斗のことが脳裏をよぎった。
風呂を出て髪を乾かす前にスマホを手に取り優斗にメッセージを送った。
既読はつかない。
いつもなら心配無用なのだが今回に限ってはそうはいかない。
「あいつも俺みたいに髪の色が変わってんのかな...」
心配したところで俺にはこれ以上何もできないと割っきり明日どうなったか聞きに行こうと思った。
「聞きに行くってどこに聞きに行くんだ?」
俺はそのまま寝ようと思ったが少しだけ英単語を覚えなくてはという使命感で起き上がり机に向かう。
「えーと、今回は350から360かな。」
単語帳のページをめくっていると
「痛ッ。」
紙で指を切ったのだろう。
俺は指を確認する。
「あれ?」
出血したような後は確認できたが切り傷はどこにも見当たらない。
「気のせいか....」
8
朝だ。
結局髪色が黒に戻ることはなかった。
PCは再起動すれば大部分のことは解決するのだが人体はそうはいかないらしい。
話を変えて優斗がどうなったかを聞くのは警察がいいと思ったので連絡を入れようとスマホを手に取る。
すると椅子に座っていた父が
「どうしたんだ、その髪の毛」
そう言えば父には何も言っていなかった。
「かぁさんに聞いてない?昨日、木の実を食べたらこんなんになっちゃって。」
他にいい説明の仕方はあるのだろうか?
「そうか。」
思ったより信じているようなあっさりした反応だった。
もっと奇異そうな反応をするものだと思っていた。
「いやーさ、お父さんな昔、おじいちゃんからそんな話を聞いたとこがあったんだよ。うちの先祖は青髪だったて」
「えッ?」
なんだその話、初耳だ。
「お父さんも信じてなかったしおじいちゃんもひいおじいちゃんから聞いた話で見たことないって言ってたんだけど。なんだか思い出しちゃってな」
父の得意技である過去の自慢話。
いつもは興味がないし耳にタコができるくらい聞いた話ばっかで鬱陶しい。
でも今回に限ってはかなり気になる話だ。しかし今はそれ以上に気になる話がある。
「また詳しく聞かせて。」
「おう。どっか行くのか。送っててやろうか?」
父は立ち上がってそう言った。
「いやいいよ。」
たまには運動しないと太ってしまう。
「そうか。」
「行ってくる。」
俺はそう父に告げて玄関に向かった。
「おう。」
家を出ようとしたときに俺を食い止める物がいた。それはテレビだった。
「では今朝のニュースです。昨日午後9時半ごろ『友達が熊に襲われた』という通報が警察に入り出動した救急隊のうち3人が重症、4人が軽傷を負い救助対象の少年が行方不明になる事件が起きました」
どう考えても優斗のことだ。
行方不明。
胸がざわつく。
そうなことを思っているといきなり警察から連絡が入ったのだった。
9
髪の毛が青いと不良のように思われてしまうと助言を貰ったので俺は黒い帽子を深々と被り警察署に向かった。
そこで救急隊の人々や警察から事情を聞かれた。
俺も色々聞きたいことがあったが少しもそれについて教えてくれなかった。
どうであれ優斗が行方不明になった。
これは何かが変だと思った。あの状態の優斗が動けるはずがないし動けたとしても救急隊を待つ方のが最善策だと思う。
俺は関わってはいけない怪談に足を突っ込んでしまったのかもしれない。
話を一通り聞かれ家に帰るため警察署を出るとパーマのかかった若い女性が俺に話しかけてきた。
「ねぇ兄ちゃん、昨日あの神社にいた人でしょ。」
神社...あぁあの寺のことか。
「いましたけど。」
俺は不審者を見るように辛辣な目線でそう答えた。
あんなところにいる大人がまともなわけがない。
そんなもの自明の事柄だ。
「大丈夫やったか?いやさ、あたしもそこにいてさ、兄ちゃんの友達の叫び声を聞いて逃げ出したんや。そんで帰り際に警察の方々に捕まってもうて、今ここにいるって感じや」
女性は話している間俺の顔を見ようとしているのかすごい角度から覗き込んできた。
「あぁはい。」
ものすごい角度で覗かれて少し恥ずかしくなってしまいさらに深く帽子を被った。
「まぁ、あのこと誰にも言わん方がええで。じゃな」
そりゃそうだ。
責任の取れないことはできるだけしたくない。
それにこれを広めてしまうと周りを巻き込んでしまうそんな予感がする。
去り際に女性は俺の髪の毛を触ってきた。
俺の髪の色が青いってことに気づいていたのだろうか?でもわざわざ触る必要はなかったと思う。触られたことで身震いしてしまった。
なんだったのだろう
10
警察から帰る途中に昨日からずっと駐輪場に自転車を置いていることに気づいた。
それを回収するために駅に向かった。
しかし鍵がないことに気づきそのまま家に帰るという意味のない時間を過ごしてしまった。そんな帰りの途中だった。
「やぁやぁ奇遇だね、兄ちゃん」
さっきの女性だった。
本当に奇遇なのか?なんだろうこれは回避不可能な運命のように感じる。
「どうも」
俺は関わると面倒ごとになりそうだったし優斗をまたあそこで探そうと思っていたのでパパッと立ち去りたかった。
「まぁ待ちいな。何をそんなに焦ってるんや。余裕のない男はモテんで」
「それをいう人の方がモテないですよ」
思わず心の声が音となって出てしまった。
「鋭いカウンターやな。悪いがあたしは今までに四人もいるんや」
「つまりは四人に振られたってことですね。何歳か知らないですがそんな短期間で捨てられるなんて見た目だけなんでしょ」
流石に言いすぎたかと思ったが始めたのは相手だしいいかなと思ってしまった。
相手は顔を赤くして拳を強く握っていた。
「まぁええは、そや、こんなことしとる場合じゃなかったは、兄ちゃん髪の毛見せてくれ」
髪の毛?なんでだろう。
この髪色が気になったのかな?確かに奇妙な青色だが..
面と向かって見せてと言われると少し恥ずかしくなる。
でも引くに引けない状況なので仕方なく俺は帽子を外して女性に見せた。
「やっぱか、どないしようか」
やっぱ?何か俺を疑っていたのか?
髪色...あの実を食べたのはまずかったのか?と思い
「あの俺昨日よくわからない実を食べたんですけど」
「せやろな」
気づいた時には女性は誰かに電話していた。
「なぁ、やっぱや、食うとたで。どないする?今は全然やけど、やっぱ種子は消すべきやろか?......せやな。ほないしよう」
さっきから気になっていたけどこの関西弁何かが変だ。
なんだろう。誰が喋っていた関西弁をコピーしているみたいだ。
そんなことを思っているうちに女性は電話を切って俺の前にそびえたっていた。
「ほないこか。」
俺は腹を殴られた。
腹を殴られて意識がぶっ飛ぶだなんて非現実的なことだと思っていたが........
いかがでしたか?
少しずつでも表現力を手に入れられるようの日々努力します。
では軽く登場人物のプロフィール紹介といきましょうか。
名前:アスノソラ(主人公)
生年月日:2008年4月(16歳)
身長169cm
体重51kg
趣味:絵
説明:木の実を食べたことで髪が青くなった高校生。
風呂に入った際に体のありとあらゆる毛が青くなっていることに気づき全身脱毛を検討した。
車に乗っている時にスマホを長時間使用すると酔ってしまうのに電車では酔わないことを不思議に思っている。
名前:優斗
生年月日:2008年9月(15歳)
身長175cm
体重68kg
趣味:ゲーム
説明:陽キャ、ゲームにのめり込んで平日でも睡眠時間が3時間未満なんて日常茶飯事。授業中にいつも寝ているのでついに教員も起こすのを諦めた。
相棒はエナジードリンク。