1話:駒集め
町の説明を少し入れています。
ざわざわざわ・・・ガヤガヤガヤ・・・
駅の騒音は、無数の音が混ざり、重なり合ってできている。
それは、人の声だったり、発車・到着を知らせるベルの音だったり、アナウンスだったと・・。
この煩い駅が静まり返るのは、電車が動かなくなる時間帯。つまり、深夜である。
駅の騒音は日常で、静寂は非日常だった。
そんな、駅があるこの町、新しく作られた空色町にあった。新しくといっても、ここ最近にできたわけではない。約十六年ほど時は経過している。
創立した当初は、毎日がお祭り騒ぎだったのに対して、最近では落ち着いてきている印象がある。
空色町は、海の一部を埋め立てて作られた町なので、日本ではあるけれど孤立をしていた。また、「虹の橋」を渡らないと都内との通行ができなかった。橋のことをレインと呼ぶには深い意味はなかった。
ただ、レインボーだと「長い。」だの「かぶる!!」だの「橋、虹色じゃねぇ~し。」と、文句をいい、雨のような色ということでレインになったのだ。
また、孤立しているせいか、自給自足に近くといっても海外との貿易はするのだが、東京にあるような大会社が空色町に建ち、そこで商品を生産したりしていた。
そんな空色町だが、東京都の一部であることは、間違いなかった。いったいどう見たら、東京都の一部なのかがわからなかったりするのだが、国が決めてしまったことはしょうがないと納得してしまったのだ。だから『町』なのだ。新たにできた都道府県ではなくて・・。
空色町が、誇る一つの観光地にあの「駅」がある。
「駅」の名前は『ファーストドリーム』(First Dream)という。最初の夢・・・つまり、新たに住まう人々に「新しく夢を持ちましょう。」という意味ではないかと思われている。実際のところ、いったい誰が命名したのかがわからなかった。
つまり、橋と同様に駅も気づいたら名前がついていたといういい加減なところがこの町には、多々あった。
もちろん、『ファースト』もあるのだから『セカンド』・『サード』とあることは言うまでもないだろう。
そんな町の深夜をまわったところに、一人の少女が駅を徘徊していた。
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少女=櫻里 黎亜が今いるのは、駅である。
しかもだ。なんと深夜だったりするわけである。
別に今から、『肝試し』があるわけではない。また、思っているわけではない。
そもそも、春真っ只中でそんなことする一般人はほとんどいないだろう。
『肝試し』=『暑さをしのぐ』という、公式が人々の中に立てられているからだろう。
カラン・・・。
「うわ!!なんだぁ~缶かぁ~。ちゃんとゴミ箱に捨てなさいよね!!もうっ!」
黎亜は、足で蹴ってしまった缶に驚いた。そして缶を捨てた奴に対して文句を言った。といっても、缶を捨てた奴が誰なのか知らないのだが。
蹴られた缶は、カランカランと音を駅内に響かせて、転がっていった。
ザワリ_____
( ?)
缶が壁にあったって止まった後、妙な風が黎亜の顔をなでた。その風は、生暖かいような冷たいような風で、気持ち悪かった。
「は、早く、出口探そ~っと。」
黎亜は、『怖い』という気持ちを消すように、出口を再び探すことにした。
黎亜がついさっきまでいたのは、駅内のトイレの中だったりする。また、そのトイレは人があまり使わない地下鉄トイレの個室の中。もっと詳しく言えば、さらにそのトイレのには外側から、頑丈に鎖が鍵となってかけられていた。
といっても、トイレのドアの上のほうが開いているので、なんとかしたら出ることができるため黎亜はそこから外へと脱出したというわけだ。
ふっと、頭である人物の顔がチラついた。
(~~~~~!!そうよ!!何もかもコイツのせいだわ!!)
黎亜が、幼稚なイジメに遭った原因は、幼馴染のせいである。
幼馴染=久保 鈴音の名前を聞いただけでは、女としか思わないだろうが、違う。男である。しかも、イケメンかつ頭よろしいかつスポーツマン&さわやか王子=天才様なのだ。
(こんな幼馴染を持つとはなんて、幸運なのでしょう!!家が隣同士なのは運命。そして最後は二人してゴールイン!!)
「んなわけ、あるかぁーーー!!!!」
黎亜は、叫ぶ。誰もいないことをいいことに、ありったけの思いを発散するように叫んだ。
こんな幼馴染を持つとは黎亜自身思わなかった。ましてや、こんな奴が本当にいるとは、思いもしなかった。
初めて会ったのは、家が隣同士ということで赤ん坊のころかららしかったが、黎亜自身、鈴音のことを天才様なんたら~と思ったことがなかった。
しかし、小・中・高と学校は『聖・十字架学園』となんとも、変わった学園に通っているため、行き帰りが一緒だからこそ気づいた。
あ、こいつ頭がいいんだぁ~とか、みんな、こいつのことカッコイイって言っているなぁ~とか、そんな感じで思うもまちまちあった。
でも、普通の人とは全然違うとは思ったことがなかった。なんせ、鈴音以外の幼馴染がまた、変わっていたせいである。
そんな黎亜でも、気づくことはある。自分に自信があれば、別に問題はないということ。
そう、例え鈴音の彼女だと間違われても、そんなんじゃないと笑って言えること。
また、ファンクラブの奴らだって黎亜のことを悪くは言ったりしないだろう。それに、あんなことだってしないはずだ。
(つまり、私は優しく言えば、可愛くないってことなんだよね。だから、アイツ・・・鈴音だって。)
黎亜が、『可愛くない』せいなのか、鈴音は黎亜に黒縁の眼鏡を差し出した。
最初は、「はてな」と頭の中で疑問符を並べたが「掛けたほうがいいよ。」とのお言葉をもらいわかってしまった。
(鈴音も、わたしのこと可愛くないって思っているんだ!!)
自分の可愛いとも言えない顔を隠すためのものだっということを。はっきり言って屈辱だった。
むしろ余計なお世話だった。黎亜は思う。
(一緒にいて、恥かしいと思うのなら、なんで一緒にいようとするのよ!!哀れみ?なの!!あ~もぅ~ムカついた!!)
怒りで眼鏡を握りつぶしそうになったが、それでも受け取った。もし、いらないといって嫌われたらどうしようという弱い黎亜がいたからだ。
でも、今この眼鏡をもらえば・・・と黎亜は思う。
(今、もらえば、きっと叩き返していた。そう、私は昔のように弱くなんてない!!)
でも、受け取った時は「ありがとう」といってやった。
それが、小学校三年のときだったのだが、そのときからどうも、友達が黎亜に対する接し方も変わってきていた。
『普通な子』から『地味な子』へ、また、女の子たちからは『友達』から『王子の周りをうろちょろするうざい奴』へと昇格したのだ。
(嬉しくもない昇格。しかも、友達が減ったような気がする。・・・・気のせいだと思いたいなぁ~)
「雪菜ちゃ~ん!!惣介・・・。もうこのさい誰でもいいので助けてください。」
一人ほど寂しいものはないだろう。そう、黎亜は思う。
だから、雪菜と惣介という幼馴染に、助けを求めた。鈴音ではない、幼馴染に・・・。
(ふーんだ。鈴音には、助けは呼ばないもんね!こんなことになった原因は、鈴音のせいだもん。そいつに助けを呼んだら、逆にLvUpしちゃう!!でも、あの二人を呼んでもなぁ~同じことだけど・・・。)
雪菜と惣介も、鈴音ほどではないが、学校では有名はほうであった。
雪菜は、明るく誰に対しても優しい、文句のつけようがない美人さん。惣介は、背が低いほうだが、スポーツ大好きでムードメーカーだったりする。
そんな、二人の幼馴染で、友達だということは誇れること間違いなし。
(だいたい、二人は周りへの配慮というかなんというかそういうのがちゃんとできているから、私が彼女~とか思われたりしないって言うのに、鈴音はどうして気が効かないのかなぁ~)
「そもそも、雪菜や惣介は笑ったりしないで、聞いてくれるよね?私がここにいる理由を・・・」
そう、今この暗すぎて前が良く見えない黎亜がうろうろと駅を徘徊・・・出口を探しているのにはわけがある。
もちろん、閉じ込められていたせいでもあるのだが、その大部分はトイレの中で熟睡していたせいでもあった。
普段なら、警備員が見回りをしにくるのだが、今日はなぜか来なかったらしく起こされることもなかった。
見回りに来たくないほど汚れているのかっていうのは違う。断じて違う。駅はいつも清潔にしてあるため、もちろんトイレだってきれいだった。
(そもそも、汚いなかで寝るなんて、私はぜったいしないわ!!)
そう、追いこめられて、閉じ込められて、「開けて!開けてよ!!」となんとも、女の子のようにドアをドンドン叩いていたのだが、人の気配がなくなるとそれをするのもやめた。
ドアを叩いていた手が痛くなったのもあるのだが、人がいなくなったのに女の子ぶっていても意味がないからである。
(・・・・私は、いつからこんなにねじれてしまったのかしら。昔はもっと、もっと____なんだろう?)
「今出て行ったら、鉢合わせしそうだしなぁ~。少し時間が経ってから出よう!!」
なんてワザとらしく元気よく言い、一人頷いた。そして、トイレのふたをして、膝を抱え座るとそのまま・・・眠っていたのだ。
黎亜は、起きたときそれはもう、驚いた。まず、自分が寝ていたことに、次に駅が真っ暗になっていることに、最後に誰も気づかなかったのかということに。
(「さすが地味子!!」なんて言って、ファンの奴ら爆笑ものね。)
はぁ~とため息をしつつ、トイレを後にした。もちろん、トイレのドアの上を又ごして。
しかし、悲しいものだと黎亜は嘆く。出口が見つからないのだ。
いつもの出入り口は、夜中など人が出入りしないようにシャッターが閉められており、ケータイを開いて助けを呼ぼうにも『圏外』の文字が画面左斜め上に表示されていた。
「時刻は、午前一時でございます。・・・母よ、父よ気がつこうよ。にしても、ど~したものか。」
のんびりとした声を出したが、内心ビクついていた。
その恐怖を、振り切ろうと前に一歩踏み出したときに、缶を蹴ってしまったのだ。そして、今に至る。
ザワリ____
風が前方のほうから、吹いていた。
(っぞっとするよね。この風・・・。お、お化けとかいないよね??駅だもん!!いるわけが・・・ッヒ!!)
コト・・・コト・・・・コト・・・コト・・・。
風が吹いてきた方を凝視していると、右側から誰かの足音が聞こえてきた。
(お、おおおおおお化けには、足がないんだから違うもん!!___!!もしかして警備員の人!?)
コト・・・コト・・・コト・・・コト・・・・・。
きっと、警備員の人なんだ!と思った黎亜は、気がつかなかった。普通なら、明かりをつけずに警備をすることなどないということを。
そして、思うのだろう。
何故あのとき、気づかなかったのかっと_______*.:゜:.*.:゜:.*
更新が遅くなってしまい申し訳ありません;;
今後とも、暖かな目で見守っていただければと思っております。