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仕事中に一万円札を見つけた

作者: 完結保証

 「ん?」


 雑巾がけをしていたら、棚と壁の間に何かが挟まっているのを見つけた。指でちょいちょいっと手繰り寄せる。


 「これ……お札だ!」


 何でこんなところに。とりあえず責任者に報告しなければ、と立ち上がり、ハッとする。

 これ……私がもらってもバレないよね?


 ここはホテルの一室。監視カメラなんてもちろんないし、清掃作業は基本一人。

 これを落としたお客さんだって、間違いなくホテルの客室で落とした! とは断言できないし、そもそもたかが紙幣一枚財布から消えたところで、気づかないんじゃ……。


 大丈夫だ、と確信した私は、埃っぽいその一万円札を、制服のポケットに突っ込んだ。


 女は、ビジネスホテルで客室清掃のパートをしている主婦だった。


 仕事中に幸運に恵まれた彼女はその後一層、客室を隈なく点検するようになった。またお金が落ちていることを期待して。


 毎日毎日、どこかにお札が挟まっていないか、小銭がベッドの下に潜んでいないか、と目を光らせる彼女。時に清掃そっちのけで、お宝探しに夢中になるそのがめつさは、目に余った。


 ***


 そんなある日のこと。


 「ん?」

 シーツを広げた際、わずかにカサッという音が聞こえた気がして、女は眉を寄せた。そして次の瞬間、その顔が期待に綻ぶ。


 さっきのって、紙の音かな!?

 紙だったら——ひょっとしてお札かもしれない!


 彼女は、一万円だといいな、いや千円でもいいんだけど……とワクワクと妄想を膨らませて、床に頭を近づけてベッドの下を覗き込んだ。


 すると、女は声にならない叫び声を上げた。


 黒光りする昆虫が、カサカサとかすかな音を立てながら、彼女の顔面に突進してきたからである。

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