幸せな時間-3
「でも、『どちらかといえば好き』って相手にクリスマスプレゼント渡したりヤキモチ妬いたりするかな? それってもう、ただの『好き』ってことだよね?」
無くしてしまうことが怖くて着けていないバレッタは、家の引き出しにラッピングの袋に入れたまま仕舞っている。大切すぎて使えないなんて、初めてのことだ。
「藤野さんが私のこと好きかどうかなんて、分かんない。ただ、私が藤野さんのこと好きだからそれでいいの。付き合っても付き合ってなくても、いいの。隣にいる時間があれば、それだけでいいの」
半分本音で、半分は強がりだ。本当は、彼女になりたい。恋人として、彼の隣にいたい。だけど、それはきっと叶わない。それが分かっているから自分に言い聞かせるように「隣にいられればいい」と、心配してくれる友だちに向けて言った。
何か言おうとする二人から目を逸らし、私はバッグから携帯を取り出した。画面には、新着メールが一件来ていることを表示している。私は、すぐにそのメールを開いた。
「あ」
思わず、声が出た。
「どうした?」
話し込んでばかりいて、全く手を付けていなかったハンバーグを口に運んでいた有希が聞いてきた。
「藤野さんからメール来てた」
「噂をすれば、ってヤツだね」
「何て来てたの?」
「明日の夜、ご飯行かないかって……来てる」
有希は「お、デートの誘いじゃん」とニヤリと笑う。
私は、急いで返事を打った。彼からメールが来ていたのは一時間以上前で、私が授業を受けていたときだ。きっと急いでメールを返しても、彼は寝ている時間だろうけれど、早く返事をしたかった。
今日は、バイトの交代のときに会えるし、明日はもっと長い時間一緒にいられる。そう思うと自然と頬が緩む。