幸せな片想い?-1
翌日のお昼、大学のカフェテリアで有希と智美に、藤野さんとのやりとりを報告すると、二人とも私とは正反対の反応を示した。
「えー、それはちょっと……」
「ナシでしょ、それ」
「え、私は特に気にしてないんだけど……」
予想していなかった二人の反応に戸惑ってしまう。
「それって、キープじゃん? 都合のいい女ってことじゃん?」
「いや、そういうわけじゃないと思うけど……」
私は、大学に来る途中で昼食用に買ったサンドウィッチを口に入れる。二人はカフェテリアのメニューの中から日替わり定食を選んで食べている。今日は、サバの塩焼きらしい。
「付き合わないけど、これからも仲良くお出掛けしましょうって変じゃない? こっぴどく振られた方がすっきりして、次に行けるじゃん」
「まあ、確かにそうかもしれないけど……そうなったらバイト先で会うのも気まずくなるし、これからも今まで通りって言われた方が、私としては良かったと思う」
シフトの時間が被ることはほぼないにしても、交代時に顔を合わせることが多いのは事実だ。こっぴどく振られた相手と高頻度で顔を合わせるのは、お互いに気まずい。下手をしたら周囲に知られ、変な気を遣われてしまう。
「それに、気持ちは伝えたから開き直ってアプローチも堂々とできるわけだし!」
「ポジティブだね」
「アプローチしまくってたら、いつか好きになってくれるかもしれないし」
有希が、半ば呆れ気味に笑う。
「次の男探した方がいいんじゃないの?」
「なんで?」
「もうすぐクリスマスだし、振り向いてくれるか分からないフリーターの男に時間割くより、彼女とクリスマス過ごしたいと思ってる男子学生掴まえた方が早いじゃない」
有希は、周りを見ろと言わんばかりの目をする。確かにうちの大学は共学で、男子学生は多いし、話す機会も多くある。彼女がいないと嘆いている姿を目にすることだってある。
「私は、『彼氏』が欲しいんじゃなくて、藤野さんと付き合いたいの! 誰でもいいわけじゃないよ」
藤野さんとのいきさつを報告し終えたときに一言だけ発した後は、終始食べることに徹していた智美が、「なんかいいね」と呟いた。皿は、綺麗に空になっている。
「なにが?」
「由佳利ちゃんは、真っ直ぐ、本当に真剣にその人――藤野さんって人のことが好きなんだろうなって思って。フリーターだからとか年上だからとか、一度振られたとかそういうのは関係なく、ただ単純に好きなんだなって思って……少し羨ましいくらい」
智美の言葉に、有希は少し考える素振りを見せたあと、「確かにね」と頷いた。
「でも、本当に利用されたり都合のいい女扱いされたりしたら、ちゃんと言ってね! 殴り込みに行くから! バイト先分かってるし!」