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キミがいる未来を夢見ていたい  作者: 佐久良
2.加速する想い
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加速する想い-4

 一緒にホームへと降り、そのまま改札を出た。そして、バスやタクシー乗り場のあるロータリーへと続く階段を下りる。


「駅から十分くらいやったっけ?」


「だいたいそのくらいです」


「ほんなら、家着いたらメールして。心配やし」


 ――ああ、やっぱり好き。そう思った。この人の彼女になりたい。


「あの……」


 階段を降り、駅のロータリーで私が立ち止まると藤野さんも歩みを止めた。


 私は、藤野さんの目を見つめる。心臓が、どんどんと速くなる。恥ずかしさから目を逸らしたくなるが、一度逸らしてしまえば、想いを口にすることはできないだろうと思った。


「うん?」


「私、藤野さんが好きです」


 藤野さんが目を丸くし、驚いた表情を見せる。


「知り合って、まだそんなに時間も経ってないし、知らないことの方が多いけど、私は藤野さんが好きです。付き合ってほしいです」


「俺は――」


 藤野さんは俯き、言葉を区切る。困惑しているのか迷っているのか、その表情は冴えないもので、その続きはある程度だけど想像できた。


「ごめん、付き合われへん」


 絶対的な自信があるわけではなかった。でも、ほんの少し期待しても許してもらえるだろうくらいの自信はあった。


 それが自惚れであったかと思うと、途端に恥ずかしくなる。そんな私に藤野さんは言葉を続ける。


「好きか嫌いかで言われたら、そりゃ好きやで。今日一緒に出掛けるんも楽しかった。勝手かもしれんけど、小野さんが良ければまた出掛けたいと思うてる」


 それは、つまり「友だちでいましょう」ということなのか。元々の関係がアルバイト先の先輩と後輩なのだから、友だちという表現も合っているか分からない。ただ、「付き合えない」という答えなのだから、このままの関係を続けるしかない。


 ただ、藤野さんはなぜか、フラれた私よりも泣きそうな顔をしていた。迷いながら、何かを必死に我慢しているような……見ている私まで泣き出したくなるような表情だった。


「また、出掛けてくれますか……?」


 私は「また出掛けたい」と言ってくれた彼に恐る恐る尋ねた。


「うん、むしろ俺からお願いしたいくらい」


 それを続けていたら、いつか私と同じ気持ちになってくれる可能性もあるのだろうか。そんな疑問を彼にぶつけることはできなかった。ずうずうしい希望だと思ったし、今の関係性が後退してしまわなければ、それで充分だと自分に言い聞かせた。


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