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キミがいる未来を夢見ていたい  作者: 佐久良
プロローグ
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プロローグ-1

 現実は厳しい。大学生になって親元を離れて一人暮らしをすれば、自由があると信じていた。門限を気にする必要もなく、好きなものを好きな時間に好きなだけ食べてもいいし、夜更かしだっていくらでもできる。


 だけど、自由にはお金が必要なのだ。大学に入って半年近く経てば、ある程度の家事とお金のやりくりはできるようになった。学費と最低限の生活費は仕送りから賄うことができ、少しだけ余ったお金は娯楽に回すこともできる。だけど、それだけでは自分の求める自由な暮らしはできない。洋服や化粧品を買ってオシャレもしたいし、遊びにだって行きたい。


「バイトでもするかな」


 自分しかいないワンルームの部屋に声が消えていく。一人暮らしは、その声を拾ってくれる相手すらいない。実家にいる頃は何とも思わなかったが、話し相手がいるというのはそれだけでありがたい。この部屋の中で自分以外の声が聞こえることがあるとするなら、テレビを点けているときと壁が薄いために隣の部屋の住人の声が聞こえてくるくらいだ。


 大学に行けば友だちと会話する時間もあるが、それが終われば一人で自分の部屋にこもりきりになっている。大学と家との往復だけの生活は、少しだけ虚しい。いや、かなり虚しい。特に、一人暮らしの部屋で過ごす時間はとてつもなく寂しい。


 大学の友だちを呼んで、たこ焼きパーティをして朝まで恋バナをするなんて夢も見ていたが、隣の部屋のテレビの音さえかすかに聞こえてしまうくらい壁の薄い部屋で、夜中まで騒いでしまえば、すぐにクレームがくるに決まっている。学生や単身世帯向きで、家賃の安さに惹かれて入居を決めたが、安さにはそれなりの理由があるのだと知った。


 とにかく私は、時間の有効活用と自由に必要なお金を稼ぐために、大学の帰りにフリーペーパーの求人誌を手に取り、アルバイト探しを始めた。


 アルバイトを決意すると、それはすぐに決まった。最寄りの駅から二駅ほど離れた駅前のコンビニエンスストアだ。時給の高い居酒屋のアルバイトやパチンコ店でのアルバイトも考えたが、酔っている人やタバコの匂いが苦手なことを考えると、その仕事に向いているとは思えなかった。アルバイトは、当たり前だが学業優先のため、面接の段階で基本的には夕方の勤務を希望した。店長は納得し、私は主に夕方勤務のシフトに入ることになった。夕勤は私と同じように学生のアルバイトばかりで、すぐに仲良くなった。


 二十二時になると深夜帯勤務のアルバイトスタッフと交代になる。駅前で居酒屋が立ち並んでいることもあって酔っ払いも多く、店員に絡んでくることも頻繁にあるらしく、店長の方針で深夜帯勤務は原則男性のみで必ず二人体制にしているという。なかでも藤野明樹ふじのともきさんという男性は週五日、深夜帯勤務に入っていた。そのため、夕勤に入ると毎回のように藤野さんと顔を合わせることになった。

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