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スイカを手に入れろ!

「「あづい……」」


 七月一四日に梅雨が明け、七月一六日現在。銀鉢幼稚園は気温三四度という猛暑に襲われていた。


 猛暑のなか、幼稚園に来る途中。朝俊と花憐は母親の日傘の影に守られながらも足もとをフラつかせ、銀鉢幼稚園の玄関に辿り着いた。


 母親二人は朝俊と花憐を幼稚園の残し帰宅。

 花憐は黄色帽を脱いで溜息を吐いた。


「うぅ、あづいよぉ」

「本当だね……」


 花憐に賛同しながら、朝俊は花憐と並んで廊下を歩く。目指すは二人が、いや、雛実たちも含めて六人が所属するペンギン組の教室だ。


 その途中、とある女性と顔を合わせる。


 彼女を前にして、まず最初に目につくのは、顔の向こう傷だ。額の右側から左頬に走る向こう傷は、ヒグマとの死闘でついたとも、ヤクザとの抗争でついたとも言われている。


 燃え盛るように赤いウエーブヘアーをポニーテールで縛り上げ、一国の首相も黙らせられそうな眼光を光らせ、要塞のような爆乳を真っ赤なスーツの中に押し込めた目立つ容姿。


 その女性が鋭い犬歯を剥き出しにして、快活に笑った。


「おやガキ共、今日も仲良く二人で登園かい? 花憐、朝俊の手綱はしっかり握っとくんだよ。でないと男はすぐなまけるからねぇ」


 彼女こそは銀鉢幼稚園園長、鬼瓦磐華(おにかわらばんか)だ。


 ヤクザ、マフィア、果ては黒馬に乗った覇王に至るまで、幼稚園の地上げを行おうとした存在は、全て次の日には謎の壊滅をしていると噂のこの銀鉢幼稚園。


 その最高責任者である彼女の左手からは、丸くて大きなビニール袋が下げられている。


 鬼瓦磐華は右手で朝俊と花憐の頭をポンポンと叩くと、職員室へと向かった。


 ――あの袋は……


 朝俊が、ビニール袋のなかに思い当たる節を感じると、花憐に手を引かれる。


「ほら、早く行こうよ朝俊」

「う、うん」


 こうして、二人は今日も仲良く一緒に教室へと入るのだった。

   

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