第五話
何メートル程落ちたのだろうか、上を見るとマックが呼んでいた。
「おーい、大丈夫か?」
「なんとかー。」
そういってデモは下を向く。捕まえた奴を馬乗りで押さえていた。
「離せ!!降りろ!!」
「やなこった!!離さないもんね!!」
顔を近づける。あいての顔が見えた。
「あれ?・・・女の子?」
そのとき初めて、デモは相手の胸を掴んでいるのに気がついた。
「あ!!ごめ・・」
「いつまで触ってんの!!この変態!!」
変態と言われたデモは、謝る気をなくし、腹を立てた。
「なんだと!!謝ろうとしたのに。このやろ!!」
デモは両手で胸を掴んだ。
「あ、柔らかい。」
思わずデモが呟いた。瞬間、デモの目の前に拳が飛んできた。
3メートルほど後ろに吹っ飛ばされたデモは、鼻血を流しながら言った。
「いってぇな!!なにすんだ!!」
「こっちのセリフよ!!鼻血出しながらあたしの胸揉んだくせに!!」
「お前が殴ったから鼻血がでたんだろ!!」
二人は言い争いをしていた。マックは坂の上からその光景を見ていた。
「なにやってんだお前ら。」
マックが口を開き、二人の言い争いは一旦止まった。
「マック!!こいつなんとかしてくれ!!」
「あんた!!こいつの知り合いなら、この変態連れてどっかいってよ!!」
「変態って言うな!!」
再び言い争いが始まる。
手に負えないなという顔をしたマックは、カバンを置いてきたところに戻っていった。
「あ、おいマック!!待てよ。」
デモがマックのあとを追おうとした。
「ちょっと待ちなさいよ。まだ謝ってないわよ。」
「謝る?俺が?なんで?」
「あたしの胸揉んだじゃない!!」
「俺の顔殴っただろ!!」
「胸揉んだほうが重罪よ!!」
「どう考えても暴力の方が罪重いだろ!!」
そういうとデモは駆け出した。
「あ!!待ちなさい!!」
女もデモの後追おう。
三人はさっきいた場所に戻ってきた。
女は自分のことを「アンリ」と言った。青い髪が腰まで伸びている。ふっくらとした頬はかすかに赤みを帯びていて、見る限りでは可愛らしい女の子だった。
しかし、性格は悪い。
「アンリ?まったく似合ってないな。『ババァ』のほうはぴったりだぜ。」
「こいつ!!」
アンリがデモの背中を蹴飛ばす。それでもデモはげらげらと笑っていた。
「ちょっとマック!!このバカデモなんとかして!!」
アンリは初めてあったにもかかわらず、二人のことを名前で呼んだ。
「そいつはほっておけ。それより、聞きたいことがある。」
マックはカバンの上に座りながら、話を切り出した。
「お前はここでなにしていたんだ?」
「見てわからないの?虫から隠れているのよ。」
「見てわからないかって、制服じゃないか。それに林で?危険だろ。」
「あたしはこの辺に住んでいたの。この林だって、あたしの庭みたいなものよ。」
アンリが自慢げに言うと、デモが口出ししてきた。
「違う違う。虫がこいつを食いたくないだけだ。虫だって死にたくないもんな。」
「どういう意味よ!!」
アンリは再び背中を蹴った。それでもデモは転がりながら笑っている。
怒ったアンリはデモの頭を殴った。地面に突っ伏しながら、デモは動かなくなった。その上にアンリが座る。
「じゃ、次の質問だ。」
待ちかねたようにマックが質問を再開した。
「なんで俺らのこと見ていたんだ?」
アンリはデモの髪の毛をいじりながら言った。
「あんな爆発音聞いたら、誰でも気になるでしょ?それにあのコンビニは私の食料庫みたいなものよ。」
そういうと一発、デモの頭を叩いた。
「そもそもあんたたちはなんなの?なんでここに来たわけ?」
「俺たちは食い物探しにきたんだ。その過程であのコンビニに寄ったわけだ。」
「あの爆発は?」
「虫に襲われていたんだ。楽勝だったけどな。」
「なんで林の中に来たの?」
「こいつが人を見たっていったから。」
「ふーん。」
くるくるとデモの髪の毛を巻きながら、アンリは聞いていた。
「ところで、あのコンビニの中に人間の腕があることは知っているか?」
「ああ、あれでしょ?こいつがびびってたやつでしょ?」
「そう、そのあれだ。」
ふたりはデモを見る。デモはまだ動かなかった。
「誰のかはわからないけど、あれは虫が食べたのじゃないわ。殺されたのよ、人に。」
「俺ら以外にここにきた奴がいたのか?」
「1週間ぐらい前かしら。不良の集まりみたいな連中が、コンビニの中に隠れていた奴らと喧嘩してたのよ。」
「コンビニの中?虫に荒らされていたのにか?」
「事務所は無事だったわ。倉庫には商品があるし。それを狙って、不良どもがきたのよ。手に刀を持って。」
「刀?何でそんなものもってんだよ。」
「みんなが持っていたわけじゃないわ。リーダー格のような奴が持っていたの。」
「それで、殺して奪ったって訳か。」
「殺した人を外に投げ出していたわ。虫が食べれるように。」
「ひどいな。」
マックが話をきった。しばらく沈黙が続く。
「そいつら、どこいったんだ?」
急にデモがしゃべり始めた。ずいぶん前から気がついたらしい。
「起きてたの?まあいいわ。この坂を下りたところに、小学校があるの。そこはあまり崩れていないから、そこにいるんじゃないかしら?」
「小学校か。てかお前重い。何食ってんだ?」
「な!?失礼ね!!あたしのどこが重いっていうのよ!!」
「座られる身になればわかる。お前はデブだ。」
もちろん、アンリは太っていなかった。むしろ痩せているように見える。
「このバカデモ!!」
デモは頭を殴られた。デモの笑い声が林に響く。
「うるさいぞデモ。」
マックがデモを叱った。
「俺に怒る前に、こいつどかしてくれよ。背骨が折れそうだ。」
デモが笑いながら言った。
「ほんとにこいつは!!」
アンリがデモのほっぺをつねる。
「いひゃい。」
デモが涙目になりながらいった。
会話ばっかやん・・・