第二十一話
「なぁ・・・」
デモはため息をつきながら言った。不機嫌な顔をしながら振り向いたアンリが言う。
「・・・なによ。」
「俺たち、どこ行こうとしてるんだっけ?」
「街を抜けたところでしょ。それがなにか?」
「たしかにここは街はずれだけど・・・。」
そういいながらデモが指をさした。指した方向には見慣れた公園がうっすらと見える。
「あそこの公園、見覚えあるだろ。」
「誰かさんがだらしない顔で寝ていた公園ね。」
アンリがニコッと笑いながらそういうと、デモも笑顔で答えた。
「そう。どこぞの怪力女にひどいことされた公園だ。」
アンリの平手がデモの頭をひっぱたいた。いてて・・・と頭をなでながら、デモが文句を言う。
「最初の場所にきてどうすんだ。いくら方向音痴の俺でもこんな間違いはしないぞ・・・。」
「あら、ならあんたが案内しなさいよ。」
アンリは腕組みをしながらデモを睨みつける。
「よかろう。拙者についてくるでござるよ!!」
「バカなこといってないでさっさと行け!!」
デモの背中に軽く蹴りを入れながら、2人は再び路地に入っていった。
「あれからもう40分は経っているはずなんだが・・・。」
マックとエーデルは廃墟となった駅の入り口にいた。ここがこの街の最先端のようだ。
「すごいですわこの街。線路の向こう側には田んぼが広がってますわ。」
駅に到着してから30分ほど経過していたが、若干疲れ気味のマックとは違い、エーデルはずっと田んぼの景色を見ていた。
「・・・飽きないのか?」
目を輝かせながら見入っているエーデルに、マックが声をかけた。振り向いたエーデルは顔に笑みを浮かべならが振り向いた。
「全然飽きませんわ。ただ、ところどころめちゃくちゃになっていますけど・・・。」
そう言いながら再び視線を戻すと、あれは何かしら・・・とぶつぶつと言い始めた。マックは呆れて横になり、デモたちが来るであろう方向を眺めていた。
「あんたさっきなんて言った?」
アンリは前方に見える公園を見ながら、横に突っ立ってるデモに向かって言った。デモは首を傾げながらつぶやく。
「おかしいな・・・。なんで戻ったんだ・・・。」
「おかしいのはあんたの頭のほうだ。」
「あそこで右に行くべきだったのかな・・・。それともあそこで近道とか言わずに真っ直ぐ進めばよかったのか・・・。」
ぶつぶつと言ってるデモに、アンリはポンっと手を叩きながらいった。
「もうわかったわ。あんたに道は任せれない。センスないもの。」
「それを言ったらおまえもセンスないだろ!!」
「うっさいわね。もう結構時間経ってるのよ?早く行かないとあの2人待たせちゃうわ。」
「もう遅いと思うけどな・・・。」
と言いながら、ふと右を見たデモは全速力で来た道をダッシュした。
「あ!!何よ!!」
「お前も早く来い!!」
右見ろと指で合図を送りながらデモは走っている。遅れて右を見たアンリが全速力で走ってきた。
「あんたね!!逃げる前に言いなさいよ!!」
「反射だ、許せ!!」
「か弱い乙女を置いて先に逃げるなんてサイテーよ!!このバカ!!クズ!!」
「お前どんどん口悪くなってるぞ!!」
「誰のせいよ!!」
先に走っていたはずのデモの肩にパンチを入れると、そのまま前を走っていった。
「ちょっ!!おまえどんだけ速いんだよ!!」
「こう見えても県で一番速かったんだからね!!」
そう言いながらどんどんデモとの差を広げていく。
「くそ!!負けるかああ!!」
街の中には、全速力で駆け抜ける2人と、その後ろを追ってくる軍隊のようなゴキブリ達の姿があった。