第十九話
太陽が昇り始めたころ4人の少年少女達が起きだした。一番初めに起きたのはマックだった。
マックは明るくなってきているほうを見て、大きく伸びをした。足元にはデモが丸まって寝ていた。
歩き出してから3日目、ずっと東に向かって歩いていた一行はビルが立ち並ぶ町の中心部に着ていた。4人が寝ていたところは、ビル街から少し離れた公園だった。
「二人ともおきてます?」
エーデルがマックのもとに姿を見せた。エーデルは既に起きているマックを見て微笑むと、マックの足元に転がって寝ているデモを見た。
「やっぱりまだ寝ているのね。」
エーデルがそう言うと、マックが呆れたように手を広げる。エーデルがデモのところに着てデモの体を揺らした。
「ほら、さっさとおきなさい。」
それでもデモは起きなかった。マックは近くの水道で顔を洗っている。
何度も体を揺らしていると、アンリが目を擦りながらやってきた。
「またこいつが最後?」
エーデルがアンリのほうに振り向き、うなずいた。アンリはため息をつきながらデモのほうに歩いていった。
「体を揺らすだけじゃだめだってば。手加減する必要はないのよ。」
そういうとエーデルをどけて、デモの頭の横に座った。耳を掴み、思いっきり引っ張りながら耳元で叫ぶ。
「起きろ!!」
顔を洗っていたマックも振り向くほどの声量だった。デモは頭を抱えてうずくまる。
「・・・もっとやさしく起こせないのかよ。」
「あら?さっきまでやさしく体を揺すって起こそうとしていたのよ?」
体を揺らしていたのはエーデルだったが、まるで自分がしていたようにアンリが言うと、デモが訝しげな目でアンリを見た。
「うそつくなよ・・・。お前のその腕で優しく体を揺らすことができるとは思えないね。」
アンリがデモの足を蹴った。
「いいから起きな。」
そういうとデモが枕代わりに使っていたクッションを取り上げる。デモはだるそうな顔をして、伸びをした。
「今度からデモを起こすのはアンリに任せるか。」
マックが感心しながらそういうと、デモが機嫌が悪そうに言った。
「冗談じゃない。そのうち体が壊れちまうよ。」
「壊れたら虫の餌にするからいいわよ。」
アンリが済ました顔で言った。
「ちぇ・・・。」
デモは舌打ちしながら起き上がり、水道で顔を洗った。デモが戻ってくると、マックは3人にカロリーメートを渡し、歩き出した。
カロリーメートを食べながら4人はしゃべりながら歩いていた。
「毎朝カロリーメートじゃ飽きるぜ。」
「食べれるだけありがたく思いなさい。」
「まだ3日目だろ。あと10日はこれが朝食だぞ。」
「うげ・・・。」
「あら、デモいらないの?ならあたしがもらおうか?」
「お前はそれ以上食ったら太るだろ。」
アンリがデモを殴る。この3日間、毎朝このような光景を見ているマックとエーデルは慣れてしまい、しまいにはエーデルもデモを蹴飛ばすようになった。
こんな感じにビル街を歩いていた。虫が出てくる気配もなく、順調に進んでいた。
「楽しそうに歩いているな。」
ビルの屋上から4人を見下ろしている男がいた。男はしばらく4人のことを見ていたが、やがて飽きたように寝転がった。そして後ろを見る。後ろには男が連れてきた虫がいた。男は立ち上がり、虫の頭に手を置くと言った。
「すこし邪魔をしてやろう。」
男が手を離すと虫は羽を広げ、4人がいる方向へ飛んでいった。男は虫を少し見送ってから、虫が飛んでいった方向とは反対の方を向いた。
「さて、私は帰るとするか。」
男の背中から羽が出てくる。着ていた服を突き破り、羽を広げた。その羽を動かして、ゆっくりとその場を飛び去っていった。