第十八話
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4人の少年少女達は町の外側にある家の中にいた。窓ガラスが床に散らばっていて、二人の男がそれを掃いていた。
「なんでこんな目に・・・。」
「お前が考えなく割るからだろ。」
「あの時はテンションが高かったんだ。ドアも開いてなかったし。」
「中が荒らされてない家なんて中々見つからないんだぞ。もう少し考えてから行動しろ。」
二人が掃除していた場所は居間だった。床には唐草模様の絨毯が敷かれてあり、絨毯の外側に沿ってソファーが置かれてあった。ソファーの近くにはテーブルが置いてある。
「あーあ、きれいな絨毯がこんなことに。」
ガラスの破片が散らばった絨毯の端を持ちながら、デモが言った。マックがもう片方の端を持ってため息をついた。
「いったい誰のせいだと思ってんだよ。」
絨毯をたたみ、部屋の隅に置いた。床に散らばっている残りのガラスの破片を掃いていると、2階に上がる階段から、下に下りてくる二人の足音が聞こえた。
「あったわ。」
エーデルが手に本を持って降りてきた。続いてきたアンリも、手に本を持っている。
「あったって、何が?」
デモが不思議そうな顔をして本を見る。分厚い本の表紙には細かい線が何本も描かれていた。
「地図帳よ。」
エーデルがそういうとソファーに座りながら地図帳を開いた。ほかの3人がそれを取り囲むように見る。
「私たちが今いる町はここ。」
エーデルが指指した場所は町の名前の文字の真ん中だった。
「おいおい。ここってそんな真ん中じゃないだろ?」
「この町にいるってことよ。場所まではわからないわ。でもたしかにこの町よ。ここに武道館があるから。」
エーデルが指したところを見てデモは納得した。エーデルがマックの方を向いて聞いた。
「お父様が働いているところってどこ?」
エーデルが地図帳をマックに渡すと、マックは少しページをめくり、何かを探しているように指で本をなぞり、指を指したまま本をテーブルに置いた。
「ここだ。」
マックが指差した場所は港から少し離れた海の上だった。アンリがそれを見て言った。
「海の上にあるの?どうやっていくのよ。」
「安心しろ、船なんか使わない。海中トンネルってのがあって、それでいけるんだ。」
マックがアンリに説明をしている間、デモは全く別のところを見ていた。港から少し北に離れた場所に、○の中に文が書いてある記号があった。高等学校のマークだ。
「マック、ここって。」
「そう。俺らの通ってた学校だ。」
アンリが学校の名前を読んだ。
「港北高等学校?そのまんまね。しょせんデモが通える高校ね。」
「あー、港北を馬鹿にするなよな。」
「あたしは港北を馬鹿にしてないわ。デモを馬鹿にしているの。」
「なんで俺なんだ・・・。」
デモとアンリが言い争っているのを尻目にマックがつぶやいた。
「俺もそこに通っていたんだが・・・。」
エーデルがマックの傍により、マックを励ました。
「マック様はデモとは違います。」
満面の笑顔でそういうと、エーデルがデモにいった。
「なんであなたがマック様と同じ高校に通っているのか不思議だわ。」
「お前ら俺を馬鹿にしすぎだろ・・・。こう見えて成績上位者だったんだぜ。」
デモが二人に向かって自慢げに言った。すかさずマックがため息混じりに言う。
「俺のカンニングしていたからな。」
予想していた答えに二人は肩をすくめた。デモがマックを睨んだ。マックは本のほうに目を向けると、話を続けた。
「とりあえず俺らの学校に行こう。そのあとのことは学校に着いてから決めよう。」
「それで、ここからどのくらいで着くんだ?」
「車でだいたい1日ぐらいだから、歩きで行ったらどうなるのかしら。」
「その前に道はわかるのか?」
「ずっと東にいけばどこかしらに着くんじゃない?。」
「どうやっていく?」
マックの質問に、3人は黙りこくる。少ししてからデモが口を開いた。
「高速ずっと歩くか?」
「嫌よそんなの。」
デモの提案を真っ先にアンリは否定した。デモはアンリの方を見て、聞き返した。
「じゃあどうやっていくか決めているのか?」
アンリは指を立てて、まわしながら言った。
「そうね、さっきみたいに私たちをおんぶして歩いてくれるのが一番いいわ。」
デモが驚きながら答える。
「馬鹿いうな。坂とか大変なんだからな。」
「泣き言?男の子のくせに・・・。」
「おぶってほしいならそれなりに体重を減らしてから言うんだな。」
デモがそう言うと、アンリはデモを睨みながら言った。
「あたしが太っているって意味?」
「さて、なんのことやら。」
そそくさとアンリの拳から逃れようとデモが立ち上がる。それを防ぐように、アンリがデモの足をつかんだ。
「どこいくの?」
顔は笑っているが声が笑っていないアンリを見たデモは、とっさに言い訳を考えた。
「ちょっとトイレに行こうと・・・。」
「あと1時間ぐらい行かなくても大丈夫よ。」
そういうとデモを引き寄せ、座るように合図をした。デモは渋々そのとおりに座り、頭を殴られた。マックとエーデルはあきれ果てており、二人でどんどん話を進めていた。
「終わったか?」
デモが殴られるのを見てから、マックが二人に声をかけた。デモが頭を抑えながら答える。
「・・・いちおうな。」
「それじゃあ、決まったことを言うか。」
マックは3人を一通り見渡すと、本を指差して言った。
「目標は港北高校。ここから歩いて行くとして、2週間以内には着きたいと思う。外はもう暗いから、出発は明日にして、今日はここで寝よう。」
その言葉を聞くと、デモがソファーの上にごろりと寝転がった。ほかの3人もデモと同じように、空いているソファーの上に横になった。
家の中にはしばらく雑談をする声が響いたが、やがて聞こえなくなり、静かになった。