第十五話
マックは振り下ろされないように、背中にしがみついてる。カマキリが床に着地した。マックは立ち上がり、再び頭のほうに駆け出した。
デモは倉庫から出ると、着地したカマキリのもとに駆け出した。カマキリがデモに鎌を振り下ろす。デモは竿の端を持ち、鎌を避けながら竿の中心を鎌に当てた。竿が2つに割れる。
「よし。」
割れた竿を片手ずつ持ち、デモは一旦引いた。カマキリを見上げる。頭の上にマックがいた。
マックは刀を突き刺そうとする。しかし、再び弾かれた。そのとき、窓から朝日が差し込んできた。カマキリの顔が映し出される。
「あれ?こいつ、あのカマキリじゃないのか?」
カマキリの目には穴が開いていた。その奥に、金属のようなものが見える。
マックもカマキリの目の中が見えたようだ。頭から引いたマックは背中まで戻ると、片方の羽の付け根に刀を突き刺した。そのまま地面に降りると、カマキリの後ろ側に回った。
「こいつ、ロボットなのか?」
「羽は切れた。そんなはずはない。」
「でもあの目、どうなってるんだ?あいつ見えてるのか?」
「見えてなかったらどうやって俺らに攻撃するんだ?」
カマキリがデモに鎌を振り下ろす。鎌を左に避けると、デモは鎌に飛び乗った。
「無茶するな!!」
マックが叫ぶ。カマキリはデモを振り払うように、鎌を振り回した。
「こいつ。少し落ち着けっての!!」
鎌の付け根に割れた竿の片方を突き刺した。うまい具合に割れたので、先っぽが尖っていたのだ。
鎌がだらりと首を下げる。デモは鎌から飛び降りた。
「よし。ひとつつぶした。」
デモがマックの方に親指をあげた手を突き出す。マックがあきれた顔をしてデモを見ると、刀を持ち直してカマキリの足元に駆け出した。
足の付け根を切る。思ったよりいい刀なので、簡単に切れた。
体勢を崩したカマキリが倒れそうになる。デモも足元に行こうとした時、横から鎌が迫ってきた。反応が遅れたデモは竿を構えて防ごうとした。
「やべ、竿割れてるんだ。」
鎌がデモを襲おうとしたとき、鎌の付け根に矢が刺さった。鎌の動きが鈍る。デモは鎌を避け、倉庫を見た。倉庫の入り口ではアンリが次の矢を構えている。
「さっすが。助かったぜ。」
「ぼさっとしてないでさっさとやっつけてちょうだい。」
アンリが矢を放つ。カマキリの目に当たったが、矢は刺さらず、地面に落ちた。
「あら?刺さらないわね。」
アンリが次の矢を構え、放った。
カマキリは足を切られ、横に倒れて起き上がることができないでいた。マックはカマキリの背中側に回り、手の付け根を刺す。
しばらくカマキリの手は動いていたが、やがてとまった。カマキリ自体も動かなくなっていた。
「ふぅ。終わったな。」
デモは大きく深呼吸をしてその場に座った。倉庫からアンリとエーデルが出てくる。エーデルはマックの後ろに来ると、マックの背中にしがみついた。アンリとデモがあきれたよう顔をして見る。
「死んでるの?」
エーデルが聞いた。マックは首を振り、しがみついているエーデルをひきはがした。
「いや、まだだ。」
そういうとマックはカマキリに近寄り、刀で腹を裂いた。液体が流れる。カマキリは何も言わず、そのまま力尽きた。
「することがある。」
そういうとマックはカマキリの頭の方へ行き、その首を切った。切られた場所からも液体が流れる。辺りに嫌な臭いが漂う。
「何するつもりだ?」
鼻を袖で押さえながらデモが聞いた。エーデルとアンリはいつのまにか倉庫のほうにいた。
「ちょっとたしかめることがあってな。その竿貸してくれ。」
デモはマックに竿を手渡すと、倉庫の方に歩いていった。二人の近くまで来たデモは、マックのほうに振り返り、言った。
「何するつもりだ?」
「そこで見ていろ。」
マックはカマキリの首を下に置くと、首の中に竿を突き刺した。頭を固定し、刀で頭を裂いた。液体と一緒に、拳2個ほどの大きさの機械が出てきた。
「なんだそれ?」
デモが聞く。マックは機械を踏み潰しながら言った。
「アンテナみたいなやつじゃないか?こいつでカマキリを操っていたはず。だから正確に俺たちに攻撃してきたんだ。」
機械を潰し終え、マックが扉の方へ歩いていった。
「長居は無用だ。さっさとほかの場所に行くぞ。」
エーデルが真っ先にマックのもとに駆け出した。アンリとデモは二人と少し距離を置いて、ついていった。
誰もいなくなった武道館。しばらくして男が一人やってきた。死んでいるカマキリのもとに近寄る。
「ち。役立たずが。」
そういうとポケットからライターと液体を取り出す。液体をカマキリにかけ、火をつけた。
カマキリが燃える。男はしばらくその光景を見た後、携帯を取り出し、電話をかけた。
「申し訳ありません。失敗してしまいました。・・・はい。それが、1人だけじゃありません。ほかに3人いました。・・・いえ、初めから武道館にいたやつらは一人を除いてみんな片づけました。・・・・・・・・・はい、わかりました。また連絡いたします。それでは。」
電話を切った男の口元には笑みが浮かんでいた。
「目標以外は問答無用で殺せ・・・か。もとより、そのつもりですけどね・・・。ははは。」
武道館に男の笑い声が響き渡る。カマキリは燃え尽き、煙が立ち昇っていた。
外はすでに太陽が昇り、武道館の中を明るく照らしはじめた。しかし誰も起きださない。太陽が真上に昇っても、武道館は静かだった。