第十四話
更新が遅れ気味だー・・・
跳び箱に寄りかかりながら寝ていたマックは目を覚ました。辺りはまだ暗い。隣にはデモが眠っていた。
まだ目が闇に慣れていない。ほとんど何も見えない中、マックは目を開けて、窓の外を見ていた。
「ふぅ・・・」
ひとつため息をつくと、隣で寝ているデモを起こした。デモが不機嫌な声で言う。
「・・・なんだよ。」
「なんだよじゃねぇよ。さっさと起きろ。」
首を上げて周りを見たデモは、首を下ろして言った。
「まだ暗いじゃないか。出発は夜明けだろ?」
「行動するなら迅速かつスムーズに。が、俺のモットーだ。」
そういいながらデモを無理やり起こす。
「あぁ、なんも見えねぇ・・・。」
目を擦りながらデモが言った。
「そのうち慣れる。」
そういいながらマックは立ち上がると、大きく伸びをした。デモがあくびをしながら起き上がった。
「そういや、あいつらどうするんだ?」
「お前はアンリを連れて行きたいんだろ?」
「え?あ、うん・・・。」
「なら俺もエーデルを連れて行くよ。」
「昨日は置いていくって言ってなかったか?」
「考えは変わるものだ。もう少ししたら二人を起こしに行くぞ。」
「りょーかい・・・。」
デモはあくびをしながら、髪の毛をかき、そのまま伸びをした。マックは不良から奪った刀を腰に提げ、前髪をかき上げた。
「あ、そういや俺の槍どこ置いたんだっけ。」
「槍じゃなくて物干し竿だろ。」
「丈夫だぜ?」
「丈夫なやつじゃなかったら叩き割ってたところだ。」
「ちぇ・・・。お、あった。」
デモが跳び箱の間にある物干し竿を取ろうとした。
ドン
でかい音が武道館に響く。マックは扉の方を見た。デモは物干し竿を手に持ち、マックのそばに寄っていった。
「マック、今のなんの音だ?」
「正面の扉から聞こえたが・・・。」
「扉を叩く音にしちゃ、大きすぎないか?みんな起きちゃうぜ。」
「困ったものだな。これから出発って時に・・・。」
「この時間に訪ねてくるなんて、余程緊急らしいじゃないか。」
マックがデモの方を向く。
「緊急だったら助けるのか?」
デモがにやりと笑う。
「まさか。」
二人は駆け出した。二人がいたところに巨大な物体が降りてきた。
「ち。虫か。」
「暗くてみえないな・・・。」
二人は目を凝らして正体を見ようとした。そんな時間を与えないかのように物体が突っ込んできた。
二人は左右別々に避ける。物体が両方に手を振り下ろした。デモは手が下ろされる前に物体の方に突っ込んでいった。マックはぎりぎりまで手を見ている。マックに手が振り下ろされると、それを寸の差で避け、その手に触れた。
手に触れていた時間はほんの少しだった。手の横を思いっきり蹴ると、マックも物体に突っ込んでいった。
「デモ!!こいつカマキリだ!!」
そう言いながら、マックはカマキリの背に飛び乗った。
物体の正体がカマキリだとわかったデモは、カマキリに下にもぐりこむと、持っていた物干し竿を思いっきり振り上げた。カマキリの柔らかいお腹に直撃した。
カマキリが上に飛ぶ。背中にいたマックは落ちないように、カマキリの頭の方に駆け出した。
「マック!!気をつけろ!!」
デモが上を見上げながら言った。マックは腰の刀を抜き、目があるところに突き刺した。
ガキィン
刀がはじかれる音が響く。驚いたマックは一旦顔から離れた。
「どうしたんだ?」
デモが叫ぶ。マックが刀を見ながら言った。
「刺さらない。」
「は?この前は木刀でも刺さっただろ?」
「こいつ、なんか変だぞ。」
マックがそう言ったとたん、カマキリは降下し、鎌を横に振った。
「やべ!!」
少し遅れたデモの横に鎌が迫ってくる。デモは物干し竿をうまく刃がないところにあてて防いだ。しかし、そのままデモは倉庫の方に飛ばされていった。
ドンという音を聞いたアンリは目を覚ました。窓の外が暗い。武道館の中からマックとデモの話し声が聞こえてきた。
また冗談でも言い合っているのだろうと思いながら、アンリは手で髪をとかしはじめた。
近くで何かが落ちてくる音がした。その音を聞いて、今度はエーデルが起き上がった。
「うーーん。何の音?」
「わからないわ。」
目を擦りながらエーデルが起き上がる。アンリはずっと髪をとかしていた。
「くし、貸しましょうか?」
「お願い。」
エーデルからくしを受け取ると、アンリはまた髪をとかしはじめた。
エーデルが伸びをする。そのとき、マックの声が聞こえてきた。
「デモ!!こいつカマキリだ!!」
その声を聞き、アンリとエーデルは顔を見合わせた。
「ちょ・・・ちょっと。カマキリがいるの?」
エーデルは動揺を隠せないまま、アンリに聞いた。アンリはのんびりと髪をとかしている。
「そうみたいね。」
「あ・・・あなた、ずいぶん落ち着いているのね。」
「そうね。カマキリとは一度戦ったから、あの二人なら勝てると思うわ。はいこれ、ありがとね。」
アンリはくしをエーデルに渡し、伸びをした。ポケットからピンを取り出して、前髪を止める。
「・・・ねぇ、あ・・・。」
エーデルがしゃべろうとしたとき、倉庫の扉を倒しながらデモが転がり込んできた。頭を手で押さえている。
「いてて・・・。」
デモは起き上がろうとした時、マットの上に座っているアンリと目が合った。その後に隅っこで震えているエーデルを見る。
「あら、お二人さん。お目覚めのようですね。」
デモが苦笑いをする。アンリがデモをにらみながらいった。
「ええ、おかげさまで。それよりあんたなにしてんのよ。」
「みりゃわかるだろ・・・。飛ばされてきたんだ。」
「カマキリなんですってね?」
「そうなんだ。でもあいつ、目潰しが効かないんだ。」
「効かないって?」
「みりゃわかるって。」
そういいながらデモは外に出ていった。ため息をつきながらアンリは置いてあった自分の弓を持った。
「あなたなにするの?」
エーデルが怯えながら言った。アンリはエーデルのほうを向くと、めんどくさいような顔をして言った。
「決まってるでしょ?あの二人の手伝いをしなきゃ。」
「マック様は強いわ。」
「だけどデモは危なっかしいんだから。あたしがいないと駄目なのよ。」
そういうとアンリも外に出て行った。
「なんだ、やっぱり気になってるじゃない。」
エーデルは呟きながら倉庫の扉からそっと外の様子を覗いた。