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貧しい少女の小さな夢

作者: さこと

ルゥは物心ついたときにはスラム街にいた。家族はいない。一人だった。名前さえなかった。

ルゥは名前というものも知らなかったけれど、他の人が呼び合うのを聞いて、自分で付けた。けれど呼んでくれる人は一人もいない。ルゥは独り言で、自分の名前を呼んだ。

「ルゥはねぇ、きれいなものが好きなの」

本当は女の子だったが、スラム街の治安は悪い。ルゥは男の子のフリをした。

それでもこっそりときれいなものを集めるのはやめられなかった。

ルゥの縄張りには幸運にも公園がある。

そこのゴミ箱にはルゥの命をつなぐ残飯ときれいなものが捨てられていることがある。

きれいなお菓子の箱を宝箱にして、お菓子に付いていたのであろうリボンを大事にしまった。

砂場にビー玉が落ちていたときは、ルゥは5日待つことにした。ルゥは泥棒ではない。ただ、ビー玉の落とし主が現れたらあきらめるつもりで、待った。

誰も取りに来ない様子を見て、宝箱にビー玉をしまったときの喜びは誰にも伝わらないだろう。

ある朝、雪がたくさん降った。ルゥは熱があり、意識は朦朧としていて、もう自分は助からないだろうと思った。

医者にかかるどころか、一番安い薬を買うこともできない。

ルゥは覚悟した。最後にしたいことを考えた。

ルゥの住んでるスラム街のそばに貴族が住む美しい街があった。そこには大聖堂があり、美しい女神像があると聞いていた。女神様を見られるのは貴族だけだ。それでも、ルゥは最期に女神様のそばで死にたいと思った。

ふらふらしながら、外に出た。

しばらくは何とか前に進めた。

だが、途中で動けなくなってしまった。間の悪いことに、貴族の馬車の前でルゥは立ち往生してしまった。中から護衛騎士たちが出てきて、ルゥを除けると、殴る蹴るのひどい暴行が始まった。

ルゥはもう息絶え絶えだった。

護衛騎士たちが去って行く。

ルゥの体には、しんしんと雪が積もっていった。女神様‥ルゥの最期の声は誰にも届かなかった。

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