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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

悪夢に勝利するには

作者: 青葉
掲載日:2019/10/11

「ただいま。」

 ドアを開け、誰もいない部屋に向けて一言。やっと仕事が終わり、会社から徒歩で家に着くまで10分。今の時間は午後8時を回っている。最悪な一日だった。

 僕は高校を卒業してすぐ、今の会社へ就職した。

 そして最近、なぜか僕の高校時代の同級生ばかりが殺されるという、とても奇妙な事件が起きていた。

 おかげで午前は葬式、午後からは午前の分も合わせて仕事をするという、かなり忙しくなっていた。

 ここ3か月のことだ。昨日とうとう78人目が死んだ。

 残るは僕ともう一人。いじめによって、高校3年になってから登校しなくなったあいつだ。

 そしてなんの因果か、さっき覗いた我が家のポストに、あいつからの手紙が入っていた。4か月前に音信普通になっていたと聞いていたが、生きていたようだ。

 封筒を開け、中の手紙を出す。そこには以下のようなものが書かれていた。


 ”やぁどうも親愛なる君。私だ。

 さて、突然だけどここで一つ、私の悩みを聞いてほしい。実はここ一年程、ほぼ毎日同じ悪夢を見るんだ。どんな悪夢かっていうと、これがまた最悪でね。その夢の中での私は、イエス・キリストが処刑するときに使われた十字架に磔にされて、私の「友達」と呼ぶべき人たちのお面をかぶった全身黒タイツの何者か達79人(私の学友の人数と同じ。つまり君も含めてだ)に、銃火器で蜂の巣にされ続けるんだ。まるで私の体がミンチ肉のようになるまで。

 だけどね、一回だけじゃ終わらないんだ。彼ら(性別がわからないので便宜上彼と呼称する)は、一度私の体がミンチ肉のようになったのを確認した後、どこからともなく新しい「私」の体を持ってきて、また銃撃を始めるんだ。

 これが一晩中続く。え?全く意味が分からないって?大丈夫。私も正直よくわからない。でも、夢なんてみんなそんなものだろう?

 あともう一つ。痛いんだ。尋常じゃなく。

 痛みを感じるんだ。銃撃なんてされたことないからおそらく想像でしかないけど、まるで火箸を全身に何度も何度も押し付けられるような、熱くて、少し鈍い痛みをずっと味わい続けるんだ。

 腕が吹き飛んだ。

 足が千切れた。

 鮮血と共に筋肉、骨の断片が飛び散った。

 胸に大穴が開いた。

 心臓が胴から飛び出し、実に弱々しく、ぴくぴくと脈打ち続けた。

 腹部から臓物がはみ出した。

 喉元に風穴があいた。

 眉間に大穴が開き、脳が爆ぜ、飛び散った。

 頭と胴体が「サヨナラ」した。

「私」構成していた大事な、唯一無二の、この世に二つとない「私」のパーツが、次々に破壊され肉片になっていく。

 それが一晩に何度も何度も続く。おかげさまで寝ざめは毎日最悪だ。

 朝一番に体を検める。腕は、指は、足は、胴体は、胸は、首は無事か。私は本当に生きているのか確認する。これが毎朝の日課になった。

 夢だとはわかっていても、絶対私は無事であると確信していても、欠かすことはできない日課となった。

 それが2か月ほど前、とうとう一年の大台に乗った。乗ってしまった。おそらく、これからもこの夢を見続ける限り、変わることのない日常になってしまうのだろう。

 この先、人間がみな100年ほど生きるとするならば残り80年ほど、毎日欠かすことのできない習慣になってしまうのだろう。

 最近では「誰がどの銃を使って銃撃してきたか」を覚えてしまった。それはそうだ、一年毎日同じ夢を見るんだもの。彼らの名前を明かさなくても、多分君には通じると思うから、「1」から「79」の番号順に挙げていこうと思う。

 1番はSIG P220を使っていた。

 2番はAKS47を使っていた。

 3番はFN-F2000を使っていた。

 4番はM16A1を使っていた。

 5番はベレッタM92Fを使っていた。

 6番はコルトM1911を使っていた。

 7番はFN-FNCを使っていた。

 8番はM60を使っていた。

 9番はGalilを使っていた。

 10番はSIG 552を使っていた。

 11番はレミントンM870を使っていた。

 12番はHk MP5A5を使っていた。

 13番はAK74を使っていた。

 14番はSCAR-Hを使っていた。

 15番はAN94を使っていた。

 16番は三八式歩兵銃を使っていた。

 17番はニューナンブM60を使っていた。

 18番はMG4を使っていた。

 19番はGlock 18Cを使っていた。

 20番はワルサーP38を使っていた。

 21番はレミントンM700を使っていた。

 22番はPython.357を使っていた。

 23番はモスバーグM590を使っていた。

 24番はS&W M29を使っていた。

 25番は二十六年式拳銃を使っていた。

 26番はデザートイーグルを使っていた。

 27番はM40A5を使っていた。

 28番はM4A1を使っていた。

 29番はM249を使っていた。

 30番は64式小銃を使っていた。

 31番はUZIを使っていた。

 32番はKar98Kを使っていた。

 33番はMP7A1を使っていた。

 34番はMk.18を使っていた。

 35番はFR-F2を使っていた。

 36番はAEK971を使っていた。

 37番はモーゼルC96を使っていた。

 38番はS&W M500を使っていた。

 39番はバレットM82A1を使っていた。

 40番はラインメタルFG42を使っていた。

 41番はワルサーWA2000を使っていた。

 42番はキャリコM950を使っていた。

 43番はUMP45を使っていた。

 44番はスプリングフィールドM1903を使っていた。

 45番はHK33を使っていた。

 46番はFN-FALを使っていた。

 47番はM16A4を使っていた。

 48番はMP38/40を使っていた。

 49番はP90を使っていた。

 50番はMagpul Masadaを使っていた。

 51番はモシン・ナガンを使っていた。

 52番はM134を使っていた。

 53番はG36Cを使っていた。

 54番はステアーAUG A3を使っていた。

 55番は89式小銃を使っていた。

 56番はC7Eを使っていた。

 57番はPx4を使っていた。

 58番はARX160を使っていた。

 59番はMAC11を使っていた。

 60番はHK416を使っていた。

 61番はウルティマラティオ へカートⅡを使っていた。

 62番はウィンチェスターM1912を使っていた。

 63番はKAC SR47を使っていた。

 64番はBizon PP19を使っていた。

 67番はM14を使っていた。

 68番はブローニング・ハイパワーを使っていた。

 69番はCz805を使っていた。

 70番はHK417を使っていた。

 71番はK1A1を使っていた。

 72番は56式自動歩槍を使っていた。

 73番はSKSを使っていた。

 74番はSCAR-Lを使っていた。

 75番はチェイ・タックM200を使っていた。

 76番はStG44を使っていた。

 77番はL85を使っていた。

 78番はRPKを使っていた。

 79番、つまり君は、SA58を使っていた。

 皆それぞれ、個性的な銃をてんでばらばらに使っていた。

 そしてそれらを使って、私をとことん殺す。殺しつくす。肉の一片、骨のひとかけらさえ残さぬように気をつけながら、余すところなく殺しにかかってくるんだ。

 すごく怖いし、私はすごく痛い。何度許しを乞いたって、何度泣き叫んだって、彼らは問答無用だった。

 何も言わずに私を殺す。マシーンのように思えた。けれども、私は運んでこられるたびに、人の温かさ―つまり彼らの体温を感じた。実に心地の良い温度だった。


 そこで私は思ったんだ。どうにかしてこの悪夢を克服したい、この夢に勝ちたい、と。

 彼らから体温を感じられるということは、すなわち彼らも「生きている」ということだ。たとえ夢の中だとしても、ね。勝機は必ずどこかにあると。

 でもね、夢の中で何度も何度も挑んだところで意味はなかった。

 そこで私は閃いた。閃いてしまったんだ。

「夢の中で勝てないのであれば、現実で勝負すればいいじゃないか」と。

 君と、そして私の友達と呼ぶべき人たちが最近次々と死んでいるだろう?本当に、大変心を痛めている。残されたのはとうとう君と私だけになってしまった。

 けれども、実はあれはね、

 私 が や っ た の だ よ。

 1番から順に、78番まで殺した。こうして順に手紙を出してね。

 効果は覿面だった。夢の中で私を殺す彼らも、とうとう最後の一人だ。

 やっとあの悪夢から解き放たれる!!そう考えただけで絶頂ものだよ、君。

 これは私の復讐だ。悪夢と、そして君たちに対する復讐だよ。


 それでは最後に、私のために死んでくれ。

 もう私はすぐそこにいる。


 では、ごきげんよう!”


 気味が悪くなった。こんなものでたらめだ、と思った。

 だが心のどこかでは、これが真実だろうと確信していた。


 そして振り向けばやっぱり、

 あ い つ が い た。




 END

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