009
家からギルドは近いので歩いて行く。そう言えばこの世界の女性って綺麗な子が多いな。異世界補正?外人の女の子は皆可愛く見えるのと一緒かな?
そんな事を考えているとギルドへ着く。
相変わらず空いているミリムの窓口へ行く。
「今日も素材の買い取りですか?」
「そうなんだが、倉庫には入りそうに無いんだがどうしたら良い?」
「倉庫に入りきらないって何を狩ったんですか?」
「ドラゴンかな。」
「ど、ドラゴンですか?」
急に声が小さくなった。
「なんで小声?」
「本当にドラゴンを狩ったんですか?1人で?」
「ああ、弱い奴だから、大した事ないよ。」
「ちなみに何色ですか?」
「グリーン。」
ミリムが頭を抱え込んで口をパクパクさせている。
「何か問題だったか?」
「問題が多すぎて倒れそうです。こっちに来て下さい。」
そう言ってギルドマスターの部屋に連れていかれた。
「どうした?トラブルか?」
ギルドマスターがミリムに声を掛ける。
「Cランクのエイジさんがドラゴンを倒しました。」
「何?それは事実か?」
ギルドマスターが席から立ち上がり怒鳴る様に尋ねる。
「証拠になるか判りませんが、これで良いですか?」
そう言ってエイジはドラゴンの頭を出した。大きめの部屋を埋め尽くすほどのサイズだ。
「グリーンドラゴンじゃないか。」
「多分緑だからそうだと思います。買い取って貰えますか?」
「ギルド支部にドラゴンを買い取れるほどの資金は無いぞ。」
「え?じゃあ、これって無駄骨?」
「どうやら君は王都へ行く必要がある様だ。」
ギルドマスターが席に座りなおし、そんな事を言い出した。
「王都ですか?」
「ああ、まず、ドラゴンを買い取れるギルドはこの国に3つしかない。その元締めが王都のギルドだ。更に、Sランクの冒険者になる為には王都のギルドで試験を受ける必要がある。どうだ?今の君に必要な物が王都には揃っている。」
「なるほど、理由は解りました。ちなみに王都へはどう行くんですか?」
「王都行きの乗合馬車がある。1か月程で着くはずだ。」
「1か月もかかるんですか?」
「このアーネスハイム王国は大国だからな。それと君のランクはAに上げて置くよ。流石にドラゴンを倒すCランクは不味い。と言う事でミリム手続きを頼む。」
「解りました。」
ミリムさんが部屋を出て行った。ついでにドラゴンの頭もストレージに仕舞った。鮮度が下がると買い取り価格が下がるからね。
「王都のギルドには手紙を書いておくから出発前に取りに来いよ。」
「解りました。色々とお手数を掛けます。」
「手紙はミリムに預けて置くから、そうだな三日後までに書いて置く。」
頭を下げてギルドマスターの部屋を出る。ミリムさんの所へ行くとAランクのカードが出来ていたのでCランクの物と交換して貰う。
「多分ギルド始まって以来の最速Aランカーね。」
「そうなんですか?」
「エイジ君ってまだ成人したてよね?」
「はい、15歳です。」
「その年でAランクって聞いた事無いわよ。」
「不味いですかね?」
「不味くは無いわよ、逆にマジックボックスの事とか隠さずに済むから楽になるかもね。」
「はぁ、じゃあ転移とかも大丈夫ですか?」
「転移って、転移魔法?もしかして使えるの?」
エイジは黙ってうなずく。
「それは黙ってなさい。今では失われた古代魔法と言われている魔法よ。」
また声が小さくなるミリムさん。
「他に何か隠して無いわよね?」
「いや、特に隠してはいないんですが、田舎者なので知らない事が多くて。」
「解ったわ。王都へ行くまでまだ時間があるでしょ?常識を教えてあげるから毎日ギルドへ顔を出しなさい。」
「解りました。お願いします。」
家に帰るとブラスマイヤーに八つ当たりした。
「ドラゴン儲からないじゃん。常識無いって怒られたし。」
「いや、俺もそこまでは詳しく知らなかった。それにドラゴンは強い奴と戦いたいと言うから連れて行っただけで儲かるとは言って無いぞ。」
「明日からどうしよう。儲かる魔物って居ないのか?」
「鉱石獣ってのが居る。文字通り鉱石を食べる魔物だ。中でもメタルリザードと言うのが居てな。こいつがミスリルを食べるとミスリルリザードになる。こいつの体はミスリルで覆われているので非常に高価だ。」
「ほう?それはランク的にどうなんだ?」
「メタルリザードがBランクだから、せいぜいAランクだろう。」
「よし、じゃあ明日はそれを狩に行こう。」
翌日はミスリルリザードを狩る為に家からブラスマイヤーに知られてないミスリル鉱山へ連れて行ってもらったと言うか転移させてもらった。
「って言うか知られてないミスリル鉱山って報告したら金にならないのか?」
「まあ、上手くすれば金になるが、大抵は持ち主と名乗る貴族が出て来て取り上げられて終わりだな。」
「ほう?ならミスリル鉱石を勝手に掘って持って行ったら?」
「何処で取れたか拷問されて消されるな。」
「じゃあ、ミスリルリザードも不味いのでは?」
「ミスリルリザードは冒険者じゃ無いと狩れないからな。問題無い。」
「そういう物か?」
「そろそろ出て来るぞ。」
岩場を苦労して歩いていたらそう言われた。頭に例の矢印が浮かぶ。矢印に導かれて進んで行くとでかいワニが居た。
「ワニじゃん。」
「いや、あれはトカゲだ。」
「無茶苦茶凶暴そうなんですけど?どうやって倒すの?」
「ドラゴンよりは弱いが表面は固い。火魔法で蒸し焼きにするか、口の中が弱点なので口に剣を突っ込めば倒せるぞ。」
「そういう物なのか?まあ、魔法の練習がてら火魔法で蒸し焼きに挑戦してみるか。幸い岩場だし延焼する物は無いだろうしね。」
蒸し焼きと言う事で土魔法で土砂を被せて上から高温のファイアーボールを何度かぶつけてみた。しかし、嫌がるそぶりは見せるが効いていない様に見える。
今度は直接コークスをイメージした炎をぶつけてみる。が、すっと逃げられた。
「なかなか難しいな。」
「この間ドラゴンのブレスを見ただろう?あれをイメージしてみろ。」
ブラスマイヤーがそう言うのでドラゴンのブレスを再現してみる。オーバーキルじゃね?と思ったが、ミスリルリザードは耐えている。更に重ね掛けでブレス。やっとの事で蒸し焼き完成。ってミスリルリザードぱねぇな。
「これじゃあ時間が掛かり過ぎだ。次は剣で行くぞ。2匹目頼む。」
ミスリルリザードの死体をストレージに仕舞って2匹目を探しに岩場を歩く、少し歩くとまた矢印が出た。
今度は剣で勝負だ。口内が弱点って事は噛みつき攻撃を誘ってグサリだな。矢印に従って歩いていると赤い点滅が現れる。肉眼でも発見した。
無防備に近づいてみる。思った通り近づくと噛みついて来る。噛みつきをするりとかいくぐり剣を口に突き刺す。浅いと急所に届かないので結構深く差したがバタバタと暴れている。失敗か?そう思った頃動きが止まった。死んだのか?確かめる為にストレージに入れてみる。入った。剣だけ取り出す。うん、やはり魔法より剣だな。
「もう一匹狩ったら帰るぞ。ブラスマイヤー頼む。」
「解った。しかし、魔法は覚えると便利だぞ。もっと積極的に使っていけ。」
「そうは言っても、元々魔法が無い所から来たからな。こう?違和感が半端ないんだよ。」
「この世界に来たからにはそんな事を言って居たら生き残れんぞ。」
「解った。練習するから。まずはミスリルリザードをもう一匹。」
仕方ないなと言いつつ脳裏に矢印を出してくれる。もう一匹も剣で倒して。家に転移する。これは覚えたんだけどな。
家から冒険者ギルドへ歩く。頭の中はミスリルリザードが幾らで売れるかで一杯だ。
ギルドに着くとミリムさんがやっと来たと言う顔で迎えてくれた。
「遅いわよ。勉強会するから別室に来て。」
「ちょ、ちょっと待って。その前に素材の換金を。」
「素材って、また変なの持ってきて無いわよね?」
「変な物って失礼な。今日はミスリルリザードですよ。」
「ん?今何て言った?」
「ミスリルリザード」
ミリムさんに連行されました。またしてもギルドマスターの部屋です。
「またお前か?」
「いや、今日は何で連れて来られたのか分かりません。」
「どう言う事だミリム?」
「エイジさんがミスリルリザードを狩って来たそうです。」
ギルドマスターが飲んでいた紅茶を吹き出した。汚ねぇおっさんだな。
「ミスリルリザードだと。何処でそんな物を?」
「良く解らないけど魔物の気配を追って居たら見つけたぞ。」
「まずは本物かどうか見せてみろ。」
そう言われたので1匹出してみる。
「本物だな。」
「本物ですね。」
ん?どう言う事だ??
「ミスリルリザードはな、ここ数百年見つかっていない幻の魔物だ。しかもこれだけ綺麗な状態だと王都でオークションにかけられるか、王宮が買い上げて博物館行きになるな。」
ブラスマイヤーさん、後でじっくり話し合いましょうね。
「全部で3匹あるんですけど・・・」
「3匹だと!!見せろ!」
残りの2匹も出す。
「これだけ倒し方が違うな。」
お!流石ギルドマスター良くお分かりで。
「それは魔法で倒しました。後の2匹は剣ですね。」
「剣でミスリルリザードを倒すって、とんでもねぇな。」
「そうなんですか?」
「とりあえず、この3匹も王都行きだな。」
「3匹いるんだから1匹位買いません?」
「そんな金あるか!!」
また無駄骨か・・・
帰りに例の宿屋で食事をして帰った。飯は美味かったがむなしさがこみあげて来た。明日は狩りに行く前に来いとミリムさんに念を押されたので何が高く売れるのか聞いてみよう。