024
魔神が生まれたのに何もできない。昔の僕だったら他の国の事だで済ませていただろう。だが、今はそれが出来ない。何が変わったのだろうか?
考え事をしていても煮詰まるばかりなので、ルシルと模擬戦をしてみる。2週間でルシルの動きを捉える事は出来る様になった。だが攻撃が当たらない。もちろん、ルシルの攻撃も当てさせないけどね。
「ほう?人の身にしては良い動きだな。」
「ルシルの真似をしているだけさ。」
「我はこの姿で戦うのは初めてだ、勝手がイマイチ解らん。」
えー、それでその強さなわけ。精霊凄いな。
とか思って居るとブラスマイヤーからアドバイスが来た。
「武術の心得を開け」
「えっと、意味が解らないんですが?」
「お前のその体は武術を極めている。心は知らんが体は覚えているはずだ。考えずに体の動きに身を任せてみろ。」
簡単に言うけど、それって達人の領域じゃ無いの?
「もう一回行くぞ!今度は当てる。」
ルシルさん元気ですね。
ルシルが容赦の無い猛攻を仕掛けて来る。僕はなるべく無理のない姿勢で避けて行く、だんだんとスピードが速くなるが、体は反応している。イケる。そう思った時ルシルの姿を見失った。
どこから攻撃が来るのか分からない。体の動きに身を任せろって言われてもな。考えるのを止めて、当たるのを覚悟した時、後ろから攻撃が来た。何故か解らないが、体が勝手に躱していた。その後も連続して攻撃が来るが、全て体が勝手に避ける。これが武術の心得を開くって奴か?
「むむ、この連続攻撃が避けられるとは思わなかったぞ。なかなかやるな。」
「僕も吃驚してるよ。」
「では、もう一段スピードを上げるか。」
「って、まだ上があるの?」
「暗黒竜を舐めるなよ。」
今度は最初からルシルの姿が捉えられない。僕は目をつぶって気配のみを追いかける。頭の中に空気の渦の様な物が見える。その渦が乱れた所にルシルが居る。直感的にそう感じた。だが、避け切れずに意識を失った。
気が付くとベッドに寝ていた。起き上がるとルシルが上から覗き込んで来る。
「済まなかったな、手加減を間違えた。」
「いや、鍛えてくれと言ったのは僕だから気にしなくて良いよ。」
そう言えば魔神はどうなったんだろう?
「ブラスマイヤー、魔神は?」
「気にするなと言ったろう?奴はお前が気絶している間に精霊界に昇ったぞ。」
「そっか、結局何もできなかったな。」
「何かする気でいたのか?」
「そう言う訳では無いんだけど、何か出来たら良いなと。」
「お主は変わってるな。スローライフがどうのと騒ぎながら、戦ってばかりいる。」
「ブラスマイヤーの体だからな、性格も似るんじゃないか?」
「俺は、そんなお人よしでは無いぞ。」
そこへルシルが割って入る。
「話の途中済まんが、食事にしないか?腹が減ってのぉ。」
「あ、もう、そんな時間か、悪い悪い。食堂へ行こう。」
そう言って幼女の手を引いて廊下を歩く。この絵面完全にアウトだな。
食堂に入り席に着くとすぐに食事が運ばれてくる。使用人達は何時食べているんだろう?
ルシルが運ばれてくるそばから美味そうに食事を堪能している。メイドさん達が微笑ましい笑顔でそれを見ている。それでいいのか暗黒竜さん。
食後僕は自室に戻り。ルシルは客間に行ってもらった。
「なあ、ブラスマイヤー。人の身で辿り着ける強さの極限ってどの位なんだ?」
「今のお前くらいじゃ無いかな。」
「僕は人の身を超越出来ると?」
「ふむ、その体は神の体だからな。弱くはなっているが、鍛え直せばそれなりの力は持てるだろう。」
「魔神に勝てるくらい?」
「あの暗黒竜。全盛期の力の10分の1も出せていない。魔力機関が完全ならば、今のお前より遥かに強い。それでも魔神には勝てない。まずはあの暗黒竜を超える事だな。」
「そっか、今のルシルに勝てない僕が魔神に勝つなんて夢みたいな話って事だね。」
「まあ、それだけでは無いのだがな、実はお前のストレージには聖剣が何本か入っている。」
「え?マジで?」
「だが、装備画面に出て来ないと言う事は使えないと言う事だ。暗黒竜に勝てなくても剣技のスキルを上げる事で聖剣を装備する事が可能になる。そっちを目指すと言う手もあるぞ。」
「なるほど、強さは1つじゃないって事か?」
「そう言う事だ。更に言うなら、お前はストレージで聖剣を作る事も可能だ。」
「せ、聖剣を作る?」
「聖剣と言うのはな、物理的に敵を切る剣では無い。魂を切る剣だ。だから極端な話木刀でも構わない。まあ、詳しい製法を言っても理解出来んだろうから省くが、聖剣は作れる。覚えて置け。」
「なるほど、物理的に魔神を切るのではなく。魔神の魂を殺すのか。」
「そうだ、だが、今のこの世界に聖剣を扱えるほどの剣の使い手は居ない。もしお主が本気で剣を極めたいなら、俺が指南してやっても良いぞ。」
「考えて置くよ。まずはルシルに勝てないながらも並びたい。」
「ほう?お主にしては前向きな発言だな。スローライフは良いのか?」
「うっ、それは。スローライフ・・・」
スローライフはともかく彼女の一人くらいは欲しいよな。でも、修行中に彼女は不味いだろうな。
って言うか出会いが少なくね?たまに出会っても幼女だし。
「そう言えば金儲けの為にミスリルを取って来たのを忘れている様だが良いのか?」
あ、完全に忘れてた。
それから1週間、午前中はルシルと稽古、午後は魔道具作りと言う忙しい日々を送った。
ちなみにストレージに入っていたミスリル鉱石は30トン近くあり。生成してインゴットにしても12トンある。ミスリルの価値暴落しない様に販売しないとな。
「ところで作った魔道具ってどうやって売るの?この世界の流通とか良く解らないんだけど?」
「2つ方法がある。1つは魔道具屋に卸す。1つは魔道具屋を作る。どちらにする?」
「魔道具は防御の指輪と腕輪の2種類だからな。卸した方が良いかな。種類が増えたら店を構えても良いけど。」
「では、商業ギルドへ行くと良い。卸の仲介もしてくれるぞ。」
って事で商業ギルドへやって来た。
「どの様なご用件でしょうか?」
窓口のお姉さんが聞いて来た。
「魔道具を卸したいのですが、仲介をお願いできますか?」
「どの様な魔道具でしょう?現物をお持ちですか?」
はい、と言って防御の指輪と腕輪を取り出しカウンターに置く。
「両方とも防御魔法が付与されています。」
お姉さんはじっくりと観察している。なんかルーペまで持ち出してるし。
ドキドキしながら待っていると、ふぅーと一息息を吐きお姉さんが言った。
「これは素晴らしいですね。素材はミスリル、付与されている魔法もかなり強力です。高値で売れるでしょう。」
「ありがとうございます。で、何処の店で扱って貰えるんですか?」
「そうですね、この質ならギルドが買い取りますよ。ギルドで買い取って幾つかの店で販売させます。数はどの位ありますか?」
「とりあえず、指輪と腕輪各100個ずつあります。言って頂ければ増産しますよ。」
「解りました。指輪は金貨1枚、腕輪は金貨2枚で行きましょう。」
「それって卸値ですか?」
「そうですよ。安過ぎました?」
「いえいえ、十分です。」
「では、契約書を作りますので、お待ちください。」
なんだかんだ書類を持って来て説明されるが良く解らない。適当にサインして。白金貨3枚貰って帰って来た。とりあえず、また100個ずつ出来たら持ってこいと言うのは解った。
実質1週間で白金貨3枚と言うのは多いのだろうか少ないのだろうか?
家に帰ってブラスマイヤーに聞いてみた。
「あの程度で白金貨3枚なら大儲けだな。もっと高価な魔道具も簡単に作れるぞ。1個作ればストレージの複製機能で簡単に複製できるしな。」
「じゃあ、今度は高価な魔道具の作り方を教えてくれ。」
「俺に任せろ。」
あれ?なんかこのパターン、やらかすフラグが立って無い?




