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023

 翌朝目が覚めると、ルシルが横で寝ていた。


 あれ?別の部屋で寝かせたはずなんだが、どう言う事だ?


 相手は数千年を生きたドラゴン、問題はないはずだが、見た目がヤバいぞ、幼女と同衾とか噂になったらロリコン扱いだ。


 とりあえず、部屋にあるソファに移動する。どうしようかと考えていたら。扉がノックされた。メイドの一人が、ルシルを起こしに行ったら居ないので探し回っていたらしい。


「良く解らんがルシルなら僕のベッドに寝てるぞ、監視は居なかったのか?」


「お客人扱いとの事だったので監視は付けていませんでした。」


「まあ、良い。起こして着替えさせてくれ。今日から食堂が使えるんだろう?」


「はい、食事が出来たので呼びに行きましたら行方不明で。」


「解った、僕も食事を取るから、一緒にしてくれ。」


「畏まりました。」


 おう、メイドさん若いわりにしっかりしてるね。手早くルシルを起こして連れて行ってくれた。


 僕はストレージから着替えて、食堂へ向かう。


 食事は割と美味かった。僕としては止まり木亭の様な冒険者向けの食事の方が好みだが、貴族風のあっさり味の食事も悪く無い。食後に紅茶が出た。そう言えば食堂で紅茶はメニューに無かったな。


 その後ルシルを連れて自室へ戻った。


「食事は足りたか?」


「問題無い。人の食べ物は何と言うか複雑な味がするな。気に入ったぞ。」


「気に入ったのなら良かった。で、体調の方はどうだ?」


「体力は回復した。やはり魔力機関が傷ついているので飛ぶことは出来んが、走り回るくらいなら可能だろう。」


「ちなみに、その格好だがもう少し何とかならんか?」


「格好とは人間の姿の事か?何処か変か?」


「変では無いが幼過ぎる。もう少し成長できないか?」


「この姿は我の精霊年齢に比例している。今、変化できるのはこの姿だけだな。」


「精霊としては幼いって事か?」


「その様だ、精霊になってまだ千年位しか経って無いからな。」


 ブラスマイヤーもそうだが、時間の桁が違うよ。


「まあ、姿は置いて置いて、体は動かせるんだな?」


「うむ、問題無いな。」


「じゃあ、僕を鍛えてくれないかな?」


「鍛える?」


「殺さない程度に手加減して戦ってくれれば良いって事だ。」


「構わんぞ。助けて貰った恩もあるしな。なにより暇だし。」


 2人で庭に出る。庭は結構なスペースがあるが、戦うにはどうだろう?


「この広さで大丈夫か?」


「問題無い、どの広さでも戦える。」


 木刀を2本用意し。使うか?と聞いてみると首を振った。必要無いらしい。


「じゃあ、軽くやろうか?」


 そう言って、ルシルの真後ろに転移して肩に木刀を触れようとしたが、木刀は空を切った。


「その技は一度見た。」


 右後ろから声が聞こえた。振り向くと、ルシルが立っている。え?どうやって移動したの?ドラゴンも転移出来るの?それとも純粋な移動?


 確かめるべく高速で相手の正面に突っ込んで行く。何処で動く?フッとルシルの姿が消えた。サーチには掛からない。ルシルの気配のみを頼りに左へ飛んでみるが、正解は後ろだった。


「強いな。」


「お主も人間にしては面白い動きをする。」


 それから2週間程追いかけっこに精を出した。それでも、やっとルシルの動きに付いて行ける様になった。


 いよいよ本格的に模擬戦をと言う時に冒険者ギルドから呼び出しが掛かった。


 何の用だろうと思いながら、ギルドに向かう。何故かルシルも一緒だ。


「って、なんで付いて来てるの?」


「人間の世界と言う物に興味があってな。」


「頼むから騒ぎは起こすなよ。」


「心配するな。我は温厚なドラゴンで有名なのだ。」


 温厚なドラゴンってなんだ?まあいっか、今日は依頼を受ける訳じゃないし。


 ギルドへ入ると、思いっきり注目を集めている。僕じゃなくてルシルがね。


 ルシルをソファーに座らせて僕は受付の窓口に並んだ。20分位で順番が回って来た。


「本日はどのようなご用件でしょう?」


「ギルドから呼び出しを受けたので参上しました。」


 そう言ってギルドカードを出す。


 Sランクのギルドカードを見た受付嬢は慌てて、上司らしき人に話に行く。


 少し待っていると受付嬢が帰って来た。


「えーと、オークションに出品されていた物の代金が届いております。」


「ああ、オークション終わったの?」


「はい、それでグリーンドラゴンは王家が買い取りで白金貨60枚。ミスリルリザードは3匹で白金貨47枚になりました。併せて白金貨107枚ですが、現金が用意出来て無いのでカードに預金と言う事になりますが、宜しいでしょうか?」


 まだ白金貨20枚位ならストレージに入ってるし問題無いな。


「構いませんよ。」


「では預かり証を見せて下さい。」


 そう言えば預かり証を貰って居たな。ストレージを探すと出て来る。


「これで良いですか?」


 確かにと受付嬢はハンコを押してくれた。


「これで、支払い完了になります。預かり証は保存しておくことをお勧めします。後で入金が無かった等と言う時証明になりますので。」


「解りました。ありがとうございます。」


 そう言って窓口を後にし、ルシルの所へ向かうが、あれ?ルシルが居ない?


 あたりを見回すがルシルの姿が見えない。何処へ行った?


「誰か?ここに居た女の子何処に行ったか知らないか?」


 大声を出すと。ああ、その子なら外へ出て行ったよ。と見ていた冒険者が教えてくれた。急いでギルドの外へ出ると、すぐそばにルシルが居た。


 ホッとしながらルシルに近づくと様子がおかしい。


「どうした?」


 北東を指さし


「こっちに何があるの?」


 と聞いて来る。王都の北東には大したものが無いはずだ。あるとすれば大森林だ。


「そっちは大森林地帯だな。何があった?」


「良く解らないけど、悪い物が生まれた。」


 悪い物?


「ブラスマイヤー。何があった。」


「この国の北東にある帝国と呼ばれる国で魔神が生まれた様だ。」


「魔神って言う事は魔王か?」


「いや、人間だな、人間が亜神になり、魔に飲まれた。」


 魔神か、出て来るの早いよ。まだ修業が終わって無いし、勝てる相手じゃないよな。


「魔神に対抗する手段って無いのか?」


「あるとすれば聖剣だな。」


「聖剣か?ルシルが完全体だとして勝てるか?」


「いや、無理だろうな。」 


「どうしたら良い?」


「何をするにも時間が足りんな。」


 マジかよ、帝国って知らないが、滅亡するのかな?


「ルシル、魔神が生まれたそうだ。何か対抗手段はあるか?」


「この感覚は魔神・・・我の力では勝てない。だが精霊王なら勝てるかも。」


「精霊王?」


「うむ。文字通り精霊の王様だ。」


 ブラスマイヤー説明プリーズ。


「今の精霊王は、エルフが精霊の力を宿した者だ。力量なら魔神と同等だろうが、人間に力を貸してくれるかどうかは難しい所だ。」


 魔神に精霊王に聖剣って話がファンタジー過ぎて解らないよ。


「そう言えば魔神が現れると神様が聖剣を地上に投げるって言ってなかった?」


「ああ、当てにしない方が良いぞ。今の世界に聖剣を扱える人間が居ればの話だ。」


 とりあえず、ここで話す話題じゃないな。一旦家に帰ろう。転移で屋敷の自室へ戻る。


 話を整理しよう。隣の帝国に魔神が現れた。倒す術は2つ聖剣か、精霊王。しかし、聖剣は使える者が居ない。精霊王は人間に味方しない。実質、帝国は滅びるのを待つ状態だ。


「ルシルはどうしたいんだ?」


「我は正直関わりたくないな。アレには勝てん。」


「ブラスマイヤーは?」


「神は基本人間界に干渉しない。お主はどうしたいのだ?」


「僕は出来れば倒したい。けど、今の僕にはその力が無い。」


「幸い魔神が生まれたのはこの国では無い、帝国とこの王国の間には大森林地帯と言うのがあって、魔神も、この国までは来ないだろう。適当に暴れて、次は上の世界を目指すだろう。」


「上の世界?神界か?」


「いや、神界の下に精霊界がある。そこで精霊王に倒されるだろう。」


「実質何も出来ないって事?」


「そうだな。お主が今から修行しても魔神を倒せるほどの力を身に付けるには相当な時間が掛かるぞ。今は、手を出さないのが得策だ。」


 なんか理不尽だな。って言うか、元の世界に居た時はこう言う時は警察とか自衛隊とかが守ってくれたんだよな。一般人が戦うこの世界がおかしいのか?


 しかし、冒険者になってSランクの力を身に付けたのにこんなに無力だなんて。情けない気もする。


 まあ、相手は魔神、神に属する者だ人間の僕に何が出来ると言うのだろう?いや、待て、この体は神の体、この体を一時的にブラスマイヤーに返せばどうだろう?


「なあ、ブラスマイヤー、一時的にこの体をブラスマイヤーに返す事って出来ないの?」


「お前が死ねば可能かもしれんが、元の力を取り戻すのにどれだけかかるか解らん。」


 八方ふさがりらしい。


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