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016

 止まり木亭を出て、転移で家に飛んだ。家は何と言うか貴族の家になっていた。庭には馬車が止まり、厩舎には2頭の馬が並んでいる。


 ドアを開けて中に入ると中の様子も大きく様変わりしていた。これなら、貴族の家だって自信を持って言えるな。自室へ向かおうとしたら、執事のルーメンが現れた。


「ご主人さまおかえりなさいませ。」


「ご苦労様。家の修理費は結構かかった?」


「家が金貨60枚で、庭が28枚でした。まあ、相場ですね。」


「そうか、助かったよ。」


「それから、まだ料理人がおりませんので暫くは外で食事を取って頂きますが宜しいでしょうか?」


「僕は構わないよ。ルーメンこそ大丈夫?」


「問題ありません。では御用がありましたらお呼びください。」


 おお、執事の見本の様な執事だな。


 自室に入ると綺麗に整って居る。多分、ルーメンが一番最初に手を掛けたのだろう。


「ところでブラスマイヤー。魔法が上手くなると何が変わるんだ?」


「まず、戦い方が変わるぞ。魔法には攻撃魔法だけじゃなく補助魔法と言う物がある。この補助魔法を上手く使えば格上の相手でも十分戦える。」


「ほう?つまり剣より魔法の方が強いと?」


「そうではない。剣と魔法を上手く組み合わせれば最強と言う話だ。」


「なるほど、組み合わせか。」


「例えば火に弱い敵が居たとする。森で火魔法は使えないだろう?そこで剣に火属性を纏わせる魔法を使えば、どうだ?」


「おお、そう言う事か。」


「魔法と言うとどうしても派手な攻撃魔法に目が行きがちだが、そう言う小技が使える者が実は強いんだ。」


「まあ、そこまで強くなる必要は無いんだけどね。金と地位と名誉は手に入ったし。」


「そう言えば、それが目的だったな。女は付いてこないが?」


「いや、女はこれから嫌と言う程寄って来るんだよ。」


「そういう物なのか?」


「そういう物だ。」


 なんか今日は色々と疲れたなぁ。早めに寝よう。ベッドに入ると数分もしない内に眠っていた。


 朝6時過ぎに目が覚めた。なんだろう?最近夜明けと共に目が覚める体質になってるなぁ。


 ああ、そっか、飯が無いんだっけ。食堂行くのもだるいなぁ。ストレージに何か入って無かったか?って、こう言う時に限って無いんだよな。


 この時間じゃまだ食堂開いてないよね。2度寝するか?


 って言うか、貴族街に食堂ってあるのかな?あるとしても高そうだな。時間もあるし散歩がてら、ギルドの方へ行ってみるか。


 ぶらぶらと散歩しながら1時間かけてギルドの方へ行ってみる。この辺なら冒険者相手の安い食堂が多くありそうだな。


 色々聞き込みをしたが、飯が美味いと言うと止まり木亭らしい。あとは『白銀の卵亭』と言う所も人気らしいが、ここはウエイトレスが人気らしい。と言う事で昨日の今日だが止まり木亭で飯を食う事にした。


 煮込み定食が美味かったので5人前ほど追加注文した。ストレージに入れて置き、明日の朝食にしよう。等と考えていると俄かに店が騒がしくなる。


 何事かと思って居ると、衛兵らしき数人が人を探しているらしい。人騒がせなと思ったら僕だった。


「エイジと言う冒険者はお前か?」


「はい、そうですが?」


「宰相閣下からの呼び出しだ。着いて来たまえ。」


「解りました。」


 連行されて行く僕、周りは何事かと見守っている。


 王城に着くと宰相の執務室ではなくいきなり応接室へ通された。


「おお、来たか。」


「来たかじゃ無いですよ。もっと穏便にして下さいよ。」


「すまんすまん。お主の見つけた3つの鉱山。全てからミスリルが出た。」


 王様がなんか興奮気味だ。


「しかも、そのうちの1つは過去最大の埋蔵量らしい。でかした。この功をもって、其方を子爵へ陞爵する。更に、報奨金として白金貨200枚を授ける。」


「はは、ありがたき幸せ。」


 つか、昨日初めて男爵家で寝たんですけど、起きたら子爵ですか?


「して、お主に次の課題を与える。」


「え?また課題ですか?」


「そうじゃ、この課題をクリアすれば伯爵になれるぞ。伯爵になればセレスティアを嫁にやろう。悪い話じゃあるまい?」


 って言うか、セレスティアさんの顔、もう覚えて無いんですけど?


「其方は魔鉱石と言うのをしっておるか?」


「魔鉱石ですか?知りませんね。」


「ミスリルより遥かに希少な金属でな。お主の腰の剣一振りで、この王城が買える位だ。」


 まじか凄いな魔鉱石。


「アダマンタイトやオリハルコンとは違うのですか?」


「それはどちらも伝説上の金属だ。魔鉱石は実在する。」


 あら、アダマンタイトやオリハルコンって実在しないの?


「この王都の東に大山脈が横切っているのは知ってるな?」


「はい、それを避けて、ここまで来たので。」


「その、大山脈の何処かに魔鉱石が眠っているそうだ。剣一振り分で良い。取って来てくれ。」


「それが、課題ですか?」


「その通り。期限は1年だ。その間に持って来れば課題クリアだな。」


 おもしろいな、けど、セレスティアさんは要らないとは言えないしな。


「解りました。挑戦するだけはしてみます。」


「うむ、期待してるぞ。」


 その後宰相に細かい話と報奨金を振り込む旨を聞き。王城を後にした。


 家に転移し、すぐさま執事のルーメンを呼ぶ。


「ルーメンさん申し訳ないのですが、使用人をあと5人増やして下さい。全部で20人雇います。実は先程、子爵に陞爵しました。」


「え?あれ?ご主人が男爵になられたのって、2週間ほど前じゃありませんでしたか?」


「うん。そうだね。」


「で、今日、子爵に?」


「らしいよ。」


「なんと言うかおめでとうございます。」


「うん。ありがとう。」


「ところで家はどうなさいますか?」


「大金出して直したばかりだからね。暫くは、ここに住むよ。それに何時伯爵になるか判らないしね。」


「伯爵にって言う話も出てるんですか?」


「内密だけどね。」


「解りました。ここは少しお金を掛けても良い人材を揃えます。お任せ下さい。」


 やはり、この執事優秀だ。


 とりあえず暫くは貴族の生活を楽しもう。その気になったら魔鉱石を探せば良いだろう。


 そうだ、伯爵になったら領地を貰ってそこでスローライフと言うのも悪く無いな。


 しかし、金がある貴族って暇だな。金が無い貴族ってどうしてるんだろう?


 折角綺麗になったのだからと庭を見ながらそんな事を考えていたら、意外な場所から声が掛かった。


「はじめまして。かな?」


 金髪碧眼の背の高い青年だ。多分17,8歳と言った所だろう。


「ですね。はじめまして。エイジ・フォン・ゼルマキアです。」


「僕は隣に住む、フリッツ・フォン・ルーベルトだよ。見ての通り貧乏貴族の跡取りさ。」


「貧乏なんですか?」


「まあ、この辺に住んでる貴族は大抵貧乏だな。金持ちはもっと中央に家を持つ。君もだろう?」


「あー、僕は2週間前に来たばかりで良く解らなくて。良かったら色々教えて下さい。」


「僕も話し相手が居なくて退屈してたところだ。丁度良いからうちに来ないか?」


「良いんですか?」


「構わないよ。父は王城で文官をしてるから、昼間は僕と母上しか無いしね。」


「じゃあ、お邪魔させて頂きます。」


 あれ?お土産とか持たなくて良いのかな?


 ルーベルト男爵家はうちより狭かった。


 どうぞと言って応接室へ通してくれた。メイドが紅茶と茶菓子を出してくれる。


「フリッツさんは普段何をしてるんですか?」


「僕は父の跡を継いで文官になるので、その勉強かな。貴族学院は去年卒業したので今は実際の書類を見せて貰って仕事を覚えている最中だ。多分、20歳になれば父と一緒に王城へ行く事になるだろうね。」


「貴族学院と言うのがあるのですね?僕は田舎から出て来たので知りませんでした。」


「ほう?田舎の出と言う事は派閥は何処かの辺境伯かな?」


「やはり派閥と言うのがあるのですね?あるとすれば、うちは公爵家の派閥になるはずです。」


「派閥はあるよ。面倒だけれどね。公爵家か。うちは王家の派閥になるから親戚だね。」


「国王派と言うのもあるのですか?」


「あるよ。他にも4大侯爵と言うのが居てね。それぞれに派閥を持っている。」


「確かに面倒そうですね。」


「幸い、王家や公爵の派閥には上納金が無いので助かってるが、この上納金ってのが原因で貧乏貴族が増えてるのも事実なんだ。」


 なるほど、上納金システムで貴族の力を削いでいるのか。


「ちなみにそう言った貧乏下級貴族って何家位あるんですか?」


「この王都に約200の貴族の屋敷がある。その半分以上が貧乏下級貴族だよ。」


「半分って言う事は残りの半分は裕福なんですか?」


「そうだね、裕福な貴族は大抵何らかの商売で成功した貴族になるね。」


「なるほど商売ですか?フリッツさんは商売はやらないんですか?」


「僕は文系人間なので商売には向いてないよ。」


 おお、この世界にも文系と理系があるのか。


 ついつい長話をしてしまった。お礼を言って屋敷を辞した。


 その後冒険者ギルドへ転移し、適当な食堂に入って食事をした。値段の割には美味かった。



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