015
翌朝、食事を取った後、ブラスマイヤーにドラゴンの場所へ連れて行ってもらう。
「なるべく近場で強めのドラゴン頼む。」
「だとすると、ここだな。」
ブラスマイヤーからイメージが送られてくる。なんか若干暗めだな。洞窟の中かな?映像が鮮明になるまで待ってから転移で飛ぶ。
やはり洞窟の中らしい、空気がじめっとしている。
「このまま奥へ進めば良いのか?」
「ああ、1本道だ。迷う事は無い。」
「こう言う所にドラゴンって住んでいるのか?」
「個体に寄るな。基本人や他の魔物と隔離された場所に巣を作る。」
少し進むと目が慣れて来たのか徐々に周りの様子が判る様になってくる。なんと言うか、日本人が想像するダンジョンの様な場所だ。
100メートルも進まない内に生き物の気配がする。しかもでかい。目を凝らすとぼんやりだが姿が見える。
もう少し近づくと、向こうもこちらに気付いた様だ。もしかしたら最初から気付いていたのかもしれない。
気配はするが殺気は無い。そのまま進む。徐々にドラゴンの姿が露になって来る。これ、グリーンドラゴンの倍位あるんじゃね?
実際には判らないが、相当大きいのは判る。目のサイズからして違う。
ドラゴンの目はまっすぐこちらを捉えている。しかし、攻撃も威嚇もして来ない。
10メートルまで近づいた時、ドラゴンに動きがあった。ゆっくりと体を起こしたのだ。
「弱ってる訳じゃないよね?でも、敵意を感じないんだけど?」
ブラスマイヤーに問いかけたのだが、意外な所から返事が返って来た。
「人の子よ。我に何の用だ。」
「喋るのか?」
「こいつはエンシェントドラゴンだな。」
「エンシェントドラゴン?」
「数千年を生きた古龍の事だ。数万年を生きれば神格を得る事もある。」
「数千年って事は地殻変動を生き抜いたのか?」
「ふむ、良く解らんが、1つの体に2つの魂。お主何者だ?」
エンシェントドラゴンが問いかけて来た。答えに窮する質問だな。それは僕も知りたい。
って言うか、これ倒しちゃ駄目な奴だよね?
エイジは自分の事をエンシェントドラゴンに話して聞かせた。
「ほう?ではお主たちは神なのか?」
「いや、現状は多分神では無いと思う。力も制限されてるみたいだしね。」
「ふむ、興味深いな。」
「しかし、あなたは何故ここに居るんです?窮屈でしょ?」
「2千年前の地殻変動でここに閉じ込められてしまったのだ。」
「このままだとどうなります?」
「あと1万年位で死ぬだろうな。」
え?死んじゃうの?
「ブラスマイヤー、このドラゴン助けられないか?」
「助けられなくは無いが、倒しに来たのでは無いのか?」
そうなんだけど、敵意も無いし、言葉が通じるから倒しにくいよね。
「我を倒したいのなら構わんぞ。死ぬのが少し早くなるだけだ。」
「いや、あなたを助けたいと思います。」
「ほう?何故に?」
「あなたには知性があり、理性もある。解き放っても人を襲うとは思えないからです。」
ブラスマイヤーにドラゴンの救出方法を聞く。何の事は無い、転移で飛ぶだけだ。地上のイメージをブラスマイヤーに送って貰う。
ドラゴンに触ったまま、地上へ向けて転移する。次の瞬間には陽光の射す森に立っていた。ドラゴンはやはり大きかった。
「2000年ぶりの地上だ。まさか再び陽の光を見れるとは思わなかった。礼を言うぞ。」
「いや、礼なんて良いですよ。それより、飛べますか?2000年も閉じ込められて居たんでしょ?」
「ああ、ドラゴンは羽根で飛んでる訳では無い。心配するな。」
「何処か行く当てはあるんですか?」
「今は、この世界を見て回りたい。」
「何となく解ります。」
「そうだ、これをお主にやろう。我が持っていても意味が無い物だ。」
そう言ってドラゴンが何かを吐き出した。
「これは指輪ですか?」
「ああ、3000年前くらいに喰らった魔物が持っていた物だ。詳しくは判らんが、魔素を制御する力を持ってるのでは無いかと思う。」
3000年前と言うと前の文明の遺産だな。後でブラスマイヤーに確認しよう。
「ありがたく頂きます。それでは僕は帰りますので、お達者で。」
「人の子よ。この恩は忘れない。何か困った事があったら我を頼れ。」
そう言ってドラゴンは飛び立って行った。
「本当に倒さなくて良かったのか?」
「まあね。ところで、この指輪、何だか分かる?」
「おそらく、魔法媒体じゃ無いかと思うぞ。魔法使いの杖の様な物だ。」
「ああ、そう言えば、この世界の人の魔法って見た事ないけど、普通は杖を使うの?」
「俺がまだ人間だった頃は皆何かしらの媒体を使って居た。今の世界の魔法使いは杖を使う者が少ないな。」
「それって何か問題あるの?」
「媒体を使った方がより強力な魔法を使える。今の文明になってから、昔より魔法使いが弱くなったな。」
「って事は、この指輪を付ければ、魔法が上手くなるかもしれないって事?」
「その可能性は高い。が、まず鑑定してみろ。」
鑑定か、まずストレージに入れて、アイテムから詳細をチェックするんだったな。鑑定の魔法もあるが、こっちの方が楽だからな。
「万物創世の指輪+4って出てるけど、なんだこれ?」
「ほう?それはかなりのお宝だ。魔法が10倍くらいは強くなるぞ。更に錬金魔法が使える様になる。」
「錬金魔法?」
「まあ、ストレージがあればそれ程必要では無いのだが。例えば戦闘中に剣が折れた時などに瞬時に修復したり出来るな。」
「便利じゃん。」
「便利な反面、リスクもある。鉄を金に変えるなんて事も出来てしまう。」
「なるほど、それはある意味危険だね。」
僕は右手の中指に指輪を装備した。これで転移の制度が上がってくれると助かるんだがね。
一旦王都へ帰る。冒険者ギルド前をイメージして飛んでみる。ちゃんとギルド前に転移出来た。
「おお、成功した。指輪凄げぇ。」
「ふむ、これで魔法が上手くなるのであれば、確かにドラゴンに会う度に人生が変わると言うエイジの説もあながち間違いでは無いかもしれんな。」
「だろう?でもさ、タイミングもあると思うんだ。ただドラゴンに会えば良い訳では無いと思う。」
「それもそうだな。」
ギルドから止まり木亭は近い。時間は早いが帰る事にする。
そしてまた1週間が過ぎる。
エイジは急に忙しくなるのであった。
服が出来たと連絡があり。馬が購入できたと連絡が入り。家の修理が終わったと立て続けに連絡が入る。どれからこなそうか考えていたら執事が決まったと言う連絡も入った。
ん?執事?そうだ執事に全部押し付けよう。早速執事に会いに行く。
商業ギルドに行くと、執事だと言う男性が既に待っていた。ギルドの職員から紹介される。
「こちら執事協会所属のルーメンさんです。」
「初めまして。エイジ・フォン・ゼルマキア男爵です。」
男性は30歳前後、執事らしい綺麗な礼をして挨拶をする。
「執事のルーメンです。若輩者ですが精一杯務めさせて頂きます。」
銀髪を綺麗に後ろでまとめている。何処かの音楽家の様な佇まいだ。
「早速で悪いのですが、馬車を購入したので家まで乗って行って下さい。それと家の修理が終わってるのでその代金と必要な物を一通りそろえて欲しいのです。また、使用人を15人程雇って下さい。可能ですか?」
「問題ありません。」
お?この執事使えるかも。エイジは白金貨2枚を渡し。足りなかったら行って下さいと伝えて置く。
「僕は馬車の代金を払った後、服を取りに行きますので、帰りが少し遅くなります。食事は要りませんので、ルーメンさんも自分で済ませて置いて下さい。」
「解りました。では、先にお屋敷の方を見させていただきます。」
そう言ってギルド職員に地図を貰って出て行った。僕は馬車の代金や、その他諸々の諸経費を払ってから、服屋へ向かう。
服屋で服を受け取り、代金を払い。ストレージに仕舞う。
次は止まり木亭だ。宿を引き払うついでに食事をして行こう。




