014
あれから1週間経つが、状況は何も変わらない。家の修理もまだだし、執事も決まってない。洋服もまだだし、馬も決まらない。
この世界の住人って、のんびりしてるのかな?いや、現代日本人が急ぎ過ぎなのかもしれない。
ワイバーンとグレートバッファローを交互に狩っていたがそれも飽きた。白金貨4枚位は稼いだが、金はあるから今はもっと強い魔物と戦ってみたい。またドラゴン狩るかな。
あれ?そう言えば白金貨50枚を褒美にくれるって言ってたけど貰って無いな?どうなってるんだろう?
お金下さいって王城へ行くのもなんだしな。今日は何をしようか?
そう言えば未発掘のミスリル鉱山だっけ?半年で見つけて来いって言ってたな。
「ブラスマイヤー、未発掘のミスリル鉱山って珍しいのか?」
「ああ、今の文明は1200年前に生まれたと教えただろう?この国も大きさの割に発展していない。未開拓の土地も多い。故に発見されていない鉱山も多いと言う事になる。」
「なるほどな。でも前の文明の時に掘りつくされたんじゃないのか?」
「前の文明が滅びた原因は大規模な地殻変動による災害だ。今の世界の地形は昔と大きく異なっている。当然鉱石の場所なども大きく変わったはずだ。」
「なるほどな、で、ブラスマイヤーにはその場所が判るのか?」
「解るぞ。」
「王都の近郊に幾つ位ある?」
「3つだな。」
「解った。地図を買いに行こう!」
冒険者ギルドへ行き。この国の地図と王都近郊の地図を買った。
人気のない場所へ行き、ブラスマイヤーに一番近い未発掘ミスリル鉱山の座標とイメージを送って貰う。
イメージの場所へ転移し。まず、地図に場所をメモする。王都近郊の地図に丸印を付けてから、周囲を見回す。
「どの辺がミスリル鉱山なんだ?」
「足元の石ころを拾ってみろ。」
そう言われたので適当な石を拾う。
「薄く青色に光って無いか?」
「言われてみれば、光ってるな。」
「それがミスリルだ。」
「ん?って事は今立ってるこの場所が既にミスリル鉱山なのか?」
「そうだ。ここは割と大きい様だ。しかも王都から近い。良く今まで見つからなかったものだ。」
「解った。次へ行こう!」
同じように座標とイメージを送って貰い転移する。
まず王都近郊の地図に丸を付ける。
周りを見回すが、ミスリルらしき石が見つからない。
「ここで合ってるのか?見当たらないみたいだけど。」
「ああ、ここの地下だ。」
「地下?どの位掘れば見つかるんだ?」
「それ程深くは無いな。5メートルも掘れば出るだろう。」
丸印の横に5メートルとメモ書きする。もちろんこちらの世界の文字だ。
「よし、次行こう!」
次はかなり森の深くだった。ここも一応王都近郊の地図の範囲だから問題は無いだろう。って言うか、王都近郊で探せとは言われてないんだよね。
「で、肝心のミスリルは何処にあるんだ?」
「そこに大きな岩があるだろう?それをどかせば出て来るぞ。」
「ほう?この下にあるのか。」
地図に丸を書いて横に岩の下とメモをする。
「よし、一旦帰るぞ。」
そう言って転移する。何故か屋敷の前に出る。どうやら工事は順調に進んでいるみたいだ。
貴族街なので王城までは割と近い。馬車が無いので歩いて王城へ行く。門番に短剣を見せて、宰相に取り次いで貰う。
10分ほど待つと騎士風の男が迎えに来た。ついて来いと言うのでついて行く。
見覚えのある宰相の執務室へ通された。
「今日は何だ?」
「用件は2つです。1つは褒美の白金貨50枚が何時貰えるのかと言う事、もう1つは未採掘のミスリル鉱山を見つけたので報告に来ました。」
「何?もう見つけたのか?まだ1週間程度しか経ってないぞ。」
「そんなに難しい課題なんですか?割と簡単に見つけましたけど?」
「ちょっと、そこの椅子に掛けて待ってろ、すぐに陛下に報告してくる。」
「はぁ。」
なんか急いで行っちゃったけど、こんな所で1人は嫌だなぁ。
5分程で宰相が戻って来た。助かった。
「陛下が会うそうだ。ついて来い。」
え?また王様?って言うか冒険者の格好で来ちゃったけど良いのかな?
例の応接室に通された。どうやら今回も内密らしい。
「ミスリル鉱山を見つけたと言うのは本当か?」
「はい。地図を持って来たのですが、お見せしてもよろしいですか?」
そう言って地図を取り出すと、何やらお付きらしき人物がこちらに来て持って行った。
「丸印が3つあるがどれがミスリル鉱山だ?」
「3つ全てがミスリル鉱山です。」
「なんと!この短時間で3つも見つけたのか?しかも全て王都の近郊では無いか。」
「近場が良いと思い王都近郊にしました。他の場所が良ければ他でも探しますが?」
「いや、でかした。すぐに調べさせる。結果、1つでも本物であれば、そちを子爵にしてやろう。」
「ありがたき幸せ。」
「では下がって良いぞ。」
服装は大丈夫だったようだ。安心した。
って、お金は?
「宰相様。もう1つの件は?」
「ん?ああ、それならお主のギルドのカードに振り込んであるぞ。」
「解りました。ありがとうございます。」
王城を辞し、急いで冒険者ギルドに向かう。もう少し転移の性能が上がれば冒険者ギルドまで飛ぶんだけどな。
1時間程歩き、冒険者ギルドに着く。窓口に並び順番を待つ。10分程で順番が来たので窓口のお姉さんに聞いてみる。
「口座の残高って、どうやって見るんですか?」
「カードをお見せください。」
そう言われたのでギルドカードを渡す。
すると1枚の紙と共にギルドカードが帰って来た。紙には現在の口座の残高が書いてあった。
おお、ちゃんと白金貨50枚入ってる。
「これって、何時でも下せるんですか?」
「そうですね。金貨100枚までなら即日下ろせます。それ以上は前日に申請して下さい。」
解りましたと返事をして、窓口から離れた。すぐに下ろす必要は無いかな。
しかし、この世界、時間の感覚がスローだな。こう言うのもスローライフのうちなのかな?
何をするにも時間が掛かり過ぎる。それとも僕がせっかちなのかな?
止まり木亭に戻り、早目の夕食を取る。相変わらず美味いが、日本の食事が恋しくなって来たな。コンビニ弁当で良いから食べたいな。カップ麺でもいいぞ。
部屋に戻り、まったりとする。
「なぁ、ブラスマイヤー。こっちの人間って、みんなこんなにゆったりと暮らしているのか?」
「ゆったりかどうかは判らんが、こんな感じだな。」
「平均寿命短いんだろ?こんな感じじゃ、何も成せずに死んで行く者も多いんじゃないか?」
「人間と言うのはそう言う物だろう?」
「でも、ブラスマイヤーは人間から神になったんだよね?」
「俺の様な人間は稀有な存在だろうな。」
「何をしたんだ?」
「ひたすら強さを求めて人の領域を超えた。」
「それで神になったの?」
「いや、人の領域を超えてからが大変だった。更に上、更に上と目指しているうちに神になっていたって感じだな。」
「良く解らないが苦労するのは嫌だな。」
「お前は何をしたいんだ?」
「最初はスローライフが送りたかった。だが、思ったより退屈そうなので、方針を変えた。楽しい人生を送りたい。」
「ほう?で、具体的に何をする?」
「とりあえず明日、ドラゴンを狩ってみようと思う。」
「何故、急に?」
「ドラゴンを狩ると人生が変わる気がする。」
「意味が解らんが?」
「いや、一度目のグリーンドラゴン。あれを狩ったら人生が変わったろう?だから、またドラゴンを狩れば違う人生に繋がるんじゃないかと思ってね。」
「お前の世界のバタフライエフェクトとか言う奴か?」
「そんな言葉良く知ってるな。」
「お前の魂から読み取った。」
「まあ、そんな感じだ。何か行動を起こせば、何かが変わる。この世界は特にそれが激しい気がする。」
「だから、ドラゴンか?」
「別にドラゴンに拘っている訳では無いんだが、魔物の頂点ってドラゴンなんだろ?」
「魔王を倒すって言う手もあるぞ?」
「魔王って悪人じゃ無いって言って無かったか?」
「ああ、魔王は亜人だ。だが人間族は魔王を敵視している。倒せば勇者になれるぞ。」
「勇者?」
「なりたくないのか?」
「いや、面倒くさそうだ。じゃあ、魔剣とか聖剣とかもあるの?」
「あるぞ。ちなみに素材があればストレージで作れる。」
マジですか?




