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013

 鍵と地図を貰ったので、家を見て置こうと思う。一度見て置けば転移できるしね。


 貴族街は王城の周辺にある。その中でもエイジが借りた家は西の端に位置する。西の端と言っても中央部には違いないので王城までは割と近い。また、冒険者ギルドも南西にあるので、東に借りるよりは利便性が良い。まあまあの立地である。


 家に近づくと似た様な大きさの家が数件並んでいる、どうやらこの辺は男爵家が多い様だ。目的の家に辿り着くと、まず、荒れた庭が目に入る。


「これは手入れが面倒そうだな。」


 庭はそれなりの広さがあるが、家は思ったよりこじんまりとしている。これで月50万は高くね?


 外壁も所々剥げが目立つ。塗りなおしが必要だろう。中に入ると床は思ったより頑丈だが、窓やドアにガタが来ている。


「修理が必要だな。この世界の賃貸って勝手にいじっても良いのかな?」


「構わんぞ。家とは基本そういう物だ。家具類も自由にして問題無い。」


「そう言えば、家具が付いてるんだな。」


 一通り部屋を回ってみる。1階部分は応接室、執務室、寝室、客室、執事の部屋、食堂、キッチンなどが並んでいる。風呂が付いているのにビックリした。しかも結構でかい。2階は主に使用人の部屋になっている様だ。12人位は住み込み出来そうだ。1階にも使用人用の部屋があったので合わせて15人位なら余裕で雇えるだろう。それからトイレが全部で4個もある。流石にこの規模だとその位必要なのかもしれない。


 家自体は悪く無い、問題は状態だな。これを修理するのに幾らかかるんだろう?憂鬱な気分になるエイジだった。


「なあ、ブラスマイヤー。こう言うのって魔法じゃ修理できないのか?」


「出来ない事も無いが、金を回すのが貴族の仕事だ。特にお前は白金貨50枚も貰っているからな。ここは商業ギルドに頼んだ方が賢いぞ。」


「そういう物か?まあ、当分は住めそうにないな。止まり木亭に戻ろう。」


 歩いて止まり木亭に向かう。1時間近くかかってしまった。


 宿屋に入ると既に夕食の時間らしい。幼女に勧められて席に着く。相変わらずここの飯は美味い。エールを追加で注文した。


 部屋に戻りくつろぎながらブラスマイヤーと話す。


「明日は商業ギルドへ行くとして、後は何をすれば良いんだ?」


「着るものが必要だな。貴族らしい格好をしないと舐められるぞ。」


「そういう物なのか?他には何かあるか?」


「馬車を買え。」


「馬車?」


「ああ、貴族は基本的に歩かない。特に王城へ上がる時は馬車が必要だ。」


 そう言えば、家に厩舎が付いていたな、そう言う事か。しかし貴族って意外と面倒だな。こんなんでスローライフ出来るのか?


 俺のスローライフのイメージって田舎の農村で自給自足なんだけどな。なんか、どんどん違う方向へ行ってる気がするぞ。


 まあいい、明日は商業ギルドに行って、服を買って、馬車を買う。いや、ちょっと待て、馬車って何処で売ってるんだ?


 翌朝、幼女に起こされ、食事を取って外出する。今日の宿泊代も渡して置く。目的地は商業ギルドだ。馬車も商業ギルドで買えるらしい。


 そう言えば冒険者なのに全然冒険してないな。


 40分程かけて商業ギルドに辿り着く。ギルドに着くと窓口に行き、家を直す職人の手配と庭の手入れの職人の手配を頼み、馬車が欲しい事を伝える。


「馬車は2頭立てでよろしいでしょうか?」


「ああ、それで頼む。あと馬も一緒に。」


「馬車は金貨20枚程度ですが、馬は高いですよ、最低でも金貨30枚はします。」


 ん?馬車が金貨20枚で、馬が1頭30枚、それを2頭。全部で金貨80枚?


 日本円で800万円って高級車が買えるじゃん。馬車高っ!


「必要なので手配をお願いします。止まり木亭に泊まっているので手配が出来たら連絡ください。」


「解りました。お名前は?」


「エイジ・フォン・ゼルマキア男爵です。」


「ゼルマキア男爵様ですね。承りました。」


 ふぅ。緊張した。いきなり800万の買い物をしてしまった。次は服だな。


 この世界平民は基本古着を着る。なので新品の服は売って無い。貴族は全てオーダーメイドで服を揃えるのだそうだ。


 商業ギルドで聞いた店にやってくる。なんか高級そうな店だ。


「いらっしゃいませ、今日はどのようなご用件で?」


「貴族に叙されたので服を新調したい。王城へ着て行く物を2着と平服を4枚作ってくれ。」


「解りました。では採寸させて頂きますので奥へどうぞ。」


 奥へ通されて、あちこち測られる。20分程だったが物凄く疲れた。


「デザインはどうなさりますか?」


「良く解らないので任せるよ。どの位で出来る?」


「そうですね。2週間程時間を頂きます。」


「解った。止まり木亭に泊まっているので出来たら連絡をくれ。」


「畏まりました。」


「ちなみに全部で幾らになる?」


「そうですね金貨45枚位になると思いますよ。」


「解った。」


 店を出てホッとする。つか洋服で450万円ってなんだよ?ブランド品か?


 貴族になった途端金銭感覚がマヒするぞ。


「おい、ブラスマイヤー、忘れ物は無いよな?」


「とりあえずは大丈夫だな。」


「まだ時間あるけど、何処か行くか?」


「ドラゴンでも狩りに行くか?」


「また、大騒ぎになるのは勘弁してくれ。」


「ストレージの解体機能を使えば問題ない。」


 ん?解体機能なんぞや?


「ストレージに入れた物は加工、解体、合成、コピー等が可能だ。」


「それ、もっと早く言ってくれればこんな事にはならなかったのでは?」


「いや、成人したての低ランクがドラゴンを解体したとか言ったら大騒ぎになるぞ。それに、素材もまともに買い取って貰えない可能性がある。」


「まあ、確かに。」


「だから低ランクのうちはドラゴンは丸ごと売るのが儲かる。高ランクになったら解体して素材ごとに売った方が儲けになるって事だ。」


「一応考えているんだな。」


「一応とはなんだ。」


「高く売れるワイバーンとか狩りに行こうぜ。」


「ワイバーンか、あれは結構面倒だぞ。」


「そうなのか?」


「まあ、行ってみれば判る。」


 頭の中に地図と映像が流れ込んで来る。映像に集中し鮮明になった所で転移発動。


 ここは渓谷の底?


「ワイバーンはこう言う所に好んで巣を作る。鳴き声が聞こえたら上を見ろ。」


「上ねぇ?」


 って、既に何か飛んでるし。


「あれってワイバーン?」


 そう聞くと同時に鳴き声が聞こえた。


「ワイバーンがやっかいなのは飛ぶ事だ。しかもかなりの高さを飛ぶ。あれを落とすのには魔法の正確なコントロールが要求される。」


「100メートル位あるぞ、あそこに届く魔法ってあるのか?」


「ロックアローがお勧めだ。ちなみに羽が弱点だぞ。」


 よし、じゃあ一丁やってみますか。そう言えば攻撃魔法を使うのも久しぶりな気がするな。


 イメージして、ロックアロー!


 って、30メートル位しか飛ばないし。


「イメージが足りないな。ちゃんとワイバーンの羽を打ち抜くイメージをしろ。」


「やってるんだけどなぁ」


 何度か試すが、やはり飛距離が足りない。何故だ?アローって矢だよな?矢が100メートルも飛ぶイメージって無いんだよね。じゃあどうする?銃だな。ここはライフルをイメージしよう。


 羽を良く狙って。ロックライフル!


 バシュ!っと音がして、ワイバーンの羽に穴が開いた。小さな穴だがワイバーンはバランスを崩して落ちて来る。


「あんな小さい穴で飛べなくなるの?」


「ワイバーンはドラゴンの亜種だ、羽ではなく魔法で飛んでいる。羽に穴が開くとバランスを崩す物なのだ。」


「なるほど、そういう物なのか?」


「ほら落ちて来るぞ、首を刈れ。」


 落ちて来るワイバーンを追いかけて地面に叩きつけられたタイミングで首を刈る。そのままストレージに入れた。


 コツを掴めば簡単だ。そのあと全部で5匹のワイバーンを狩った。


 狩ったは良いが今度は帰るのに難儀した。止まり木亭をイメージして転移したのだが何故か男爵邸に転移した。


「あら?なんでここに?」


「お前のホームがここに設定されているんだろう。」


「ホーム?」


「ああ、拠点と言う奴だな。ここを家と頭で認識したから自動更新されたのだろう。」


「そういう物か?しかし、ここからギルドまで結構あるぞ。」


「どっちみち止まり木亭に帰るのだろう?だったら同じ方向だ。」


 ギルドに着く頃には薄暗くなっていた。ちなみにワイバーンは5匹で白金貨1枚になった。馬車代くらいにはなった様だ。


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