第六話 サラリーマンは大逆者
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この日、世界最高の権力者である≪勇者≫の一人が殺害されたことが発覚し、世界が震撼することとなった。
*冒険者ギルド・グランドマスター室にて
「……それは誠かっ!」
「はい。確かに、槍の勇者様、冒険者ギルドリオニア本部、教官アルベルトを含む計4人が適正試験受験者二名により……いえ、ほとんど一名の仕業により全滅致しました」
さきの監視員が相手にするのは、褐色の肌に銀髪の髪を刈り上げた中々のワイルドガイだ。
年端もそこそこいっているのだろうが、その威圧感はまだまだ健在で片目を大きく横断する切り傷も相まって、相当の風格がある。
まさに、歴戦の戦士のような彼だが既に引退した身として、冒険者ギルド・グランドマスターの座に就任し、冒険者達を束ねているのだ。
その戦闘力、勇者に追随すると言われていた。
「そうか……。監視役であるはずのお前は何故にその凶行を止めなかったのか?」
「はい。誠に申し上げにくいのですが、もし出ていっても止められる可能性が低いと……。いえ、はっきりと言いましょう。止めに行く勇気がなかったと」
「お前ほどの能力者がか?たしか、スキルコスト合計は60と高かったはずだ」
「確かにそうですが。まず、単体で高い数値を誇るスキルを持つ者が、圧倒的な強さを持っているのは自明ですよね」
「あぁ、分かっている。いくらコスト合計を85以上にしようが、シャルル様の持つ【聖剣】 85の方が圧倒的な強さを誇るな」
「そうでございます」
「そだとすると、何故に単体でスキルコスト80を誇る【聖槍】をもつ槍の勇者様が殺害されなされるのか?いくら、スキルが発覚して間もないからとおっしゃっても、あのスキルを使って負けなさるとは到底思えん。五歳児でも使えるほど純粋で強力な力だというのに……」
「それについて何ですが、申し上げにくく……。や、槍の勇者様を殺害した男の持つスキルのコストが、【聖槍】に勝っていたとうだけなのです……」
「合計ではなく、単体でか?」
「左様でございます」
「……それは、いくらなんだ?」
「スキル最果ての地、100……かと」
「っ!誠か!?」
その驚きはかの恐ろしい風貌でさえ滑稽な顔にして見せた。
「今はなき教官も確認しました」
「そうか……」
「では、何故その事件が発生したというのだ?」
「原因は勇者様の有頂天に怒りを覚えた男の方ですね」
「例えば?」
「女を欲しがりました」
「だが、それは別に構わないことであろう」
「はい。その男は、嫌がる女を勇者権限で手に入れようとした勇者様に怒りを覚えたようです」
「そんなの勇者様からしたら当たり前ではないか。何故そこに怒りを覚えるのか?女は嫌がり続けたのか?」
「はい、強く非難を現しました」
「そこも解せぬ。勇者様に誘われて、そこまで嫌がるなどこの国、いや、世界でもそうそういないだろう」
「はい」
一段落つき、事件の発生状況を悟ったグランドマスターなる男は、もっとも気になるところに踏み込んでいく。
「ところで、奇襲か?」
「いえ、先制攻撃を放ったのは、紛れもなく勇者様です」
「……そうか。だが、どうやってその男は勇者を殺し得たのだ?」
「……わかりません」
「なに?」
「奴のスキルが100なのはアルベルトも確認したところですが、正直そのスキルがどのような能力なのか計り知れないのです」
しかし、返ってきたのは予想外の言葉。
これほどの実力者が戦う姿を見てスキルを当てられないなど、そうあるものではない。
そもそも監視官は、適正試験で万が一勇者が発覚した場合、安全に保護するという教官の役目をサポートするために存在しているのだ。
まさかないとは思うが、教官でも歯が立たないような強力なモンスターが現れた際などに。
そのため、ギルド内でも屈指の実力者が選ばれる。それほどギルドにとって、≪勇者≫なるものは絶対的な生命線なのだ。
それが、人ごときに……
「だが、どのように殺したのかは見たはずだ。それを聞かせろ。俺も推理する」
「推理……フフ。バカバカしい。あれを推理するなど……」
バン!
「貴様、無礼な態度を訂正しろ」
「べつに良いのだマリダ。こいつは錯乱しておるのかもしれぬ。許してやれ」
「は!出過ぎた真似を!」
無言でグランドマスターの横に控えていた一人の女──秘書マリダとの一悶着の後、再び話は勇者殺害へと戻る。
「……こちらこそすみません。グランドマスター。では、僭越ながら伝えさせていただきます」
「うむ」
「……どうか、驚かないで聞いてください。……即死です」
「なんだ?もう一度頼む」
「……指一つ触れずに、まるで欠伸でもするかのように、そいつが望めば、人が勝手に倒れるのです」
「……フハハ!!お前ともあろうものが、世迷い事を……」
「……『ホワァ、煩いな』、だそうです」
「は?」
「これでアルベルトが死にました」
「……」
「……『さっさとお掃除お掃除……と、よし!二丁上がり……!』、これで二名の受験者が殺されました」
「……」
「この間、男はなにもしていません。いえ、強いて言うなら、勇者をいたぶって遊んでいました。そう、遊んでいました」
暫しの沈黙。
「……そうだな……。奇襲というとにしよう。なるべく勇者様の面目が立つように、卑怯な奴だと強調するんだぞ。また、コスト100だというのは、必ずや極秘にしろ。国の信頼、勇者様の権威を損ないかねん」
「……ですよね。そうなりますよね……。では、了解致しました。それで、私への懲戒はどうしましょうか?」
「今のところ、その男、シバタ・ショウヤだったか?について最も知っているのはお前以外に垂れもいない。そのお前を処分して、シバタ・ショウヤ達が分からなくなっては元も子もない。それは、一刻でも早く抹消するべきだ。……よって、捜索隊・隊長に任命する。異例の処置ではあるが、この際気にしてられない。その代わり、命の限りを尽くして探し尽くせ。それでもって、お前の責任は帳消しとする」
「はっ!有り難きお言葉。冒険者ギルド安全確保及び治安維持実行隊・隊長ムラヴィヨフ。今日を持ちまして捜索隊・隊長として隊を結成致します!」
「うむ。……そうだな。必要とあらば、≪剣の勇者≫、≪槍の勇者≫のお二方に話を通しておこう。こういってはなんだが……化け物には、化け物を、だ」
「幸甚につきる思い……!それならば、それならば、確実にあの男を捕らえられるでございましょう!!」
「よし。では、管理職の者を全員この部屋に召集し、そこで改めて宣言を行う。おい、マリダ!」
「何でしょう、グランドマスター」
「管理職全員をここに召集しろ!」
「かしこまりました」
十五分後……。
「よし!全員揃ったな。では、まず重大な知らせをする。一回しか言わないので、騒がずに聞け!」
重たい空気が、管理職の者達の間を覆う。
「今日の昼頃、今代・槍の勇者様が奇襲され、殺害された。よって、この大罪を犯した『シバタ・ショウヤ』とその仲間と思われる『ラジーナ』を『大逆罪』で指名手配する!」
ざわざわと動揺が広がる。
「マスター!今代・槍の勇者とは!?」
「先代槍の勇者、ブラディオ様が先月儚くなられたのは知っているな!」
誰もが、納得した顔をしている。
(国民の不安を煽らないよう、国民には新しい勇者が見つかるまで伏せられる、が)
「それで、だ。今代槍の勇者の資格をもつ者が、アルベルトの適性検査で見つかった。名をカリド様という」
「そ、そうなんですか!?」
「あぁ。そして、勇者のスキルを持っていることに嫉妬したシバタ・ショウヤ達がいきなり槍の勇者様を襲い、殺害した。そしてそのまま、アルベルト、二名の冒険者を立て続けに殺害したとのことだ」
「そっ、そんなことが!」
「ムラヴィヨフからの報告によると、アルベルトはあまりの衝撃で反撃できなかったらしい」
そして、一度沈黙に包まれる。
だが、
「ムラヴィヨフはどうして止めなかったのだ!何のための監視役だ!」
「まぁ、そう攻めるな。気付いた時には既に槍の勇者様は手遅れだったらしい。また、シバタ・ショウヤの戦闘能力が異常に高かったため、他の者は諦めて勇者様の為にも報告を優先したのだと聞いている」
「そっ、それでも!」
「その償いも含めて、彼には捜索隊・隊長としてシバタ・ショウヤ一行の捜索に全力で当たってもらう!異例の処置だが、シバタ・ショウヤ達を知る者が他にはいないのでしょうがない。異論はないな!」
グランドマスターの権威に逆らえるものなど、この場にはいない。
「よし!では、指名手配をするに辺り、その報酬は天貨十枚とする!この情報は、ファンブル王国ほか、各国の君主及び有力者に迅速に伝えるように!!」
「はっ!」
情報管理職の者が命令を受ける。
これによって、冒険者ギルドから各国の君主へ使者が放たれ、
世界中にこの事件は広まることとなった。
今だ起きたことの無い勇者殺害を受け、初めて『大逆罪』が施行されたこの日は、歴史上重要な日付として記憶される。この事は、ただ単に権力者が殺されたということには過ぎず、世界の支配体制を根元から揺るがしかねない事件であったという位置付けになった。
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*世界百科辞典*
file7「自由」
とある話。ここじゃないどっかの、今じゃないいつかの……。
「この世で最も自由は者はなんだ?人間か?」
「いえ、人間では有りませぬ。神よ、他のだれでもないあなたさまでございます」
「ふむ、何故だ」
「人間というものは、確かに自由でございます。ですが、本質が実存に先立つ道具とは違い、実存が本質に先立っているのです。そのため、人間は何になるかは自由であり、それ故に『自由の刑に処せられている』とでも言えるでしょう」
「ほう、それで」
「ですが、神様、あなた様は、本質が実存に先立っているのにも関わらず、意志が確かに存在しなさる。大前提として、意思なき物の自由を論じることは出来ません。話を戻しますが、あなた様は人間のように、自由ゆえの重圧もありませんし、先立っている本質が自由そのものであるのです。よって、私はあなた様は自由そのものであると思われます」
「そうか。ならば、お前はどうなのかね?」
神は問いかける。
ある有名な哲学者が急に持論をひっくり返すことが時にある。
それはなにが原因なのであろうか、誰も知らない。
………
……
…
べらぼうに文量が少ないし、主人公が出てこないという異質話になってしまいました。
区切りを考えたら、こうするのが良いかなと思った次第です。
次から少し話が変わりますが、変わらずよろしくお願いします。