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5億年ボタン押したら異世界だった件  作者: 伏見ナリヤ
リオニア編
3/36

第二話 テンプレ街道リオニア行き

 

 時刻は昼過ぎ。

 ついさっき盗賊との戦闘を終えた俺は、手に入れた有益な情報をもとに早速行動を開始していた。

 うん、もう少し具体的に言えば、北に少し行ったところに、確かに奴の言う通り道らしきものがちゃんとあった。

 それでも砂利が敷いてあるだけで、歩きやすいとは到底言い難かった。いや、足が疲れるね。

 それから30分、そんな道を歩いて、遂に道は更なるステップを踏んだのだ。

 つまり、舗装。

 なんの舗装かは分からないが、見慣れたアスファルトとは少し違う気がする。

 しかし、これが楽ったらありゃしない。

 そんな不思議ながらも快適な道路を道なりに、西に向かって心なしか早足で歩いていると、漸く目的の物が見えてきたのだった。


「おお!」


 急に視界が開け、飛び込んできたのは──城下町だった。

 高い城壁、巨大な門と、正に中世の城下町そのものを呈するようなその町は、間違いなく大都市の分類に入るだろう。

 どう考えても日本とは違った栄え方をしていることから文明レベルはやっぱり地球でいう中世くらいの物だと辺りをつけるが、ノイスバンシュタイン城のような例外もあるため、早急な判断はあまりに浅はかだと思い直し、他の物も観察してみる。

 そうすることで、見えてくる。


 

 ──すげぇ人だかり。



 今まで俺が通って来た寂れた街道──森方面──とは違い、溢れるような人が通っている街道が至るところから伸びており、それがやがて一つに合流する。

 その数は到底数えられたものではない。

 俺も直ぐに人波に巻き込まれ、揉みくちゃにされた。


 そして、中には荷物を抱えたものも大勢いる。この町の交易が発展している何よりの証拠だろう。


 すると、人が長蛇のように並んでいる箇所が目についた。

 あれは──検問だろう。

 俺もその中に並び、ついでにどんな奴等が並んでいるのか首をキョロキョロさせる。


 まぁ、明らかに人でないものがいた。

 いや、もちろん人の方が圧倒的に多いけどな!

 明らかに耳が長そうなものや、小さいががたいのいいもの、しっぽを生やし、獣の耳らしきものがついているもの、果ては、蜥蜴の顔を持つものまでいたが、挙げていけばきりがない。

 代表的なのは順に、エルフ、ドワーフ、獣人、リザードマン、と言ったところか。

 その他にも個性的な顔ぶれが見える。


 いつか、世話になるのかな?


 

 それにしても、これが異世界かぁ。

 なんか、さっきまで血みどろの戦いをしていたのが、嘘みたいな平和な景色だなぁ。

 (……)

 そうして、ずっと人混みを見ていたら、行商人らしき男に声を掛けられた。


「どっから来たんだい。珍しい服だね。なんか困ってんのなら言いなよ、な」

「ああ、はい。あっちの森から来たんですけど、この町に来るのは初めてで。この町って何て言う名前か教えていただけませんか?」


 当たり障りのないことを言った、はずだ。

 しかし、行商人はえらく驚いた顔をした。


「あっちの森から来たのかい?珍しいねぇ。……それでね、この町はリオ二アって言うさね。何でも神のライオンという意味で、世界を守護してくれている大天使アリエル様にちなんでつけられた最古の町名らしいさ」

「そうなんですか、どうも教えていただいてありがとうございます」


 親切に教えてくれたおっさんには感謝しかない。

 すぐに人混みに紛れていく。


 そういえば、俺の世界と違ってこの世界の住民はアリエルと特に関係が深いみたいだなぁ。

 あいつはこの世界の担当か何かなのか。

 まぁ、いっか。


 そうして何だかんだで門に並び、検問の順番が来たのだった。


「名前は」

「シバタ・ショウヤ」


 強面の男が質問してくる。

 槍がしっかりと握られている。


「住民リストにはなしだな。滞在理由は」


「仕事探し」


「うむ。出身国は」


「日本」


「は?ふざけているのか。ちゃんと言え」

「ジャパン」


 これでいいか?


「そんな国があるか!帰れ!」

「え?そうですか?はい。わかりました」


 だめ、みたいだ。


 折角正面から堂々と入ろうとしたのに、これじゃしょうがないよなぁ。

 てか、住民リストがないと出身国を言わなければならない制度なんて、厳しすぎるだろう。

 

 と、全く歓迎されていなさそうな俺は、しぶしぶどうやったら町に入れるかを考えていたんだが、もう案という案は出尽くした上に俺の脳内会議で却下され、遂に残り一つとなった案はやっぱりそういうことだった。


 門は壮絶なほど巨大だが門自体は空いておらず、小脇の扉のようなものが申し訳程度に開けられているだけで、その上槍を持ち全身装備を固めた男が二人がかりでそこを塞いでいる。

 人が通るときだけ、さっと横にずれるがそんな物では隙間は出来ない。

 よって、中の様子は全くといっていいほど、視認できた物ではない。

 




 ……だが、この町で唯一にして最高の高層建造物である城らしきものだけが、遠くに視認できるのだ。


「あそこにゲート設置だな」


 そう、不法侵入をすることにした。

 これが、結局出てきた唯一無二の良案だ。


 良い子は真似したら駄目だぞ!

 (お巡りさん、こっちです!!)



 まず人目を避けてゲートを作って、異空間に入るのだ。

 そしてそこからゲート越しに城を視認し、たちまちに屋根に2つ作っておいた。


 念のために最初のゲートは消しておくかな。

 余談だが、異空間に入っているときはゲートを絶対一個は残しておかないといけないらしい。


 そして、ワープ!


 天井に出てきてはそのままもうひとつのゲートに転がり込む。

 歪む視界に間隔が狂いそうになるが、ここでバランスを崩せばかったい石作りの地面に頭からまっ逆さまだろう。

 当然それはごめんなので、慎重に事を尽くす。

 

 誰の城か分からないが城の所有者であろう人には心の中で謝っておき、再び異空間に戻ってきたのでゲート越しに適当な地面を視認して、ワープ!


 その瞬間、俺の足は確かに大地を踏みしめた。

 最初は落ちるかも、とか恐怖がそれなりにあったのだがいざやってみれば大したものではなかったし楽しかったとも言えるな。


 後はすべてのゲートを閉じておしまいだ。


 案外便利だ、これは。

 歩かずにこれで来れば良かった。

 (駄目です!!)


 ということで、この能力で分かったことは以上だ。


 ・現実世界側からは、作るときも消すときも視認しなければならない。


 ・作ったゲートは異空間では全て横一列に作った順番に並ぶ。消すときはそれを視認するだけなので、一括で消せる。作るときはどのゲートからでも覗き込んで、視認する必要がある。


 ・大きさは自由自在で俺しか入れないが、一部だけでも出入りできる。


 ・服やナイフなど装着しているものは、自分の一部扱いされる。

 


 ふーん。町の文明レベルはやっぱりお約束の中世か。

 取り敢えず侵入出来た訳だし、次は宿取りかな?

 そこらへんにいる人に聞いてみるか?

 お約束。

 

 だが、出来れば信用できるやつが良いな。

 と歩いているとすぐに目星は付いた。


「職を探してこの町に来たんですが、自分この町初めてでよくわかんないんで、良い宿教えてもらえませんか?」


 なんだか、凄く頼もしい雰囲気の溢れる男が居たので取り敢えず声をかけてみる。

 黒めの短髪に堀の深い顔立ち。

 なかなか日本人に近い気もするが、やっぱりどこか違うよな。


 それにしても、よさげな鎧を着ているな。


「珍しい服を着ているな。金はどれだけあるんだ?」


「これだけですが?」


 盗賊からぱちった金を見せる。

 この金はこの世界でどれくらいの価値なのだろうか?


「銀貨10枚か……、どれくらい予約するんだ?」

「とりあえず一週間」

「食費も考えると……、ついてこい」

「ありがとうございます」


 えらい親切だな。

 やはり、俺の見立て通り頼りがいのある人物だったようで、俺を連れてスタこらと歩き出すその足取りに迷いはない。



 ちなみに、歩きながら教えてもらったのだが金銭に関しては、銅貨、銀貨、金貨、天貨の四種類があるらしく、それぞれ日本円に直すと、百円、一万、百万、一億円くらいの価値だとこ推測でき、それ以下のものは物々交換などでけりをつけるらしい。

 ということは中々に優秀な盗賊みたいだったな。

 まあ、ターゲットを少し間違えはしたがな。


 と男は暫く歩いていたが、突然立ち止まった。


「おわっと!」


 ぶつかりそうになったのだが、その男は至って冷静沈着である。


「ここがおすすめの宿だ。値段は休めで、寝心地もよく、朝食がつく。俺達冒険者連盟が支援してるからな。申し遅れたが、俺の名はギュルハネ。冒険者連盟の会長だ。この町の冒険者ギルドの地図を渡しておく。俺達冒険者連盟は基本そこにいるから、興味があったらこい。じゃあな」


 そう素早く重要事項だけをまとめて言ったその男はくるりとこちらに背を向け、立ち去った。


 この町にも剣を差し皮鎧を纏って歩く人が居たことから、冒険者に近しいものは居るのだろうと思っていたが、連盟などというものまであるとはな、驚いた。

 


 しかし、冒険者の中でもあのギュルハネという男は雰囲気が段違いだった。

 (けっこう強いです。)

 連盟の会長というのも頷ける。

 敵に回さないように気を付けないと……。


 ……と、一日の疲れを癒すため、そろそろ宿のなかに入ろうか。

 ぎいっと日本に比べれば大分寂れた扉を開けると、入ってすぐ正面にカウンターがあった。

 受付嬢に声を掛ける。


「一週間部屋借りたいんですけど」

「はい、了解しました。銀貨二枚になります」


 えらい安いな。

 まぁ、文明レベルも中世だし、そんなサービスも充実していないだろうから、そんなもんか。

 (決めつけがすごい……。)


「分かった。朝食は何時からだ」

「七時でございます」

「了解した」


 ふー

 それにしても今日は疲れたな。

 早く部屋に行こう。


 ガチャッ


「わりかし部屋はきれいだな。これなら、安心して寝れるか」

 

 ベッドに横たわり、ぼんやりと今日あったことを思い出してみる。


 公園で5億年ボタン押して、天使に会って、チートもらって落とされて……

 あれ?言葉普通に通じてなかったか?

 天使が翻訳機能着けてくれたのか。

 少しは仕事するんだな。感心、感心。

 そういえば、町にばかでかい時計塔があったと思う。

 その時計のフォルムは俺の世界と全く同じものだった。

 短針と長針の組み合わせ。

 さらに時刻も大体合っている。


 ……って、おかしいだろ!ご都合主義過ぎるだろ!

 (誰だってめんどくさいのは嫌いなんですよ!)

 まぁ、明日誰が作ったのか聞いてみるか。

 この世界のヒントが得られるかもしれん。

 そういえば、異空間で寝ても良かったんだがな。

 でも、こう言うのは気分だしな。

 ベッドで寝たほうが疲れがとれるだろう。

 

「そろそろ寝るか……」


 こうして、俺は深い眠りに就いていった。

 なんにもご飯を食べてないことを忘れるくらい疲れていたのかもしれない……



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