あるのどかな国のひとコマ
よろしくお願い致します。
彼女は、この世界最強と謳われる魔女だ。
彼女は、しかし、それなりに充実した平和な生活を送っていた。
あの日までは…
「私と結婚してください」
全裸で土下座する彼は、確かにこの国の王太子だったはず。
そんなことをのんびり、これまた全裸で考える彼女こそ、この世界最強魔女。
お若い男女が、何故全裸でいるのかとか、そんな下世話なことは、聞いてはいけない。
「いやぁ…とりあえず顔を上げて下さいよ…」
「そんなわけにはいかない!酔った勢いで合意の上とはいえ、未婚の女性と一夜を明かしてしまったのだから!!」
「(このヒト、自分が王子だと、忘れてるのでは…)別に良いですよ。…気持ち良かったですし。とりあえず、夢だったことにしときません?」
「ダメだダメだ!だいたいお前だって公爵令嬢だろうが!だいたい、子供でもできてたら、どうするつもりだ!?」
「殿下、地が出てますよ。それにまあ、多分、大丈夫!!うちの親だって私を育ててるんだから、一人や二人増えたところで、気にしません!!」
「そんな問題じゃないだろ!しかも、一人や二人って今までにもこんなことがあったのか⁉」
「そんなわけないじゃあないですか。全く、あんなに乱されて、もうお嫁に行けない‼」
「だから責任とってもらってやるといってんだろうが!内政も長年安定してるし、婚約者だって俺もお前もいないし、身分も問題ない。さぁ、何が不満だ?!」
「王太子妃とか、果てしなく面倒なんですよ!」
「阿呆かぁ!!お前、公爵令嬢だろうが!」
「それとこれは話が別ですぅ。うちの父様は、お前の好きな人と結婚すると良いよって言ってくれたんですぅ」
「あ、あの親バカ宰相が!」
「ふははは、なんとでもいえぇぇ!!」
…マイペースな二人の話し合い(?)は、もうしばらく続く。
ありがとうございました。