007 テロリスト
「・・・・・・は?」
「だから、国王を殺すって言ったのよ。」
意味が分からなかった。
国王を殺す?
そんな事出来るはずも無いし、おそらく冗談で言っているのだろう。
ゼータはそう結論付けて、
「いやいやいや、待て待て待て。冗談だろう?さっきの仕返しで俺をからかってるのか?」
「いいえ、違うわ。私は今日この手で国王を殺す。そのために今ここにいる。」
「そんな訳ないだろう。だってお前は連行されてここに来たんだろうが。」
この少女はラムダに連行されて王宮に連れて来られたのだ。
国王を殺すためにここにいると言うには無理がある。
あり得ない。絶対にあり得ない。
ゼータはそう思っていた。そう思いたかった。
「ええ、確かにそうね。それは私たちにとって予想外の出来事だったわ。」
「私たち?」
訳が分からなかった。
ゼータは元々頭が良い方ではない。
考えるのは基本的に苦手だし、今までも分からない事からは目を背けて生きてきた。
知りたくもない事実をわざわざ知ろうとも思わなかったし、今後もそのつもりで生きていこうと思っている。
しかし、
―――少女は、今まで隠してきた事実を語り始めた。
「私たちは、あの廃工場の地下部屋を拠点にして、国王を殺すための準備を前々から整えていた。」
彼女はテロ組織の拠点とされている地下施設にいた。
それは何故か―――
「あの部屋に王国軍と戦うための武器を集めていたのよ。」
地下施設に積み上げられていた中身が空の木箱。
箱の中身は何だったのか―――
「王宮を爆破させるための魔法結晶石を集めるのには苦労したわね。」
あの部屋には赤い魔法結晶石が大量にあった。
それは何に使うのか―――
「作戦は今夜決行される予定だった。私たちは作戦開始に備えて全ての武器を運び出した。」
テロリスト集団が廃工場から出入りしていたとの目撃情報があった。
人の出入りがあった事を魔力感知でも確認した。
彼らは何をしていたのか―――
「私は忘れ物を取りに地下部屋に戻った。そしたら、あなたが魔法結晶石を見つけていたのよ。」
彼女は突如ゼータに襲い掛かって来た。
それは何故か―――
「私はあなたの妹さんに連行されて、この王宮に連れられてきた。そして目を覚ました私に、事情聴取だと称して作戦の続行と計画内容の変更を伝えてきたのは、顔も名前も知らない人物だったけれど、この王宮には内通者がいるのよ。」
彼女はこの牢獄を抜け出すための鍵を持っていた。
それはいつ誰に渡されたのか―――
「・・・・・・。」
黒髪の少女は淡々とした表情で真実を語る。
ゼータはその全てをただ無言で聞いていた。
聞いている事しか出来なかった。
彼女の言っている事を信じたくなくて、否定しようとして、その言葉を必死に探した。
―――しかし言葉は何も出てこなかった。
否定出来る根拠は何一つ思い当たらなかった。
そして―――
「言ってなかったかしら?―――
―――私は犯罪者で国際的なテロリスト。―――
―――テロ組織"シャドウルーラー"の幹部よ。」
彼女はそう言い切った。