プロローグ
(とてもまずい状況になってしまった・・・。)
青年は周囲を見回して、自分が今置かれている状況を確認して嘆息する。
辺りには、この国ご自慢の精鋭部隊"フォートレス騎士団"の屈強な騎士たちが剣を構えて、こちらを睨んでいる。
完全に包囲されてしまっている。
絶体絶命のピンチ。
(ざっと見積もっても30人はいるな・・・。)
フォートレスとは要塞を意味している言葉らしいのだが、この状況を鑑みると、なるほど納得がいく。
だがしかし名前の由来などどうでもいい。
この局面を一体どうやって切り抜けたものかと思考を巡らせながら、横目で自分の後ろにいる存在を意識する。
―――そこには一人の少女がいた。
思えば、昨日出会ったばかりのこの少女を助けようと思ってしまったばっかりに、こんな目にあっているのだ。
ホントに良い迷惑だ・・・などとは思っていない。
これは自分で選択した運命なのだ。
むしろここで引くくらいなら死んだ方がマシだ。
決して、ピンチの女の子を助ける俺超かっけぇ~wwwなどという不埒な感情がある訳ではない。
そこだけは理解しt―――
「この不埒者共を、とっとと切り捨てよ!!!」
ここで動きがあった。
騎士団達を率いてる女性が声を荒げて指示を飛ばす。
宝石を散りばめたドレス姿に身を包み、床まで届きそうなくらい長く、見るものを魅了する美しい金髪。
その手には大きな扇子を持ち高貴に振る舞う、いかにもなこの女性こそがこの国の王妃である。
相手は国の王妃、つまり青年は国に盾突いているという事であり、その事実を改めて認識する。
―――そして王妃からの指示を聞いた騎士達が一斉に動き出した。
(やるしかないか・・・。)
青年は再度嘆息すると、腰に携えていた剣を一気に引き抜き、逃れられないこの絶望的な運命に立ち向かう覚悟を決め、大きく踏み込んだ―――